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序章

プロローグ

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 私はウェルシュ・コーギー♀犬です。


 否


 ♀犬でした。



 今の私は、ブヨブヨした体で、目も鼻も口も無くて、手足も有りません。

 こんな体だけど、周りの様子は、何となくわかります。
 体全体が肉球みたいで、皮膚感覚を研ぎ澄ましてみれば、草や土や石とかわかります。
 もちろん熱いとか冷たいとかもわかります。
 体を縮めてから、一気に伸ばすとポヨンと飛び跳ねられます。
 転がったりすれば、早く進めるし、カタツムリみたいにズリズリ這って進むことも出来ます。

 何でこんな身体になったのかは、分かりません。
 でも雌犬だった私は、死んだんだとわかってます。
 大好きなご主人様の聖人マサトとお散歩してる時に、トラックに跳ね飛ばされたのを覚えています。
 聖人も、私のように別の何かになったのかどうかは、分かりません。
 でも、もしそうなら、又会いたい。スリスリしたりペロペロしたい。撫でてもらいたいなぁ。
 フリスビーやボールで遊びたい。

 でも、この身体じゃあ聖人に会えても私だって気付いて貰えないかも知れないわ。
 どうしよう。考えないと。





 いくら考えても、いい考えが浮かばない。




 そうだ!何か食べないと!
 お腹は全然減ってないけどね。
 お腹自体がどこ?って身体なのよね。
 でも、何か食べられる気がするわ。



 とりあえず、草を食べてみる。

 食べるって言うよりも体内に取り込んでいるだけだけどね。

 手当たり次第どんどんと食べていると。声がした。

『ポーションを作成するには、水分が不足しています』


ポーション?水分?

よくわからないけど、水がいるのね。

水溜まりの泥水を身体に取り込んでみる。

『スライムウォーターを生成します』

スライムウォーターってなに?

『泥水を精製して出来た純水』

私の体の中で、泥水から綺麗な水を作れるってことかな

『解
 魔力を使用し、スライムウォーターと薬草から、ポーションを作成しますか?』

魔力?魔力って何?

『魔法を使用する為の力、この世界の全ての生物が持っている力』

ポーションって何?

『使用した者の治癒力を大幅に上げて、怪我や病気などの状態異常を治す物。飲む又は患部に塗ることで効果を発揮する』


へぇ~ ポーション凄くいいですね~
作ります。作ります。




『魔力が残り少なくなりました。ポーション作成を中止しますか』


えっ 魔力って使うと無くなるんだ。残りが無くなるとどうなるの?

『魔力欠乏症となり、行動不能になります。その状態で攻撃を受けるとかなりの確率で死亡します』

やばいやばい。中止。中止よ。ポーション作成は直ぐ中止。

魔力を元の量にするには、どうしたらいいの。

『安息にしていれば、時間と共に徐々に回復します。
今の状態なら、半日でフルパワーになります。』

所であなたは、誰?どこに居るの?

『私は、チュートリアル。あなたが、この世界に送り込まれた時に、あなたの意識の中に埋め込まれた物です。
あなたがこの世界や自身のことを一通り理解したら、私の役目は、終わります。』

そしたら、もう出てこなくなるの。

『はい、そうなります』

そのうち居なくなっちゃうんだ。さみしいわね。
それまでに私はこれからどうしたらいいの?

『何でも取り込んでみましょう。そして、取り出してもみましょう。
自分の体の特性を理解しましょう』

周りの岩石や土を取り込んでみる。
体内で小石位に分解出来るようだ。
プッと勢いよく吐き出すと、近くの木の幹に突き刺さった。

目が無いのにどうして木に刺さったのがわかったかというと、魔力視が使えるようになったからなの。

面白くなって小石を飛ばしていると、飛んでる蜂を撃墜したようだ。

蜂の仲間が怒って私に攻撃をしかけて来た。

私は、岩石にからだを変えた。

そう、初めてやってみたけど、取り込んだ物に自分の体を、変化させられる気がしたんだ。

蜂たちの攻撃は、自分には全く通用しなかった。

しかしこのままだとただの岩なので反撃も何もできない。

地面に接している部分のみ元に戻せるか試してみる。

おおー 成功したわ。
蜂の攻撃が収まってきたので、この状態でズリズリと移動してみる。
目標は、先程撃ち落とした蜂の亡骸だ。

蜂は、そのままの姿で地面に転がっていた。

ヨシ!
蜂を体に取り込んだ。
そして、自分を蜂に変化させた。

やっぱりそうだ!私は、取り込んだ物に、変身する能力が有るんだ!

蜂の視界は、魔力視よりはいいが、まだボヤッとしている。
それでも、何と言っても空を飛べるのが気持ちいい。

バチッ!

体に衝撃が走った。

いつの間にか鳥に咥えられていた。

即死じゃなくて良かった。

鳥は小枝に止まると、私を足で押さえて翅をむしった。

フフフ、お生憎。
食べられるのは、アナタの方よ!

変身を解いて、小石を小鳥の頭に撃ち込んだ。

枝から落下する小鳥を包みこんで、一緒に地面に落ちた。
このポヨンポヨンした体だと殆ど衝撃は受けない。

小鳥に変身して飛ぼうかと考えたけど、又他の動物に食べられるかも知れない。
スライムのままで、目だけ小鳥の目を出して使えるか試してみると


おおー 見える見える。
前世の犬だった時よりもっと良く見えるし、カラフルだ。


「鳥の目 最高!」

折角だから、自分の姿を見て見よう。水溜まりを探してポヨンポヨンと跳ねてまわった。

そして、遂に!

「ピンクの肉まんみたいね。」

その時、急に何かゾッとした!
何?この感覚は?
これまでの生き物とは違う、悪意を向けられてる感覚がある。
これは?

『ブルースライムのテリトリーに入ってしまったようです。
ここは、戦わずに早めに立ち去ることをオススメします』

「えっ、どこ?どこ?」

キョロキョロ見回していると、どこからか飛んできた酸液で目をやられてしまった。

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