なんで私が、異世界送りって酷くない?再構築ギフトって、なに?

烏帽子 博

文字の大きさ
上 下
6 / 47
ep1

ギフト

しおりを挟む
「なるほど、バケツ1杯のジャガイモの皮むきを一瞬で。
私にも何かやって見せられるかしら?」

シーナは、MJの執務室を見回した。
そこでシーナの目にとまったのは、MJの机の上に有る一輪挿しのバラだ。
バラは既に萎れていた。

「まだ2回できただけなんで、上手くできるかどうか……」

「いいから、サッサとやる」

「はぁ~い」

一輪挿しのバラは、黄色い花を綺麗に咲かせた状態になった。

「ん?
萎れた赤いバラだったのが………
なるほど、再構築か
それなら、この切れが悪くなったペーパーナイフを砥ぐことはできる?」

MJがペーパーナイフを手渡してきた

シーナは、以前母と行った浅草の合羽橋道具街で見た刃紋のついたよく切れそうな包丁をイメージした。


その時手が滑ってペーパーナイフ改を落としてしまった。

「トン」という音で、ペーパーナイフ改は、木製の机に突き刺さって、たっていた。

「ほう 素晴らしい切れ具合のようね。
それで、このナイフの模様は何?渦のような形の。
魔力でも込めたのかしら。」

「魔力をナイフに?
いいえ。
よく切れる包丁を前世で見たことがあって、それをイメージしただけですよ。」

「魔力は込めてないのよね」

MJはペーパーナイフ改を机から引っこ抜くと、そばの封筒の封を切った。
ニャリとした顔を見せたかと思うと、刃の砥具合を確認するのか、親指を刃に沿わせた。

MJの指から血が出ている。

「えっ?何やってるんですかMJ!」

MJは、ペーパーナイフ改を置いて、患部を右手の親指と人差し指でつまんでいる。

「これはよく切れるわね。切った瞬間は全然痛くないの。それに切れた感覚がないのよ。
そして、もうくっついたみたいね。
これ程とは驚いたわ。」

「ですから、この娘を厨房の下働きにしておくのは、もったいないと、私は思ってこうして」

コック長の言葉を遮るようにMJが口を開いた。

「コック長、シーナのギフトは料理と相性がいいと私は思うわ。
料理は色々な食材を煮たり焼いたり組み合わせて作るんでしょ。
彼女のギフトの訓練には料理こそベストじゃない。」

「そう言われれば、そうかもしれません。」

コック長はハッと何かに気づいた表情をして

「シーナ 厨房に戻るぞ」と言った。





「コック長!やっと戻ってきた。遅いですよ。
俺だけじゃ間に合わないですよ~」

ルイスは文句を言いながらベーコンエッグを作っていた。


「ルイス、それは俺が代わるから、皿を調理台に載るだけ並べろ」

「了解!」

「あっ私も手伝います。」

「シーナお前は、こっちだ。」

料理長は、フライパンからベーコンエッグを皿に移して、付け合せのサラダを手際よく作って盛り付ける。

「さてと。
材料は揃っている。
これと同じ物をルイスが並べた皿全部に、お前のギフトで作るんだ。」

「作る前に1つ食べてもいいですか?
見ただけだと味がわからないから」

「いいぞ!でも早くな、食堂にくる兵たちを待たせるわけにはいかんからな」

ベーコンとタマゴは、シンプルに焼いただけだった。マッシュドポテトも少し塩分を感じた。あとのサラダ類は切っただけのようだ。

すると頭の中で
ー 解析完了 ー
声が聴こえた。

「では、いきます。」

シーナがそう言うと一瞬で全ての皿の上には、ベーコンエッグとサラダが盛り付けられて現れた。

「おおー」
「スゲー 何だこれ!」

「ルイス 食ってみろ!」

「ええ~ 俺毒味役っすか?」

「バカ!俺も食うに決まってるだろ!」

二人がポテトサラダに手をつけると、表情が変わった。

「これ うめぇ!」とルイスが言うと
「オリーブオイルか」
と料理長が呟いた

「私 間違えましたか?」
とシーナが聞くと

「ああ。ある意味な。
美味しく作ることは大切だ。しかし、原価というものがある。
予算の範囲内で、いかに美味しくて、栄養があるものを作るかが重要なんだよ。」

「わかりました。勝手にやって、すみませんでした。
元に戻します。」

「いや 戻さなくていい。このポテトサラダはとても良い。ちょうどMJとは予算値上げ交渉をしようと思っていた所だ。いい材料になるからな。」





「おい 今日のマッシュドポテトいつもより旨くないか?」

「おまえもそう思うか?
俺おかわりもらってこよ~」

食堂では、こんな会話があちこちでおこっていた。


そして、MJが食堂に朝食をとりにやって来たタイミングで、コック長に連れられてシーナも食堂に顔を出した。

「みんな聞いてくれ!
今日のマッシュドポテトは、このシーナが作ったんだ。
どうだみんな。」

「旨いぞ!」
「コック長のよりなハハハ」
「これなら、毎朝食いたいぜ」
「旨かったよシーナ」
「俺の嫁に来ないか~」
「シーナ、俺と付き合おうぜ」


「だが、このマッシュドポテトは、今日限りかも知れん」



「ええ~、何でだよ~」
「シーナちゃん、また作ってくれよ」


「このマッシュドポテトシーナにお任せで作らせたものだ。
だがこの先これを作るのには、今の予算では無理なんだ。
シーナが作りたくても材料を買い揃えられないのが現状なんだ。
みんな悪いな。」


するとMJが口をきった。
「料理長!少い予算でいつもやり繰りさせてすまんな。
これからもよろしく頼むわね。」

その時トニー副長が口を開いた。
「MJ、とりあえず食べてみたらどうかな。
マジ旨いぜ、これ!」

周りの隊員が 声も無くウンウンと頭を縦に振っている。

「アハハ、たかがマッシュドポテトでなにを大袈裟に………」

しかし彼女が一口それを口にすると………

「何 これ!
全然別物じゃない!
もそもそした芋の味とは全然違うわね!
しっとりとしていて、香り高いし、なめらかな油分とその香りが食欲を誘う味!
ああ~
私の負けね、この味を封印する訳にはいかないわね。
料理長のトラップにかけられたようなところは、ちょっと悔しいけど、シーナのうでを認めざるをえないわね。
兵士全員の手当1%減給してその分を食材の購入費用に当ましょう。」


「ええ~ MJ 今何と言いました?」
トニーがそう言うと

「皆が食べる料理に皆で対価を払うのは当然でしょ。
国に『旨いものが食いたいから、部隊への手当を増やして欲しい』と要求はできないわよ
トニーなら、どうするかしら?」

「う~~ん
給与が減るのは辛いので、食材をとってきて提供するのはどうでしょう。」

「そうね、いいと思うわ。
だったら街の外の偵察の時には狩猟も許可するわ。
料理長、しばらくそれで我慢してくれない?」

「しかたねぇな。
肉は買わなくていい位頼むぞ!
あと香草も頼むぞ!」


するとシーナが
「私も狩りに連れてって下さい!」
とトニーに向かって言った
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...