魔王の子

烏帽子 博

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第二章

捕虜BB

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治癒魔法の甲斐があって、助けた敵兵は、回復した。
彼女が最初に発した言葉は
「どうして………」
それっきり口をつぐんだ。

「あなたはソーレン星人の唯一の生き残りよ。
我々に協力するなら、殺しはしない。
色々喋って貰うわよ」

フウリンがそう話しかけると
彼女はジェスチャーで

口を指差し
手を胸の前でクロスして☓を作り
手を上に向けて、グーからパーをした。

「喋れない理由は、爆弾?」

彼女は心臓の当たりを指差してから、グーパーをして頭を縦に振った。

ー タマ、彼女の全身を探知で調べて異物が無いか診てくれる。特に脳と心臓付近を注意して ー

ー 頭部には、チップが有ります。心臓のそばに、パワーの塊があって、手の銃口や足にも繋がってます。内臓は退化してほとんど機能してなかったみたいです。先程のパワーの塊が脳や心臓を動かしていたようです。ー

ー タマ、彼女の頭のチップは、取り除いても命に問題無いかしら。ー

ー たぶん大丈夫としか言えません ー

ー じゃあ本人に確認するしか無いわね。ー

「ねぇあなた これからあなたの頭の中のチップを取り除こうと思うんだけど、それであなたが死んだり、爆発することは無いかしら?」

彼女は胸の前で祈るように手を組み、頭を縦に振った。

ー マオ、タマラが調べた情報を共有して、頭の中のチップを結界で包んで消し去って ー

タマと手を繋ぐと、タマの魔力と共に敵の女の体を調べた情報が全て流れ込んできた。

私はタマと手を離し、念のため敵の女と自分の二人の周りに結界を張った。
頭に手をのせて、探知を行う。
タマのように得意ではないけど、タマのくれたマップに従って診ていくと、ソレはあった。

ソレにいくつかの神経も繋がっているので、慎重に結界をチップの周りに作り出して、チップを取り除いた。
無事爆発が起きることもなくチップは取り出せた。
すぐに治癒魔法をかけ始めた。

するとセーラがきて、
「私に任せて、治癒魔法じゃだめよ、再生魔法じゃないとね」

セーラが彼女の頭に手をのせて少しすると、彼女は目を開けた。

フウリンが、彼女に話しかける。
「もう大丈夫、頭の中のチップは取れたわ。ここにいる人以外には、あなたの言葉を盗み聞くことは出来ないわ。
最初の話に戻るわよ。
私たちに協力するなら、あなたを殺しはしない。
どう?あなたも自爆するの?」

「協力します。自爆はしません。
頭のチップを取り除いてくれてありがとうございます。
これで最期は人として生きられます」

「あなたの名前は?ソーレン星人は、この基地以外にどのくらいいるの。」

「私はBB069です。ここの他、はウクラ星とリミア星の基地、合わせて50人位だと思います。
他にこの基地から飛び立っていってる兵士が3名程います。
まずその3名が戻って来るはずです。」

「その3人はAK135って奴より強いのかしら。」

「はい、ですが、こちらの皆さんの方が実力は上だと思います。」

「何で私たちに協力する気になったの?」

「私たち兵士は皆改造され頭の中にチップを埋められて、常にマザーに監視され、支配されています。
先程自爆したBB096は私の友だちでした。
自爆するように命令されたんです。
私が投降するふりをして、味方に後から撃ち抜かれたのも命令でした。
私は、バッテリーを使いきればそれで生命も終わりです。
その時まで、マザーの司令ではなく自分の意思で行動できれば本望です」

「BB069 う~ん 本当の名前とかないの?番号とか記号じゃ無くてさ」

「改造されたときに、それ以前の記憶は消去されたのでわかりません。」

「それじゃあポコが名前つけてあげる。
ポコは、元はアイシャって名前なの。
でもね マオマオとタマがポコって呼び名をつけてくれたのよ。
私 ポコって名前気に入ってるんだ~
それでね、BBだから、ブリジットがいいと思ったんだ。それともそのままビービーにするってのもいいかなぁ?」

「ポコさん ありがとうございます。ブリジット、いい名前ですね。皆さんそう呼んで下さい。」

「ブリジット 君以外の君の仲間は頭のチップを取ればどうなると思う?」

「多分変わらないと思います。私は96とよく話していたんです。
他の星を侵略して、たくさんの人を殺すのが、私たちの仕事。私たちは、そのための道具。
わかっていたんです。
でも彼女が自爆して悲しかったんです。
何でこんな死に方しなきゃいけないんだろうって。
私のこんな感情も、次にメンテナンスを受けたら消えるはずだったんです。
だから、きっと兵士は何をしても最後まで抵抗すると思います。
ウクラ星とリミア星のマザーを壊して下さい、そしてウクラ星に残る、まだ改造されてない子どもたちを救って下さい。」

その後、ブリジットの言葉通り3人のAランク兵士が戻って来た。
話をするどころか、こちらを見かけるなり攻撃してきたので、返り討ちにした。
捕まえてチップを壊すなど
とてもできることでは無かった。
ブリジットは、ソーレン兵が殺されるのを、黙って見ていた。

ドックに残された宇宙船をブリジットにセットしてもらい、
まずリミア星へと全員で向かった。
ブリジットに、宇宙船での充電を薦めたが「また人で無くなる気がする」と拒否された。

リミア星到着間近に管制塔から連絡が来た。

「貴舟の指揮官名を、知らせよ。リミア星への到着目的を答えよ。返答なき場合は、直ちに撃墜する」

「全弾発射!」

「ブリジット!どうした?」

「撃ちました!そして、攻撃が来ます!」

ー マオマオ、ブリジットをお願い! みんな!戦闘開始よ!ー

私たちは、宇宙船を捨てて船外に出た。
「マオさん私はいつ死んでもいいです。
私に構わず思いっきり戦って下さい。」

ブリジットは力無く落ちていった。

こちからのミサイルは、ほぼ撃ち落とされたが、一基だけ管制塔に命中した。

わらわらと兵士が飛び出して来て空中戦になった。

彼らの放つビームへの対策は各自済んでいる。
それほど時間をかけることもなく、殲滅した。

戦闘が終わるとブリジットが泥だらけで姿を現した。

「マザーは、あの建物の中央です。
電源はその地下です。
私はおじゃまでしょうから、ここで皆さんの成功を祈ってお待ちしてます」

ブリジットは、どう感じているんだろう。
この間まで仲間だった人たちが、われわれに次々と殺されてゆくのに手を貸して、黙って見届けているんだ。
苦しいに決まっているはずだ。

ー マオマオ、行くよ!ー
タマに促されて、私もマザーの破壊に向った。

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