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ep2

どうするシーナ

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シーナがポプルの宿に来て2ヶ月がたった。

「なぁメアリー。シーナのおかげで、この宿も繁盛するようになったよな。」

「そうよね。ポプル。
シーナには感謝してるわ。あの娘が居なかったら、この宿も地上げ屋に取り上げられてたかも知れないし」

「それでなんだけど、シーナは、『臨時雇い』だろ。
いつ辞めたいって言い出すかが心配なんだよ。
今シーナが居なくなったらどうなると思う?」

「料理が大変!」

「それどころか、館内清掃、客室の清掃ベッドメイク、『キンキンエール』みんなシーナがたよりだろう。
彼女一人で三人分いや四人分の働きをやってるだろう。
シーナが居なかったら回っていかないと思うんだ。」

「だったら、その三人分の給金をシーナにはずんで引き止めれば」

「あの娘は、お金の為だけに働いているわけじゃないと俺は思うんだ。
だからどうしたら良いかと。」

「三人雇うか、私たちでまかなえるスケールに規模を縮小するしか無いわ ね。」

「そうだなぁ シーナにぶっちゃけ相談するか」


ポプルとメアリーはシーナを呼んで、相談することにした。

まずこれまでのシーナの働きに二人は感謝し、これから先シーナが居なくなることへの恐れを話した。

「そうですね。やり過ぎたかなぁ。ごめんなさい。
えーっと、二人位雇って頑張るのがA案
規模を絞って高級路線に舵をきるのがB案
どちらか決めて進めましょう。
『キンキンエール』はパフォーマンス無しにしましょう。
バックヤードでエールを先に冷やしておいて出せばいいですよね。」

「シーナがこの先もここで働くってC案は?」

「ポプルさんメアリーさんそしてホーリーさんもトム君もみんな良くしてくれて、感謝してます。
でも、やっぱり旅立ちたい思いは捨てられません。
ごめんなさい。」

「メアリー、余り無理言うもんじゃ無いよ。
俺はA案かなぁー
根が庶民だから」

「ポプル、私はB案よ
高級といっても、お客様の数を絞れば落ち着いてサービス出来るでしょ。
てんてこ舞いよりずっといい気がするわ。」

「君がそう言うならB案で行こうか」

「えー いいの?」

「いいよメアリー」

「ゴメンねポプル」

「いや俺のほうがゴメンね」

「愛してるわポプル」

「愛してるよメアリー」



シーナはキレ気味に

「B案で決まりでいいですね?
それとももう少しイチャイチャします?」

二人は少し赤らんだ顔をして。
「Bでお願いします」
と言った。

宿泊予約は、既に受付た分で止めて、居酒屋営業も惜しまれながら終了した。

シーナの再構築で、3部屋を繋げては、リビング、シャワールーム、2つのベッドルームの構成の、スイートルームを3つ作り、1日3組限定に変更した、食事用には個室を4部屋作った。

そして、メアリーさんには水魔法を、ポプルさんには火魔法を伝授した。
もちろんその為に事前にシーナは宿の客からこっそりそれらの魔法を手に入れておいたのだった。

その頃には、シーナの顔見知りも増えて、町を歩けば、
「シーナちゃん、今夜呑みに行くから宜しくね」
「シーナちゃん、この魚買ってよ」
「シーナちゃん、今日もかわいいね。『キンキンエール』呑みに行くよ」
などと声がかかるようになった。

もちろん守備隊の人たちも、ちょくちょく顔を見せるので、地上げ屋はあの日以後やってこなくなっていた。

改装後の滑り出しも順調で、シーナが旅立つ日がやって来た。

守備隊にも旅立ちの挨拶に顔を出すと

「シーナ 久しぶりに顔を見せたと思ったら、お別れの挨拶かぁ
寂しいわね」

「MJもお元気で!」

「あっ そうそう、もしかして首都を目指すのかな?」

「はい、そのつもりです。」

「だったら、頼みたい案件があるんだけど」

「私にですか?」

「守備隊も手薄でな、首都に向う商隊の警備の依頼があるんだが、割ける人手が居ないんだよ。
シーナやってくれないかい?」

「私一人でですか?」

「なにを弱気な、奥の手のギフト無しで私との勝負に勝っておいて、それは無いだろう。」

「って言うかぁ。私みたいな女の子一人じゃ護衛として信頼されないんじゃ無いかと思って。」

「イヤイヤ、だってあなた収納出来るでしょ
馬車2台分位の荷物一人で運べるでしょ。
荷馬車2台使って、馭者も雇って護衛を数人、それをあなた一人雇って馬で走って行けば、安くて速くて安心に決まってるでしょ。
しかも腕は、折り紙つきなんだから、申し分なしよ。」

「はぁ まぁ それなら」

「じゃあ、決まりね。
ちょっと待ってて、紹介状書くから。」

半ばMJに押し切られる形でシーナは紹介状を手渡された。

MJに教えられた「ル・ドマン商会」は中央広場近くに大きな店を構えていた。

店に入り、カウンターの中の女性に

「守備隊のMJ隊長の紹介で参りましたシーナです。
こちらをドマンさんにお渡しください。」

紹介状を手渡すと、その人は、「こちらにお越し下さい」とカウンターの脇を跳ね上げて、シーナを奥に案内した。
10畳程の応接室に案内され、そこで待つように言われた。

女性が出て行くと直ぐに、少女が入れ替わりに入ってきた。
「あなた守備隊の兵士なの?」

「兵士じゃ有りませんよ。」

「でも守備隊の隊長の紹介状持って来たんでしょ。だったら護衛よね。あなた強いの?」

「弱かったら護衛はできませんから」

「へぇー たいした自信なのね」

「あなたは、こちらのお嬢さんかしら?
私は、シーナ宜しくね」

「私はローズ。ねぇ何かやって見せなさいよ。」

シーナがゆっくりと目を一旦瞑り目を開けると『緋の眼』が現れた。

「うわー 凄い!真っ赤な目ね」

「この目は『鑑定』ができるのよ、ローズさんは魔力がたくさん有るわね、炎属性ね。
体術も得意みたいね。」

「炎属性って嫌なのよね。火事になるから危ないって、練習させてもらえないのよ」

「そうなんだ。体の中で魔力を動かす練習はした?」

「なにそれ?
ねぇあなた、護衛で王都に行くんでしょ。
だったら私も連れてきなさいよ。」

「ん~ でも、それは私の一存では決めかねます。
それにお嬢さんの護衛の依頼は」

シーナの言葉を遮って
「私が決めたからいいの!
それに私守られなくても強いし」

「そうローズちゃんは強いんだ。凄いね。」

「あなた、私のこと馬鹿にしてるわね。さっきはローズさんって言ったのに今度はローズちゃんって言ったわね」

「そうですね。初対面の私相手に遠慮なくワガママを言い放つのは、お子ちゃまだとお姉さんは思ったのよ。
お子ちゃま扱いされたくなかったら、目下の人にも礼を持って接するべきよ。
あなたには、まだわからないだろうけど、人の上に立つ人は権力を振り回す人になってはだめよ。
下につく人たちの為に権力を使うのよ。
みんなから愛される人にならないとだめなのよ。」

パチパチパチ

振り返ると
拍手をしながら男性が部屋に入ってきた。

「ご意見、ごもっとも!
ローズ
初対面の方にワガママ言うのは失礼だぞ!
嫌われたら、ローズのお願いは聞いてもらえないよ」

「だったらどうしたらいいの パパ」

「ああ、申し遅れました。私がドマンです。このワガママなローズの父です。」
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