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第1章

新たな師匠べイル

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「べイルさん この串焼き肉うまい」

「ララさん 女の子は、うまいじゃなくて、美味しいって言わないとな」

「えー だってー 食べてみたら、柔らかくて、簡単に食いちぎれて、奥歯で噛んだらブワッて出てきた肉汁とタレの味が合わさってたのよ。
美味しいって言葉じゃこの感動は、表現しきれないわ」

「そうか。そんなに喜んでくれたんなら、仕方ねーな クリスは、どうだ
って お前2本目かよ」

「美味しくいただいてます」


結局、クリスは3本ララは2本の
串焼き肉を平らげてから、3人はギルドの訓練場に戻って来た。

「お前ら、今動いたらもどすんじゃねえか」

ベイルの心配をよそに、二人はタケル師匠に教わった型を始めた。

二人の演武は、オーラを発し、ひとつひとつ所作そして呼吸までもピタッと一致して、神々しくて、ベイルは唖然とした。

こりゃあ本物だな。俺も気合入れないといけねえな。

「次は、剣術だ。マインに『教えることがない』って言わせた技を見せてみろ。
そうだな、お前ら今から模擬戦しろ。」

クリスとララは、5m位離れて向かい合い、背中の木刀を腰にセットした。
互いの目線が合うと、軽く一礼した。

「ほう、礼儀正しいんだな。よし、始め」

二人は流れるような動きで木刀を振るう。
「カンカン」と木刀を打ち合う音が訓練場の中に響く、周りで訓練していた冒険者たちが手を止めて二人の模擬戦を見だした。
そして、ギャラリーがひとりふたりと増えていく。

そして、2人の剣技が激しさを増していった。

「あれは、俺の水流剣、瀑布だ。
マインの言うことは本当だったな。
呆れたガキ共だ
マインと一度手合せしただけでここまでやるのか。
おっと あいつ等マインの悪い癖まで真似してらぁ
面白えな。
ベイル、面倒見てやれよ」

いつの間にかベイルのそばにギルドマスターのガルドが居て、二人の勝負を観戦していた。

「クリス 降参よ はぁはぁ
参りました。 はぁはぁ」

「勝負あり。勝者クリス」

ギャラリーから拍手が沸き上がった。

ララは大きく息を吸い込んでから
フーっと吐き出し
「全くあんた体力バカなんだから
女子には、もう少し優しくしなさいよ」

「ララに手抜きは通用しないじゃん
ボコボコにされるのは嫌だよー」

ララは、木刀を背にしまい、後手を組んで肩を揺らしながらクリスのそばに来た。
クリスも木刀をしまうと

「ねぇクリス」

「ん ゲブッ」

ララのボディブローが決まり、クリスは吹っ飛んだ。

「クリス 演技してるでしょ」

クリスは、瞬間的に腹に魔力を集めて、かつ後ろにジャンプしていたのだ。

クリスは腹を押さえながら

「そりゃララの強烈なパンチに防御全然しなかったら、ぼく死んでるかもしれないじゃん。
実際ふっ飛ばされてるし。」

「手応え薄かったのよね。実際ダメージ無いでしょ」

「バレた」

「バレバレよ」

「はいはい 2人共そこまでだ。
2人の実力は、だいたいわかった。
ところで2人は、なんで背に木刀背負ってるんだ。
剣は、どうした。」

「剣は、ゴブリン狩った時の錆だらけのしか有りません。お金が貯まったら買うつもりですけど、それじゃだめですか。」

「アハハハハ そうかそうなんだ。
おいガルド 剣もろくに触ったことが無いガキ2人がお前の流水剣をなぁー
こりゃ笑うっきゃないよな。」

ガルドは渋い顔をして
「ベイルあとは任せる」
と一言言って、訓練場から出ていこうとした。

「ガルドちょっと待てよ。見せたい物が有るんだ」

「見せたい物」

「ああ」

ベイルは、ララの方に向き直って
「ララ 昨日は弓を持ってたよな、それを出して見せてくれないか。」

「いいわよ
クリス出してくれる」

「はい どうぞベイルさん」

ガルドは、それを見て驚きで目を見開いた。

「そよ弓をどこで手に入れたんだ」

「ダンジョン中層でゴブリンが持ってました。
いい弓みたいに思えたんで、使ってました。」

「そうか、クレアがこの子らと俺たちを引き合わせてくれたのか」

ガルドがそう呟くとベイルが話し出した。

「この弓の持主だったクレアとガルドと俺は、昔パーティーを組んでいたんだ。
まだ駆け出しの青二才の頃のことだ。
俺とガルドが前衛でクレアが後衛で、前から来る敵と戦っていた。
その時後ろからも敵が来て、俺もガルドも対処できなかったんだ。
クレアが連れ去られた。
俺もガルドも敵に囲まれてどうすることもできなかったんだ。
戦って戦って、何とか俺とガルドは、生き残った。
ギルドに戻って助けを求めたら、直ぐに討伐隊が編成された。
俺もガルドも満身創痍で討伐隊には入れてもらえなかった。
討伐隊は、舌を噛み切って死んでいるクレアの亡骸を持って帰ってきたが、弓は見つからなかったという訳さ。」

「クレアさんは、お二人どちらかの彼女だったんですか。」

「それを聞くか。
まあいい。ベイルも俺もクレアが好きだった。
それで、同時に告白して、同時に振られたんだ。
『二人共好きよ。だから、選べない。ごめんなさい。今のままじゃだめかな。』てな」

「まぁそれでガルドも俺も未だに独身さ
ハハハハ」

「ベイル お前は女にモテないだけだろ」

「ガルド その言い方だと、まるでお前が女にモテるみたいに聞こえるが、俺の聞き違いか」

「ああ、俺はギルドマスターだからな。
古傷のせいにして、やさぐれてるお前よりはモテると思うぞ」

「女はちょっと悪い男に母性本能で惹かれるんだよ。マジメ君はつまらないのさ」


「マアマアふたりとも、これだからクレアさんにも振られたんでしょ。」

ララの一言でガルドもベイルも大人しくなった。


「さてと、クリス、ララ
お前らの剣を買いに武器屋に行くぞ
ギルドマスター様は、ソロソロ仕事に戻った方がいいんじゃねぇか」

「余計なお世話だ」ガルドは、そう言って戻って行った。



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クリスとララの冒険譚をこれからも見守って下さい。
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