魔王の子

烏帽子 博

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第一章

剣舞そして卒業

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ー はい 皆さん、午後は剣舞の練習よ。
多少木刀とか振り回したこと有るのは?ー

私とタマが手を上げた

ー 私たち、木の枝ですけど、しょっちゅう剣術ゴッコしてました。ー

ー それじゃあ、二人一緒にかかって来なさい。
私は剣舞で対応するからね。
ポコとセーラはよく見ててね。ー

私とタマは、身体強化を使い、スピードも変化をつけたり、同時に攻めたりと、思い付くことを色々やってみたが、ことごとく外された。

2分位戦い、私たちが肩で息をするようになった頃、フウリンに木刀を叩き落とされた。

ー 見学してたポコとセーラ、感想は?ー

ー フウリンさん強い!ー

ー 剣舞で戦うって普通に戦うのとどう違うんですか?ー

ー 簡単に言うと、直線と曲線、柔と剛、力より技、二の先 ー

ー よけいに分かりません ー

ー それじゃあ、今度私とジンが戦うから、4人ともよく見ててね。私とジンの戦い方の違いをね。
因みに私にちゃんとした戦い方を最初な教えてくれたのがジンよ
剣舞は光の剣聖ビアンカ、つまりジンと私の母に教わったのよ ー


フウリンとジンの試合を四人は観戦することになった。

ジンは真っ直ぐ突っ込んでゆき、木刀を上段から振り下ろす。
フウリンは剣先を後ろに、ツカをジンに向けて受ける。

ジンの剣は、軌道を変えられてフウリンの脇に流れる。

二人の剣が、離れるとその反動を使ったフウリンの剣が、ジンの首を捉えに行く。

ジンは、ブリッジのような体制になってそれを避け、そのままバク転して距離をとった。

フウリンはそのまま前へと距離を詰め剣先が8の字を描くようにジンに斬りつける。

ジンは、何度かそれを躱してから横に飛んで、体制を立て直し、中段からの攻撃を繰り出す。

フウリンは、このときもジンの剣をマトモには受けない。

剣が会わさった瞬間に、少しジャンプして、ジンの剣のミネに沿わすように剣の刃を滑らせ、ジンの喉元を狙う。

ジンは一瞬早くそれを跳ね上げ、フウリンの胴を薙ぎにいく

フウリンは突き出した剣を引き左手を剣のミネに添えて
ジンの剣を受ける………と見せかけて体をねじるように回転させて下から斬りつける

ジンは軽くジャンプして、これを払おうと剣を振り下ろすが、ここでもフウリンは剣先を反してジンの剣筋をずらす。

二人はお互いにバックステップして距離をとった。

フウリンは、空中に飛び上がり回転しながらジンを攻める。

「ズリーなフウリン、飛ぶのかよ。」

「あなたの大好きなお母さんも飛んだわよ」

「それじゃあ、僕も本気だす」

フウリンが再び空から急降下しながらジンを攻撃するが
ジンはそれに背を向けて逃げる。
それを追うフウリン。
ジンが向き直り、剣をつき出す。

フウリンは今度もそれを受け流そうとすると、そのまま距離を詰めたジンの膝蹴りがフウリンの腹をとらえたかに見えた。

「浅い!」タマが呟いた

フウリンは後ろに、飛んでいた。

「フウリン、腕をあげたな。
昔ならこれで決まってたのに。」

「いいえ、これで決まり。あなたの勝ちよ。
膝蹴り、魔力込めなかったでしょ。
ホントなら私は、ぶっ飛んでるところよね。」

「まぁ そうかもね。」



ー みんないいかしら。剣舞は剣の一つの流派みたいなものよ。パワー負けする相手にはかなり有効な戦い方よ。
一つ一つの型を繰り返して、体に覚えさせてね
で、それぞれの得意な武器は何かな? ー

ー 私は剣かな?でも、タマと木の枝振り回していた時のことを思うと木刀は、少し重い気がするわ。ー

ー そうか、それじゃあマオマオはレイピアがいいんじゃないかな、軽いから素早く動かせるし、マオマオには強力な結界もあるし、いいと思うわよ。ー

ー ありがとうフウリン。
私 レイピアにします。
タマは何にするの? ー

ー 私は、槍がいいわ。でも持ち歩くのには邪魔そうね。どうしようかな。ー

ー タマ 槍は女性向きの武器とも言えるわよ。剣はその重さが女性には扱い辛くて、マオマオがレイピアを選んだのもそうだしね。
敵と距離をとって戦えるのは、メリットよ。
それにタマの場合は、かいくぐってフトコロに入られても、爪でも攻撃できるでしょ ー

ー 決めた!槍にする。フウリンおねがいします。ー

ー え~~~っと ポコは、タガーにしようかなぁー ー

ー うん いいんじゃないかな ー

ー あれれ?フウリン
私の扱いがジンに似てるような
タガーにしたらどうだとかを言ってくれないのかな ー

ー ポコって ちょっと面倒くさい かまってちゃんかぁ
まぁ ジンの気持ちもわかるわ
あのね、マオマオもタマも決めかねて悩んでたから、ちょっと後押ししたのよ。
あなたにタガーは、合ってるわよ。ー

ー はーい わかりました。タガーで決めます ー

ー 残るはセーラね。何にしたい?ー

ー 私は、普通の剣がいいです。フウリンさんみたいな戦い方をしたいです。そして光の剣聖の名を継ぎたいと思います。ー

みんな、一瞬固まった。
この子、こんなにハッキリ物を言うキャラだっけ?


フウリンがフォローした。

ー 凄いわね。目標を持つのは大切なことよ。途中で投げ出さないためにも、セーラみたいにハッキリした目標を持って努力をみんなしましょう。ー



それから約3ヶ月がたった。

それぞれがある程度自分の武器を使いこなし、飛行も自在になった。

ー 今日は編隊飛行の仕上げをします。
5つの重なる輪を空に描くの
私が持ってる5色のスモークカラーボールこれを使います。

少しでも描く時の飛ぶスピードが違ったり円の大きさが違うと台無しになるから気をつけて。

尚これは、私からの飛行訓練卒業課題です。ー

ー 
一番機は私、二番機にセーラ、三番機マオマオ、四番機タマ、五番機はポコよ

全員テイクオフ

まずV字飛行
二番機四番機は私の左手三番機五番機は右手

きれいなV字を作るのよ。
三番機マオマオちょっと速いわ
四番機タマもうちょっと高度揃えて

散開するように180°宙返りしてまたV字に
戻ります。二番機四番機は45度
三番機五番機は0度
一番機は90度とします

3 2 1 GO!

それぞれが違う角度で離れてゆきながらも、同じペースで見えるように宙返りするのは、全員の息が合って初めてこなせる難易度の高さだ。

これを何度か繰り返してから、5色の輪に挑戦する。

この日は3回挑戦して、一度も成功しなかった。

それから三日後、ジンが面白い魔法を開発した。
「5色の輪はなかなか大変みたいだね。期待して見守ってるから。みんながんばって。
話は変わるけど、僕から発表が有ります。
新しい魔法を開発しました。そしてその魔法を『リンク』と名付けました。
どんな魔法かと言うと、僕は前からフウリンの持ってる無限箱と同じ様な物が出来ないかと考えていたんだ。
そしたら、何と!
ちょっと無限箱と機能は違うけど とても便利な魔法が完成しました。
今ここで、みんなに披露します。」


ジンが30センチ角位の結界を作り出すと、何とその中に別の空間が現れた。

ジンはその結界の中に手を入れてコップを取り出した。

「この結界はボクの部屋とリンクしてるんだ、フウリンの無限箱みたいに時間停止して鮮度や温度を保ったり、何があるかリストにしたりも出来ないけど、いつでも部屋の物を取り出したり、しまったり出来るんだ。
そして、生き物も可能なんだ
それで僕自身がそこに入れば僕は瞬時に自分の部屋に戻ることが出来るんだ」

「ヘェ~それは凄いわね。
で、それって、もしかして他の場所でも可能なの?」

「過去に行ったことのある場所でなおかつマークをしておけば可能かな。あと知り合いのいる場所にも行けるよ。」

「あなたがそのマークを着けたかどうかを他の人はわかるの?」

「わからないと思う」

「犯罪レベルの魔法ね」

「な 何で?」

「知り合いの女の部屋にいつでも忍び込める魔法よね。
忍び込まなくても覗き放題よね。」

「それは思いつかなかった。」

「駄目よ絶対に!私のパンツとか手を出さないでよ」

「はい 神に誓ってやりません」

「それで、その魔法は私たちも、使えそうなの?」

「うん たぶんすぐに使えるように出来ると思う。みんな結界をあれだけコントロールして飛んだりできるんだから」

「そしたら、みんなが卒業出来たら、記念の祝いに教えてくれる。私にもね。」

「もちろんそれで構わないよ」

それから一週間後、
五輪飛行が成功して、フウリン飛行教室は全員卒業となった。

「剣舞の卒業課題は、魔物狩りよ。
これまで攻撃魔法はダメとか、相手を、捕まえる結界や魔法は使わないように指定したけど、今回はオールフリーとします。唯一控えて欲しいのは、自然破壊となる大規模な爆発や火災や洪水です。
そうね。簡単すぎるだろうが、ひとり10匹とします。」

当然だが、半日程度で40匹の魔物が狩られた。


探知スキルに勝るタマがやはり一番早かった。
魔物の居場所を見つけるのが、一番上手いんだから、当然よね
だいたいの魔物が濡れてるから、水魔法と槍の複合で仕留めたのかな。

私は二番目に早かったが、「ルール上は問題無いが魔物の損傷が激しい。後に買取ってもらうのに、査定に影響する」そうだ。
剣舞の課題だったけど、これまで抑えていた結界が思う存分使えてスッキリした。
一応最後の一匹だけレイピア一突きで仕留めたから、これでいいだろう。

三番目はポコだ、殆どが背後からタガーの一突きで仕留められている。
ポコに狙われたヤツは、気づいた時には致命傷だっただろう。
やっぱ変身たりして相手にさとられずに近づけるポコならでわね。

一番最後は、セーラだった。
彼女は一匹倒す毎に祈りを捧げ成仏させていたそうだ。
その太刀筋は素晴らしく、胴を真っ二つとか、首をハネたりとかで、魔物は痛みすら感じることもなく倒されたんじゃないかなと思った
一匹だけ胴にこぶし大の穴が開いたのがあったが、パンチしたのかなぁ。

フウリンは、ひとりひとりを笑顔で迎えてくれた。


「みんなご苦労さま。
全員課題完了ね。

剣舞については、基礎が出来ただけだけど、それは日々の練習で各自で磨き上げてください。飛ぶ訓練で、パワーの制御も相手の魔力もわかるようになったはずよ

冒険者ギルドのランクで言うならSSSランクの実力よ。
どうかみんな この力を正しく使って欲しい。
強い力は、使い方一つで自分自身や周りの人を不幸にすることも有ります。
一つの国や一つの組織に縛られることなく、正確な情報の元に自分の行動に責任を持って下さい。

これで私から教えるのはオシマイよ。
ジンに教わった『リンク』でいつでもすぐ会えるからね」


そう言ってフウリンは去って行った。
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