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序章
プロローグ2
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今日は、僕の13歳の誕生日だ。
なのに変な夢を見て、頭がまだボヤッとしている。
夢の中では、僕は黒目黒髪の青年で山田聖人という日本人で、愛犬のウェルシュ・コーギーのベスと散歩をしていて、トラックに跳ねられる。
するとそのあと、僕はしばらく死んだ自分と愛犬を俯瞰で見ている。
誕生日だと言うのに、やな夢だ!
汗びっしょりかいて目覚めて、大きくため息をつく。
「クリーン」生活魔法で体を清潔にしてから着替えてダイニングへと行く。
「ブルース、誕生日おめでとう。」
「今日でお前も13歳。大人として自覚を持つんだぞ。
次の満月の日には、スキルの儀だ。ちゃんと精進して、その日を迎えるのだぞ。」
「俺よりいいスキルとか引くなよ。次男としての立場も弁えろよ。」
「母上、ありがとうございます。
父上、心してスキルの儀に望みます。ご忠告感謝します。
兄上、兄上の『炎剣』を上回るなんて有り得ませんよ。
兄上のお力になれるスキルが貰えるよう望んでます。」
ブルースは、ローズウォール家の次男で、長男のリチャードや父親のタイロンの下でこれまで窮屈な思いをしながらも、二人を尊敬して、目立ちすぎず、堅実に生きてきた。
ローズウォール家は、代々騎士の家系でブルースも小さな頃から剣や槍の修行を続けてきていた。
父親からは、当然「剣系統」のスキルを望まれて、スキルの儀に臨むことになっていた。
そして、満月の日となり、ブルースはスキルの儀を受ける為に、教会へと出かけた。
スキル「栽培」「鍛冶」「縫製」など、平民にも、それなりのスキルが発現して行く。
これが貴族になると「剣士」「拳闘士」「政治」「思慮」「統卒」「カリスマ」などといかにもなスキルが与えられていた。
そして、ブルースの番がやって来た。
「むむむ これは」
「司祭様、どうされました。
僕のスキルは、何でしょう。」
「私も、このスキルは、初めて見た。
ブルース、あなたのスキルは『観察』です。
これがどういったものかは私にもわかりかねます。
レアなスキルですので、使い方によっては、素晴らしいものとなりますよ。」
「『観察』ですか…………」
終わった。
こんなクソスキル何になるってんだ
しょんぼりと項垂れたまま家に戻ると、予想どおりの結果が待っていた。
いや、予想以上に悪かった。
「何なんだその『観察』とかは、昆虫学者か?植物学者か?
そんな者は我が家には要らん。
お前は廃嫡だ。恥さらしめ、明日にでも出てゆけ!」
真っ赤な顔で父親は、ブルースに怒鳴り散らした。
「いっそのこと、お前死ねよ。
こんなスキルの奴が弟だと思うと、情けないぜ。」
兄のリチャードの目には殺気がこもっていた。
やばい!本当に殺される!
ブルースは、逃げるように自分の部屋に駆け込み、直ぐに屋敷を出る支度をした。
これまで少しずつ貯めた小遣いを袋に入れて、護身用のナイフだけを身に着け直ぐに旅立つことにした。
ブルースが屋敷門に行くと、そこにはリチャードが待ち構えていた。
「おいおい。出ていくのは明日じゃないのか?」
「兄上、これまでありがとうございました。これ以上ご迷惑をかけるわけにも行きませんので、今すぐ家を出ます。」
「そうか、殊勝だな。
親父は、廃嫡届を出しに出掛けたぞ。
明日だったら、平民のお前を炎剣のエサにできたのに、残念だ。
せいぜいあがいて生きるんだな。」
又も兄の目に殺気がこもるのを見て、慌てて、ブルースは外へと駆け出した。
「めでたい花火を打ち上げてやろう!
間違って当たらないようにな!」
リチャードが剣を振るうと、炎がブルースに向って走ってゆく。
やばいやばい
殺される!
ブルースはジグザグに走った。迫りくる炎の帯を見ては、躱して行く。
2度3度避けて見ると、炎の軌道が手に取るようにわかった。
「クソ!何で当たらないんだ!
あいつ背中に目があるのか?」
遠ざかるブルースを見てリチャードは地団駄を踏んだ。
何故リチャードの炎剣がブルースに当たらなかったかは、その時は二人共分からなかった。
リチャードは、ブルースを追ってまで仕留めようとはしなかった。
リチャードの炎剣は、剣技ではあるが、ファイアローのように離れた相手を攻撃するのに向いている。
接近した鍔迫り合いでは、自分にも火の粉が降り注ぐので使用を控えている。
その為スキル『武芸百般』持ちの父親には、未だ勝ったことが無かった。
「ふぅ~危なかった。それにしても、兄の遊び半分で殺されてはたまらないよな。さっさとこの街も出よう。」
ブルースたちが暮らしていたサマンドールの街は、王都から遠く離れた、ロッシーニ帝国と境界を接している辺境の地で、父親のタイロンは、サマンドール辺境伯の下で、騎士団長を勤めていた。
「隣町行の駅馬車は、もう出ちまったよ。
次は、明後日の昼だ。
残念だったな。」
はぁ~どこまでついてないんだ。
貰ったスキルがクソスキルの上、兄弟に殺されかけて、馬車にも乗れないのかよ!
ちょっとやけになってぼやいてみたけど、状況は当然変わらない。
「へへへへへ」
自虐的に、ちょっと変な薄ら笑いを浮かべてみても何も意味は無い。
「よし、覚悟は出来た。
追い出された時点で覚悟した事をもう一度確認しただけだ。」
ブルースは、徒歩で隣町を目指してサマンドールの街の門をくぐった。
なのに変な夢を見て、頭がまだボヤッとしている。
夢の中では、僕は黒目黒髪の青年で山田聖人という日本人で、愛犬のウェルシュ・コーギーのベスと散歩をしていて、トラックに跳ねられる。
するとそのあと、僕はしばらく死んだ自分と愛犬を俯瞰で見ている。
誕生日だと言うのに、やな夢だ!
汗びっしょりかいて目覚めて、大きくため息をつく。
「クリーン」生活魔法で体を清潔にしてから着替えてダイニングへと行く。
「ブルース、誕生日おめでとう。」
「今日でお前も13歳。大人として自覚を持つんだぞ。
次の満月の日には、スキルの儀だ。ちゃんと精進して、その日を迎えるのだぞ。」
「俺よりいいスキルとか引くなよ。次男としての立場も弁えろよ。」
「母上、ありがとうございます。
父上、心してスキルの儀に望みます。ご忠告感謝します。
兄上、兄上の『炎剣』を上回るなんて有り得ませんよ。
兄上のお力になれるスキルが貰えるよう望んでます。」
ブルースは、ローズウォール家の次男で、長男のリチャードや父親のタイロンの下でこれまで窮屈な思いをしながらも、二人を尊敬して、目立ちすぎず、堅実に生きてきた。
ローズウォール家は、代々騎士の家系でブルースも小さな頃から剣や槍の修行を続けてきていた。
父親からは、当然「剣系統」のスキルを望まれて、スキルの儀に臨むことになっていた。
そして、満月の日となり、ブルースはスキルの儀を受ける為に、教会へと出かけた。
スキル「栽培」「鍛冶」「縫製」など、平民にも、それなりのスキルが発現して行く。
これが貴族になると「剣士」「拳闘士」「政治」「思慮」「統卒」「カリスマ」などといかにもなスキルが与えられていた。
そして、ブルースの番がやって来た。
「むむむ これは」
「司祭様、どうされました。
僕のスキルは、何でしょう。」
「私も、このスキルは、初めて見た。
ブルース、あなたのスキルは『観察』です。
これがどういったものかは私にもわかりかねます。
レアなスキルですので、使い方によっては、素晴らしいものとなりますよ。」
「『観察』ですか…………」
終わった。
こんなクソスキル何になるってんだ
しょんぼりと項垂れたまま家に戻ると、予想どおりの結果が待っていた。
いや、予想以上に悪かった。
「何なんだその『観察』とかは、昆虫学者か?植物学者か?
そんな者は我が家には要らん。
お前は廃嫡だ。恥さらしめ、明日にでも出てゆけ!」
真っ赤な顔で父親は、ブルースに怒鳴り散らした。
「いっそのこと、お前死ねよ。
こんなスキルの奴が弟だと思うと、情けないぜ。」
兄のリチャードの目には殺気がこもっていた。
やばい!本当に殺される!
ブルースは、逃げるように自分の部屋に駆け込み、直ぐに屋敷を出る支度をした。
これまで少しずつ貯めた小遣いを袋に入れて、護身用のナイフだけを身に着け直ぐに旅立つことにした。
ブルースが屋敷門に行くと、そこにはリチャードが待ち構えていた。
「おいおい。出ていくのは明日じゃないのか?」
「兄上、これまでありがとうございました。これ以上ご迷惑をかけるわけにも行きませんので、今すぐ家を出ます。」
「そうか、殊勝だな。
親父は、廃嫡届を出しに出掛けたぞ。
明日だったら、平民のお前を炎剣のエサにできたのに、残念だ。
せいぜいあがいて生きるんだな。」
又も兄の目に殺気がこもるのを見て、慌てて、ブルースは外へと駆け出した。
「めでたい花火を打ち上げてやろう!
間違って当たらないようにな!」
リチャードが剣を振るうと、炎がブルースに向って走ってゆく。
やばいやばい
殺される!
ブルースはジグザグに走った。迫りくる炎の帯を見ては、躱して行く。
2度3度避けて見ると、炎の軌道が手に取るようにわかった。
「クソ!何で当たらないんだ!
あいつ背中に目があるのか?」
遠ざかるブルースを見てリチャードは地団駄を踏んだ。
何故リチャードの炎剣がブルースに当たらなかったかは、その時は二人共分からなかった。
リチャードは、ブルースを追ってまで仕留めようとはしなかった。
リチャードの炎剣は、剣技ではあるが、ファイアローのように離れた相手を攻撃するのに向いている。
接近した鍔迫り合いでは、自分にも火の粉が降り注ぐので使用を控えている。
その為スキル『武芸百般』持ちの父親には、未だ勝ったことが無かった。
「ふぅ~危なかった。それにしても、兄の遊び半分で殺されてはたまらないよな。さっさとこの街も出よう。」
ブルースたちが暮らしていたサマンドールの街は、王都から遠く離れた、ロッシーニ帝国と境界を接している辺境の地で、父親のタイロンは、サマンドール辺境伯の下で、騎士団長を勤めていた。
「隣町行の駅馬車は、もう出ちまったよ。
次は、明後日の昼だ。
残念だったな。」
はぁ~どこまでついてないんだ。
貰ったスキルがクソスキルの上、兄弟に殺されかけて、馬車にも乗れないのかよ!
ちょっとやけになってぼやいてみたけど、状況は当然変わらない。
「へへへへへ」
自虐的に、ちょっと変な薄ら笑いを浮かべてみても何も意味は無い。
「よし、覚悟は出来た。
追い出された時点で覚悟した事をもう一度確認しただけだ。」
ブルースは、徒歩で隣町を目指してサマンドールの街の門をくぐった。
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