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ep2

クサツルン

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「ねぇ師匠~
クサツルン寄ろうよ~」
またローズのワガママが始まった。

クサツルンは標高約1500mの高地にある温泉町だ。

漁師町エイヒレから首都のメールリーに行くには、海沿いルートと山越えルートがある
海沿いルートは遠回りになるが、平坦な分4日程の行程だ。
それに対して山越えルートとなると6日はかかる。

クサツルンは、その山越えルートの中間にある観光名所の温泉町だ。

「お婆さんに聞いた話だと、国内一番の温泉町で色々な効能の源泉があるんだって。
怪我や肌トラブルに効く酸性泉
お肌ツルツル美肌になるアルカリ泉
体が芯から温まる
炭酸泉
その他、硫黄泉でしょ、ラジウム泉でしょ
そんな色んな源泉が有るのはここだけだそうよ。
行ってみたいじゃない」

「でもそこに行けば、当然羽を伸ばしたいでしょ。プラス2日どころか4日位余計に時間がかかるわ。
何度も言ってるけど、安全で、早く着く道を選ぶべきでしょ。」

「師匠。1号さんの気持ち 私わかります。
これまで産まれた所のサルドラ町から出たことなかったんですよね。
このチャンスを逃したら二度とクサツルンに行けないかも知れないと思っているんでしょ。
正直私もクサツルン行ってみたいです。」

「あ~~もう。
わかったわよ。寄りましょクサツルン」

「やった~」
「よかったわね1号
私も嬉しいわ」






こうしてキャンプをしながら4日かけてクサツルンに一行は到着した。

「あ~~、極楽極楽」
「マジ、ツルツルしますね」
「こんなお湯が有るのね。無理して来た甲斐があるわね」

「でしょでしょ師匠
着てよかったでしょう」


風呂から上がると、見知らぬ女性が声を掛けてきた。

「あなたたち、『千のギフトを持つ魔術師と二人の弟子』でしょ
本当に千のギフトを持ってるの?」

「えっ ゴメンナサイどちらさんですか?
私たち、行商人ですけど」

「師匠なんて言葉使う人、今時珍しいわよ。
ねぇ、そうなんでしょ」

「千のギフトなんてとんでもない。
そんな人いるわけ無いでしょう。
いたら私も会いたいわ。」

「だったら、なんで師匠なんて言ってたのよ」

「それは……人生においての師であり、商売人としての師と仰いで…
でしょ。」

「そ そうですわ
この方は私たちの尊敬する師匠です。
あなたとは関わり無いでしょ」

「私は師匠のペットでもいいと思ってる位です」

「あやしい」

「それより、いきなり人の詮索して、何なんですかあなたは?
失礼じゃ無いですか!」


「ああ、そうね。ちょっと焦り過ぎたわ。
別にケンカ売ろうって思ってる訳じゃ無いのよ。
その逆、助けて貰いたいの。」

「助けてもらいたい態度に思えないけど
何をどう助けてもらいたいの?」


「いや、それは………」


「どうしたのよ」


「千ものギフトをお持ちの魔術師様ならと思って、声かけたので、忘れて下さい」

「そこまで言っといて、気になるじゃない。
このモヤモヤどうしてくれるのよ!」

「わかりました、それなら言いますよ、いいですか。
もうそれ聞いたら、やることになりますよ。」

「なんでそうなるの?」

「だってぇ~ 本当はそうなんでしょ、お願いしますよ~」

「やっぱり、話さなくていいわ」


「そもそも私たちヤルゾネス族は、」

「許可してないけど…」

「この地に産まれ、千の年月を過ごしてきました。
ある時を機に、私たちの村には、女の子しか産まれなくなりました。」

「へぇー
原因不明なの?」

ー ローズ、そこ聞き流せよ ー

「そして今!」

「今?」

「村には、女しか居なくなってしまったんです。」

「へぇー」

「ここ十年余りは、通りすがりの旅人に子種を分けていただき…」

「襲ったのね」

「なんとか絶滅せずには来ましたが、それでも産まれるのは、女ばかり。」

「たまたまじゃない?」

「そこで千ものギフトを持つ魔術師様なら、男子を授かる方法をご存知ではないかと、藁をもすがる思いで、探しておりました。」

「そうなんだ。ご苦労さま」

「へっ?
それだけ?」

「男が産まれる体質にするなんて技は、聞いたことないわよ。
それは神様の領域でしょ」

「それではどうしたら、良いですか?」

「これまでは、どうしてたの?」

「男1人に対して4~5人のチームで夜這いして、搾れるだけ搾り取るんです。」

「男はそれで喜ぶ?
リターンする人とか、常連さんはいる?」

「まず辛そうですね、二度と来ません。」

「何度も来たくなる、いい思いをさせれば、客が客を呼ぶわ。」

「なるほど、それで」

「襲うのはダメ、誘うのよ。男に選ばせるの。」

「そんなこと、考えもしませんでした。」

「で、もう少し具体的に教えていただけますか?」

「私たち、まだ乙女なので、そこから先は分かりません。
あとは御自分で調査されてはどうかしら?」

「わかりました。相談にのってくれてありがとうございました。」





「はぁ~ 変に名が売れると、面倒ごとが増えるわね。
呼び方を戻しましょう。
ただし、ローズはロゼに変える、私のことも呼び捨てにすること。
ランラン・ロゼ・シーナよ」

「なんで私だけ偽名なの?」

「アンタ バカぁ?
首都に着いたら教えてあげるわ。」


「あの~ すみません
先程からわざとでは無いんですが、お話をうかがってたところ、魔術師様なんですよね。」

「はぁ?
また変なの来た~
ロゼ、ランラン行くわよ。」

「ちょっとお待ちを!
礼をはずみますので」

「お金には困って無いわ。あなたには困ってるけど、じゃあね。」


「いいんですか師匠、いやシーナ
これ慣れるまで時間かかりそう
どっちも『し』で始まるし」

「ロゼ あんなの気にしないの。いちいち相手してたら身が持たないわよ」

「し し シーナ」

「呼びにくそうねランラン。何?」

「もう一軒別のお風呂に行きませんか?
少し体が冷えてきて」

「そうね、良いわね。ロゼはどう?」

「賛成 行きましょ」

三人が連れだって湯屋をどこにしようかと歩いていると。

「おい!そこの女三人組。お前ら『千のギフトを持つ魔術師と二人の弟子』だろ!
俺たちと勝負しろ!」

「また変なの来た。
ロゼ・ランラン
無視するのよ。」

無視して通り抜けようとすると回り込まれた。

「おっとそうは行かないぜ」

「キャーやめて~」

「シーナ ブリっ子似合ってないわよ。」

「退屈凌ぎ位になるかしら」

「ロゼもランランもやりたいの?」

二人は、コクコクとうなずいてる。


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