なんで私が、異世界送りって酷くない?再構築ギフトって、なに?

烏帽子 博

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ep2

宿屋2

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209号室のドアを開けると、そこは予想以上の惨状だった。
荷物が背の高さ位まで積み上がっている。
とても横になるどころか、このままだと立って寝ることになりそうな部屋だった。

シーナのギフト『再構築』には、一旦収納しておく機能がある。
シーナは手当り次第 一旦全て収納することにした。
色々な物がシーナが触れるとパッと消えてゆく。
30分位してようやくベッドが現れた。

「え~~~~っ!
何これ?荷物は?」
ポプルさんがやってきて、荷物の減った部屋を見て驚いて固まっている。

「私のギフトで、荷物を一旦全部処分している所ですけど、何か?」

「ん?いや
手際がいいな。
手伝いは要らない?」

「手伝いは、必要有りませんけど、本当にポプルさんの確認無しでどんどん処分してもいいんですか?」

「ああ、構わないよ、もう何年もここに入ったきりの荷物ばかりだから。仮に価値があっても、使うことがないから、ここに仕舞われた品物さ。
スペースを作って部屋として使えるようにしたほうが、価値が出ると思うから。」

「それじゃあ、処分じゃ無くて、私が売りさばいてもいいですか?」

「ん~~ そうだな。
それで当座の給金がわりってことで
うんそれでいいかな」

「私は、全然構いませんけど」

「ベッドも、壊れてるから気をつけて。
じゃ あとよろしく」

あっさりとポプルさんは、部屋から出ていった。

「さてと、やりますか!」
荷物が無くなると造り付けのクローゼットが現れた。

クローゼットの中の荷物はどれもカビがふいている。問答無用で収納するとクローゼット自体、カビだらけだった。

薄汚れた窓から射し込んだ日光がクローゼットの中を照らしている。

北西の角部屋だった。
多分冬になると結露が酷いんだろう。

断熱よね。クローゼットも収納して、カビも全て取り除き、
シーナ流断熱材を壁側に敷き詰めた。
断熱材は古着を繊維に戻して、カビや水分を取り除き、綿状にしたものを木で作った型枠に入れて作った。
窓も小さくして、上部はスノコ状にしてスライドすれば換気できるようにした。
窓はペアガラスに加工した。
床も天井も残りの壁も、全て自前の断熱材で囲った。
壊れたベッドの脚を直して、ブランケットとマットレスも新品に再構築した。

カーテンをどうしようか考えてる所にメアリーさんがやって来た。

「えっ うそ なにこの部屋は?
半分位ギフトで片付けてたってポプルが言ってたけど、もう完璧じゃない。客室より綺麗になってる。」

「いや、まだカーテンと机をどうしようかと、考えてた所なんです。」

「あっそうそう
驚いて言うの忘れてたわ。
夕食の時間よ。下に降りてきてね。
もういいんじゃないこれだけ綺麗になったんなら。」

メアリーさんは、そう言いながら部屋に入ってきた。

「あれ?確かこのベッド壊れてたはずなのに、綺麗に直って新品みたいね。
それにこのマットレス。凄いわ。フカフカしてる。
ねぇ あなた 他のベッドもこんなふうにフカフカにできるの?」

「ええまあ、材料が揃えばですが」

「材料?このベッドは、どうやったの?」

「この部屋にあった、たくさんの荷物や衣類を材料に私のギフトで作りました」

「へぇー 凄いわね。
これから色々と頼んでもいい?」

「何でも と言うわけにはいきませんが、できるだけお力になります。」

「ありがとう。それで十分よ。他に何ができるの?」

「う~~ん 大体何でもできるかなぁ~
魔法は、今の所 光と土だけですけど。」

「ギフトがあって魔法もダブルなの?
凄い人ね。」

「あの~ そろそろ下に行っても………」

「あら ごめんなさい。私ったら。
質問責めにしちゃったわね。」

二人で階段を降りてゆくとホーリーさんが、手招きしている。



「メアリー なにやっとったんだい?
シーナを呼びに行くって上がっていって、ちっとも戻って来ないから、スープが冷めてしもうたわ」

「ああ。ごめんなさい。だってシーナさん凄いんで、色々と聞きたくなって、それで…」

「わかったから、スープを温めなおしてきておくれ」

「は~~い」

「口ばかりで、余り手を動かさない嫁じゃが、気立てがいいのが取り柄でのう。
ポプルは尻に敷かれておる」

シーナはどう返していいか迷ったが
「そうなんですか?
でも仲が良さそうなご夫婦ですね」
とお茶を濁した。

食事中は、ずっとホーリーさんの嫁の愚痴につきあわされ。少々疲れる食事だった。

食後厨房に顔を出して、メアリーさんに声をかけた。

「私食べたことのある料理は、材料が有ればギフトを使って再現できます。」

「あっ そうなの。
そうよね、あんなこと出来るんだから。
やってもらおうかしら。」

シーナが調理台に皿を並べる端から、料理が盛られてゆく。

「えっ えっ え~~~~っ
こんな、簡単に?」

「よかったら、味見してください」

「はふ はふ
あ~ おいひい
合格、私の作ったのと変わらないって言うか、私のより美味しく感じるけど」

そこへポプルさんが戻ってきて、
「後の料理はまだ?って
もうできてるのか。
早いな」

「シーナが作ってくれたのよ。
私もホールやるね」

メアリーさんは料理を持って行った。

「これを君が?」

「メアリーさんに試食してもらい、お墨付きをもらいました」

「この食べかけのも君が?」

「はい、それさっきメアリーさんに試食してもらったやつですけど」

「ちょっと俺も食べてみていいかな」

「もちろんです。」

「うん うん
ちゃんとできてる。
美味しいよ。」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、早速この料理、運んでくる。」

「あと何食作ればいいですか?」

「お客様が席につく時間がバラバラだから余り早くに作ってもな。
このあともやってくれるかい。」

「ええ、私でよければ、やらさせて下さい。」

ポプルさんは、料理を運んで戻ってくると

「シーナさん、この後の時間は、エールを飲む人が多いんだけど、酒のつまみになる物も作れるかい?」

「ええ、原価はどのくらいの物を作りますか?」

「えっ、原価も考えて作れるのかい。素晴らしい。」

シーナは、唐揚げと豚串とポテチと野菜の浅漬けを作った。

このつまみが大好評と言うこともあったが、シーナが客席迄出向いて、エールを冷やすパフォーマンス「キンキンエール」でエールが爆売れし完売した。

このキンキンサービスでのチップはそのままシーナの収入としてもらったので、宿もシーナもウィンウィンだ。

サービスが評判で、泊り客以外で呑みにやってくる客も次第に増えていった。

全室ベッドのマットレスをシーナバージョンに作り変え、各室の傷んだ部分も全て補修すると
泊り客数はどんどん増えて、宿は常に予約で満室に、夕方には晩酌目当てで宿の前には行列が出来るようになった。

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