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第1章

ダンジョン中層2

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「こっちの方に、アークバッファローがいるけど、狩る?」

「えっ ララさん、それは、ここからどのくらいの距離」

「2km位先かな」

「そんな遠く迄どうやったら分かるの」

「まっすぐ探知線を伸ばして、それをグルっと回して、何か引っかかったらそこに当ててるんだけど」

「へぇー そんなやりかたもあるのね。
元々がクリスを探す為に探知を使ってたから、ピンポイントな使い方なのね。
線を回して面に対応してるのね」

「普通そうじゃないんですか マインさん」

「私の場合は、自分中心に魔力を円状に広げて、そこに入っているものをみる感じよ。
ララのやり方の方が遠くをチェックするにはいいのかもね。
その代わりタイミングによっては、見落しがあるかもね。
一長一短ね。
でも、私も勉強になったわ。ララありがとう。」

「エヘヘ」

ララがマインのそばに寄ってきたので、マインはララの頭を撫でてやった。

クリスは、ララの指差した方を睨んで「んーー」と唸ってるが、少しして
「やっぱわかんないや。ララは凄いなぁー」
と言った。

「それじゃあ、アークバッファロー狩りに行きましょう。
でも、今回は直ぐには殺さないでくれる」

「なんでですか」

「ララの水魔法の回復の練習台にするのよ」

「「はーい」」





例によって、クリスとララが先行する。
マインが2人に追いついた時には、アークバッファローが既に転がされていて、4本の足がみなありえない方向に曲がっていた。

「ふー ふー
なんでえー どうやったらあの頑丈なアークバッファローの足がこんなになるのよー
驚かない、驚かない。もう慣れたはずよマイン」
マインは、自分に言い聞かせた。

「ララ その変な方に向いた足のどれでもいいから、水魔法で包んで正しい形に固定して、その状態のまま探知でどこがどう損傷してるか探ってみて」

「はーい。
えーとー 膝のお皿が割れてて、周りの筋も全部切れてますねー。
可哀想」

「あなたたちがやったんでしょ。
いちいち可哀想がらないの。
次は、そのお皿が割れてなくて、筋もくっついてる状態をイメージして、魔力を流し込むのよ」

「はーい
痛いの痛いの 飛んで行けー
ポイポイポイ」

水魔法に包まれたアークバッファローの膝が一瞬光って見えた。

「ブモー」アークバッファローが足をかく動きをした。

「ララ チェックしてみて」

「まだ、お皿にヒビが残ってて、筋も一部分しか繋がってないわ」

ララは、そこまで言うとふらついた。
すぐにマインがララを支えた。

「魔力の使い過ぎね。水魔法を解いて。休憩よ」


アークバッファローを押さえこんでいるクリスが
「マインさんコイツは」

「殺して魔石の回収よ」


ララが休んでる間、クリスはマインの指示に従って、近くに寄ってきた魔物を狩っていた。


しばらくして
「もう大丈夫。私も狩る」
ララはすっくと立ち上がった。

「ララさん さっきのあなたは、魔力切れで倒れそうになったのよ。
今日は、探知も含めて魔法は控えて。
それでもいいなら、許すわ。
ただし気持ち悪くなりそうな時は、即離脱すること。いいわね。」

「はい。わかりました。
クリスー 待ってー 私も行くー」

まるでルンルンで遊びに出かけるようね。
回復の早さも凄いわ。
伸び盛りの子ってこうなのかしら。
ちょっぴり羨ましがるマインだった。


「ねぇクリス。ゴブリンが持ってた弓矢あるんでしょ。あたしにくれる。」

「そうだね。ララのスキル弓兵だったよね。
忘れてたよ。
好きなのを選んで使って」

弓を5張と矢筒も5本、それに矢を数十本出した。

「ちょっと待ってね。」
クリスはクリーンの魔法を使った。

薄汚れていた弓矢は、艶を取り戻した。

「これにするわ」
ララが選んだ弓の持ち手の所には、クレアと名前が彫ってあった。

「クリス この弓が手に馴染む気がするわ
クレアって人の弓だったのね。
クレアさん ゴブリンから取り返したわよ。
大事に使うからね」

ララは、手に取った弓をもう一度置いて手を合わせた。

ララは、生まれて初めて弓を手にした。
だが、クレアの名が入ったその弓は持った瞬間から手に馴染む感じがした。

「アハハハハ これ凄ーーい
外す気がしなーい」

「ララ それは良かった。
選んだのはいい弓なんだね。
クレアさんの分も頑張ろうね。」

ララの弓の腕は、初心者とは思えない命中率をみせた。
命中率というよりは、百発百中という方が正しいかもしれない。
しかし、魔力を乗せない弓矢の与えるダメージは、少なかった。

マインとの約束の為に矢に魔力を乗せることはしなかったが、けん制になった。
また命中率をあげる練習にもなった。

クリスは、そうしてララがあえて仕留め損なった獲物をひたすら狩りまくった。

ダンジョン中層の魔物をあらかた狩って、冒険者ギルドに戻って精算手続きをすると報酬は
186000Gとなった。

「こんな大金もらえるの」
「凄いわねクリス」

「ちょっと、静かにしなさい。
周りから見られてるわよ。」

マインは先に注意しとくべきだったと悔やんだ。
ジャラジャラとカウンターに魔石を出した時点から彼らは目立っていた。

二人の実力をなるべく早く周囲に認めさせないといけないわね。


マインの危惧は直ぐに現実となった。
が、予想とはちょっと違った。

「マインちゃんよう。
そんなガキ共の子守りなんかしないで、一緒に酒呑もうぜ。
バッチリ稼いだんだろ
奢ってくんねえかなぁ」

男は、マインの肩に手を回した。

「止めてくださいベイルさん
あなた、実力があるのに、人に酒をたかるのは良くないわよ。
ちゃんとクエストをこなせば、それなりの成果はあげられるでしょ。」

「ああん 今更この足で何が出来るってんだ
ゆっくり歩くのがやっとこさな俺にどうしろってんだよ」

「冒険者辞めて、出来る仕事を探さないのはどうして。
冒険者に未練があるんでしょ。
グダグダ言い訳言って無いで、働きなさい。」

「ちっ そのガキみたいに、少しは俺の面倒もみてくれてもいいだろう」

「仕方ないわね。次は無いわよ」

マインは2000Gをベイルに握らせた。

「べ ベイルさん」

「ああー なんだぁ マインが面倒みてるガキか
俺は 小娘には用はねぇぞ」
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