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第一章
セーラ
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冒険者ギルドで、私たちは要人警護の依頼を受けることにした。
なんでもポッキー町の大店の奥方様が、トッポ町の実家で里帰り出産をするとかで、その道中の警護ということだ。
ジンは依頼人のロジャーという名前に聞き覚えがあったが、思い出せずにいた。
「はじめまして、依頼人のロジャーです
『シャル ウィ ファイト』のお噂はこの町にも届いてますよ。そんな方々に私どもの依頼をお受けいただき、ありがたく感謝します。
今日は、私どもの屋敷にお泊り下さい。食事もご用意いたします。
出発は、急で申しわけ有りませんが、出産予定日が近づいているので、明日でおねがいします。
私は仕事がありますので、夕食時にまたお会いしましょう。
ご用が有りましたら、このメイドのセーラにお申し付けください。では」
「なんか忙しい人だな。
自分の言いたいことだけ言って、行っちゃったよ」
「セーラです。よろしくおねがいします。皆さんのお名前をうかがってもよろしいですか?」
「僕はジン、獣人のおねえさんがポコ、子どもの獣人がタマ、もうひとりの子がマオマオだよ」
「ちょ ちょっと待って下さい」
セーラは右手首にメモ書きしている。
「申しわけございません。もう一度、いいですか?」
「ハハハ いいよ。」
ジンはもう一度私たちの紹介をして
「セーラさん、僕らにはそんなに気を使わなくていいよ。誰も貴族とかじゃないしね。
君は左利きなんだね」
「あっ えっ 何でそう思ったんですか?」
「だって、左手でペンを持ってたし…」
「私、元々は右利きです。今は左手しかないので」
セーラが右手の手袋をはずすと義手が現れた。
「あ! 申しわけない。余計なことを言いました」
「気になさらないで下さい。
私は、気にしてませんから。
では、皆さんのお部屋にご案内致します。
お疲れの所申しわけ有りませんが、客室が三階になっております。」
セーラの案内で三階の客室にくると、とても豪華なへやだった。広いリビング、ツインベッドルームが2つ、そのそれぞれの隣にはパウダールームにトイレ、奥には5~6人は一度に入れそうなバスルームがある。
マオマオは、嬉しくなってタマと一緒に早速ベッドにダイブして、ピョンピョン跳ねている。
「セーラさん 今夜一晩つき合ってもらえませんか?」
「はあぁぁぁ! お客様!メイドだからって、何でも好きにしていいってことはないですよ!」
「ジン!そうよ!ポコがいつでもオッケーって言ってるのに。会ったばかりのメイドさんが、いくら可愛いからって、ポコの前で酷いじゃない!」
うつむいてるセーラさんをかばうようにポコが後ろから抱いて、ジンをにらんでる。
「えっ? 何か勘違いしてない?僕はただ」
「ただ 何よ」
「その義手が動けるようにしてあげたいと思って……」
「へっ?そうなの?」
ポコは、拍子抜けした顔をしてる。
「そんなこと、出来るんですか?」セーラが見つめてきた。
「美しい」と思わず口に出しそうになる言葉をジンは飲み込んでから
「一晩でどこまで出来るかわからないけどね。軽い物をつかむ程度は動かせるようになるはずだよ」
「本当ですか?」
セーラの顔が一瞬明るく輝いたが、又暗くなった。
「でも、わたしは、このままでいいです。」
「どうして?やってもらえばいいじゃん」ポコがセーラの両肩をつかんでる
「わたしは、それに見合うものを、何もお返しできませんから」
「ふ~ん そうね。でもジンはみかえりとか求めない人よ。
わたしだってまだ な~~~んにも あげてないし
セーラさん
そこは別に気にしなくていいんじゃない やってもらいなよ
第一 ジンから言いだしたことでしょ」
「う~ん、ポコと違ってセーラさんにはプライドがあるんだよ。何か返さないと引け目を感じるから嫌なんだと思う。」
「ちょっと!ジン!今サラッと私のことディスったわね」
ポコがジンに詰め寄る。
「まぁそこはどうでもいいから。
それで、セーラさんにできることで、僕から欲しいものを言えば良いんだよね」
「ジン!からだが欲しいとかエッチはダメだからね。わたしが先だからね」
ポコがまた食いついてくる
「僕が欲しいのは、上手くいったら。セーラさんの笑顔を見せて欲しい」
「………」
スパーン
ジンの後頭部にポコの平手打ちが決まった
「なに カッコイイこと言ってセーラさん落としにかかってるるのよ。
天然スケコマシか!」
「あっ でも それじゃぁ
申しわけなくて」
「まあ、セーラさん大丈夫だから、とにかくジンに任せなさいよ。ね!それで決まりね!」
ポコの押しの強さで、セーラさんの義手をジンが改造することになった。
ジンはセーラさんの義手を預かって、手首・親指の付け根・人差し指の付け根の3箇所に人工関節をつけて、手の甲に小さな魔石を埋め込んだ。
「夕食の準備が出来ました。」
「あ、こっちもちょうど、出来たところだよ。よかったら、早速つけてみて。動かし方はあとでね。」
「3箇所、動くようになってて………バネがはいってるんですね、自然と元の形になるんですね。
嬉しいです。これだけでも、凄く使いやすいとおもいます。」
セーラさんは満面の笑みをジンに見せた。
「ジン! ジンってば!」
「何だよポコ」
「何よそのデレ~ってした顔は」
「セーラさんからお礼をもらった顔だよ」
「ふ~ん」
夕食会場に行くと既にロジャーさんと奥様のメアリーさんは席についていた。
「ジンさん マオさん タマラさん アイシャさん
改めて、今回の護衛の仕事をお受けいただき、ありがとうございます。
こちらが妻のメアリーです」
「メアリーです。よろしくおねがいします。」
「それと、セーラがこの度お世話になっているようで、ありがとうございます。」
「いや、いや。ご主人様からお礼など、もったいないです。」
「やはり、できた方ですな。
あなたのことは、フウリンからも聞いてましたが、私のことはご存知でしたか?」
「えっ フウリン?
あっ そうですか。
なるほど やっと繋がりました。
フウリンが両親を亡くしてから暮らしたのがこちらのお屋敷で、子供の頃チャンバラした相手があなた ロジャーさんですよね」
「ハハハ、そのとおりです。ジンさんは、フウリンさんを妹とは知らずにつき合ってたんですよね。」
「ええ まあ そんなことも………」
「ああ すみません。
あまり触れない方がよかったみたいですね。」
「ジン 妹とつき合ってたの!で、どこまでのつき合いだったの?」
ポコが話に割って入ってきた。
「終わったことだよ。もうどうでもいいだろ」
「ジンさん 申しわけ無い。
余計なことをくちばしりました」
「いいですよ。そういえば、このマオも妹です、それでタマラはマオと親友で、最後に僕らは、ポコって呼んでますがアイシャは、森で拾った子です」
「えっ 拾った?」
「そうです。空腹で倒れたところを助けたら、そのまま居付いたんです。」
「面白い縁ですね。」
「ジン その言い方はないでしょ………」
「お腹が減って死にそうだと言うので、助けたら、仲間にしてくれと言うので、仲間にしました
これでいいか?」
「うん それなら いいわ」
「に してもさ ポコ
お前だんだん俺に対する態度
でかくなってるよな」
「え~ そうかなぁ~
まぁ いいじゃないですか
それだけ親しくなったってことですよ」
「うふふ お二人は仲が良いんですね。
やり取り見てると
永年連れ添ってる夫婦みたいですね」
「メアリーさん やめて下さいよ」
「やだぁ~ メアリーさん。
そうですか
やっぱり、そう見えますぅ~」
「そう言えばロジャーさん
確か炎系の魔法をお使いになるってフウリンから聞きましたが」
「ほう、そんなこともフウリンが話してましたか」
「不躾なお願いですが、それを後でご披露いただけませんか?」
「えっ まぁ、いいですよ。
食事が終わったら、中庭でやりましようか」
「それでは、ロジャーさん
あなたの最大火力で、マオに向かって撃って下さい」
「えっ 今 なんと?」
「御心配なく マオはBランカーですが、防御力に関してはSSSランクの僕より上です。
経験のためにも是非おねがいします」
「そうは言われても、あんな子どもに向かって、やりにくいなぁ~」
「マオマオなら大丈夫だから、おじさんやって見せて」
「タマ!ロジャーさんって言わなきゃダメだよ!」
「ごめんなさい。ロジャーさん」
「タマさん いいよ おじさんで
それじゃぁ やってみるよ
行くよ マオさん」
「どうぞ~」
ロジャーはファイアーランスを3本出現させ、そしてその後にもう3本出現させ、一斉に撃ち出した
「あなた!止めて!」
マリアさんの悲鳴にもかかわらず、ファイアーランスはマオを襲った………かにみえた。
が、マオの前に現れた結界が全て受け止めた。
ファイアーランスが結界に当たる瞬間、マオの前の結界が輝き
その威力を全て吸収したようにみえた。
ファイアーランスは、飲み込まれるように、音もなく消えたのだ。
「さすが、ジンさんの仲間ですね。まるで刃が立たないとは、このことですね。
ハハハ 参りました。
わたしはもう魔力切れ寸前で、立ってるのが、やっとですよ。」
「マオマオ、ロジャーさんに、魔力分けてあげて」
「は~い 今の火くらいの量でいいの?」
「それよりちょびっと少なめにしてくれ」
マオがロジャーさんの手をとり魔力を送り込むと
ロジャーさんはみるみる顔色が良くなった。
「メアリー 見ただろ。
この方たちが君を守ってくれるんだ。
こんな安心なことはないよ。」
「そうね。明日からよろしくおねがいします。」
「かしこまりました。
私たちは、このまま少しここに残っていてもいいですか?
少し訓練したいので」
「どうぞ遠慮なく、大変ですね。それだけの強さで、まだ訓練とは。
私たち夫婦は、これで失礼します。」
「みんな聞いて!
あっセーラもね。
僕は火を作るのはできるけど、ロジャーさんみたいに火を撃ち出すことは出来ないんだ。
水も土も風もできるけど、飛ばせないんだ。
だから、みんなにロジャーさんの撃ち出す炎を見て貰いたかったんだよ」
「私たちも、あの火の矢を撃てるようになるの?」
「タマ、それはその人の資質、つまり生まれつきの才能が関係するから出来るかどうかは試してみないとわからない。
僕みたいに出来ないかも知れないよ
それじゃあ、みんな手のひらを上に、向けて、その上で火が燃えるイメージをして」
ジンは、炎を出して見せた。
「ポイントはしっかりとイメージすること
僕の魔力の流れを見て。
よくわからなかったら、僕に触れて感じて
セーラもだよ」
誰も火を出すことは出来なかった。
が、次に水で試してみると
「あっ わたし な 何これ!」
タマの手から水が湧き出した。
「タマ、凄い!」
「マオ、ありがとう。できたわ」
そして、ポコは手の上で小さな竜巻を
そしてなんとセーラが眩しい光を作った
「えっ わたし、どうなったの?」
「セーラさんは光属性か、僕の母さんと一緒だ」
「セーラさん凄いわ、『光の剣聖』と同じなんて」
「えーーーーー」
セーラさんは、そう言うと倒れそうになった。
ポコがすぐ抱き止めたので、大事はないが、魔力切れのようだ。
「ポコ、そのまま魔力分けてあげな」
セーラさんの顔に血色が戻った。
「私だけ 何も出来なかった」
残念そうにマオが呟いた。
「マオ
たぶん心配無いよ。
ちょっと試したい事があるんだ、やってみてくれる」
「どうするの?」
「まずこの中庭いっぱいに結界を張ってみて」
マオは言われたように結界を広げた
「よし、じゃあ、さっきロジャーさんがやったファイアーランス作ってみよう」
マオはファイアーランスをイメージした。
すると目の前にファイアーランスが現れた。しかも何本も
「マオ それ消すか、周りの結界に吸収させるか出来るかな」
マオが手を振ると、ファイアーランスは結界にぶつかり、先程同様音もなく消滅した
「すご~い マオ!やっぱりマオが一番凄い」
「タマ、そんなことないよ~
タマだって、水って凄いよ」
「マオマオ、たぶん君の結界は攻撃を受けると、それを覚えるんだと思う。
そして、結界の中でのみそれを再現出来るんだ。
僕が前にマオマオの結界の中で痛めつけられた事が有ったろ。
あれは、一角ウサギのチャージみたいだった。
確か、あの前に一角ウサギのチャージ攻撃をマオマオは受けたよね
今回、それを確かめる意味もあって、ロジャーさんの技を受けてもらったんだ」
「ちょっと待ってジン!」
「ん!? ポコ なにか?」
「それって、マオマオには誰も勝てないってこと?」
「う~ん、たぶん無敵だと思う。
マオマオの結界を破ることが出来る人又は武器がないとマオマオには勝てないね」
「それなら、恐いもの無しよね。」
「いいや、ポコ
今マオマオの力を利用したら………とか考えなかった」
「ちょっと考えた」
「マオマオが、悪い人に騙されたり、洗脳されたりしたら、どうなると思う」
「誰も勝てないから、悪い人の思い通りになる」
「そうだよね。だから、マオマオの力はなるべく人に知られない方がいいんだ。
ポコはいい人だけど、ポコが相手が悪い人だと知らずにしゃべっちゃうこともあるよね。
そういうことも含めて、とにかくここにいる人以外には、マオマオの能力は教えないこと。
もし知られたら、その相手はたとえいい人でも始末するんだ」
「始末って、殺すんですか。」
「それは自分で判断し実行しないと」
「な なんて恐ろしい人たちなの!
わたしは、なんの為にここにいるの!
秘密をわざわざ教えて、殺すため?」
「いや!殺すわけないよ!
こんなことに連れ込んでしまい申しわけない。
出会った時から、セーラさんには、仲間になってもらって、一緒にマオマオを守って欲しいと思ったんだ。
セーラさんには、何か特別な力がある気がしたんだ。
僕にも責任があるのは、承知してる。
どうしても嫌なら、無理にとは言わないよ、その代わり誰にも話さないって約束はしてくれ」
「そんな、わたしになんか無理よ、人を守るなんて」
「セーラさんは、『光の剣聖』になる人だよ」
「ジンさん いいい!
何を夢みたいなことを。
わたしは隻腕なのよ」
「セーラさん、強くなれば、腕の一本や二本 関係なくなるよ」
「そうなの? 本当に?」
「ああ 本当だよ
まずは、改造した義手の動かし方からだけどね。
先は長いよ」
「わかったわ。奇跡みたいなことばかりだけど、信じるわ。
明日旦那様に暇乞いをしてみる。
あとは、何すればいいの」
なんでもポッキー町の大店の奥方様が、トッポ町の実家で里帰り出産をするとかで、その道中の警護ということだ。
ジンは依頼人のロジャーという名前に聞き覚えがあったが、思い出せずにいた。
「はじめまして、依頼人のロジャーです
『シャル ウィ ファイト』のお噂はこの町にも届いてますよ。そんな方々に私どもの依頼をお受けいただき、ありがたく感謝します。
今日は、私どもの屋敷にお泊り下さい。食事もご用意いたします。
出発は、急で申しわけ有りませんが、出産予定日が近づいているので、明日でおねがいします。
私は仕事がありますので、夕食時にまたお会いしましょう。
ご用が有りましたら、このメイドのセーラにお申し付けください。では」
「なんか忙しい人だな。
自分の言いたいことだけ言って、行っちゃったよ」
「セーラです。よろしくおねがいします。皆さんのお名前をうかがってもよろしいですか?」
「僕はジン、獣人のおねえさんがポコ、子どもの獣人がタマ、もうひとりの子がマオマオだよ」
「ちょ ちょっと待って下さい」
セーラは右手首にメモ書きしている。
「申しわけございません。もう一度、いいですか?」
「ハハハ いいよ。」
ジンはもう一度私たちの紹介をして
「セーラさん、僕らにはそんなに気を使わなくていいよ。誰も貴族とかじゃないしね。
君は左利きなんだね」
「あっ えっ 何でそう思ったんですか?」
「だって、左手でペンを持ってたし…」
「私、元々は右利きです。今は左手しかないので」
セーラが右手の手袋をはずすと義手が現れた。
「あ! 申しわけない。余計なことを言いました」
「気になさらないで下さい。
私は、気にしてませんから。
では、皆さんのお部屋にご案内致します。
お疲れの所申しわけ有りませんが、客室が三階になっております。」
セーラの案内で三階の客室にくると、とても豪華なへやだった。広いリビング、ツインベッドルームが2つ、そのそれぞれの隣にはパウダールームにトイレ、奥には5~6人は一度に入れそうなバスルームがある。
マオマオは、嬉しくなってタマと一緒に早速ベッドにダイブして、ピョンピョン跳ねている。
「セーラさん 今夜一晩つき合ってもらえませんか?」
「はあぁぁぁ! お客様!メイドだからって、何でも好きにしていいってことはないですよ!」
「ジン!そうよ!ポコがいつでもオッケーって言ってるのに。会ったばかりのメイドさんが、いくら可愛いからって、ポコの前で酷いじゃない!」
うつむいてるセーラさんをかばうようにポコが後ろから抱いて、ジンをにらんでる。
「えっ? 何か勘違いしてない?僕はただ」
「ただ 何よ」
「その義手が動けるようにしてあげたいと思って……」
「へっ?そうなの?」
ポコは、拍子抜けした顔をしてる。
「そんなこと、出来るんですか?」セーラが見つめてきた。
「美しい」と思わず口に出しそうになる言葉をジンは飲み込んでから
「一晩でどこまで出来るかわからないけどね。軽い物をつかむ程度は動かせるようになるはずだよ」
「本当ですか?」
セーラの顔が一瞬明るく輝いたが、又暗くなった。
「でも、わたしは、このままでいいです。」
「どうして?やってもらえばいいじゃん」ポコがセーラの両肩をつかんでる
「わたしは、それに見合うものを、何もお返しできませんから」
「ふ~ん そうね。でもジンはみかえりとか求めない人よ。
わたしだってまだ な~~~んにも あげてないし
セーラさん
そこは別に気にしなくていいんじゃない やってもらいなよ
第一 ジンから言いだしたことでしょ」
「う~ん、ポコと違ってセーラさんにはプライドがあるんだよ。何か返さないと引け目を感じるから嫌なんだと思う。」
「ちょっと!ジン!今サラッと私のことディスったわね」
ポコがジンに詰め寄る。
「まぁそこはどうでもいいから。
それで、セーラさんにできることで、僕から欲しいものを言えば良いんだよね」
「ジン!からだが欲しいとかエッチはダメだからね。わたしが先だからね」
ポコがまた食いついてくる
「僕が欲しいのは、上手くいったら。セーラさんの笑顔を見せて欲しい」
「………」
スパーン
ジンの後頭部にポコの平手打ちが決まった
「なに カッコイイこと言ってセーラさん落としにかかってるるのよ。
天然スケコマシか!」
「あっ でも それじゃぁ
申しわけなくて」
「まあ、セーラさん大丈夫だから、とにかくジンに任せなさいよ。ね!それで決まりね!」
ポコの押しの強さで、セーラさんの義手をジンが改造することになった。
ジンはセーラさんの義手を預かって、手首・親指の付け根・人差し指の付け根の3箇所に人工関節をつけて、手の甲に小さな魔石を埋め込んだ。
「夕食の準備が出来ました。」
「あ、こっちもちょうど、出来たところだよ。よかったら、早速つけてみて。動かし方はあとでね。」
「3箇所、動くようになってて………バネがはいってるんですね、自然と元の形になるんですね。
嬉しいです。これだけでも、凄く使いやすいとおもいます。」
セーラさんは満面の笑みをジンに見せた。
「ジン! ジンってば!」
「何だよポコ」
「何よそのデレ~ってした顔は」
「セーラさんからお礼をもらった顔だよ」
「ふ~ん」
夕食会場に行くと既にロジャーさんと奥様のメアリーさんは席についていた。
「ジンさん マオさん タマラさん アイシャさん
改めて、今回の護衛の仕事をお受けいただき、ありがとうございます。
こちらが妻のメアリーです」
「メアリーです。よろしくおねがいします。」
「それと、セーラがこの度お世話になっているようで、ありがとうございます。」
「いや、いや。ご主人様からお礼など、もったいないです。」
「やはり、できた方ですな。
あなたのことは、フウリンからも聞いてましたが、私のことはご存知でしたか?」
「えっ フウリン?
あっ そうですか。
なるほど やっと繋がりました。
フウリンが両親を亡くしてから暮らしたのがこちらのお屋敷で、子供の頃チャンバラした相手があなた ロジャーさんですよね」
「ハハハ、そのとおりです。ジンさんは、フウリンさんを妹とは知らずにつき合ってたんですよね。」
「ええ まあ そんなことも………」
「ああ すみません。
あまり触れない方がよかったみたいですね。」
「ジン 妹とつき合ってたの!で、どこまでのつき合いだったの?」
ポコが話に割って入ってきた。
「終わったことだよ。もうどうでもいいだろ」
「ジンさん 申しわけ無い。
余計なことをくちばしりました」
「いいですよ。そういえば、このマオも妹です、それでタマラはマオと親友で、最後に僕らは、ポコって呼んでますがアイシャは、森で拾った子です」
「えっ 拾った?」
「そうです。空腹で倒れたところを助けたら、そのまま居付いたんです。」
「面白い縁ですね。」
「ジン その言い方はないでしょ………」
「お腹が減って死にそうだと言うので、助けたら、仲間にしてくれと言うので、仲間にしました
これでいいか?」
「うん それなら いいわ」
「に してもさ ポコ
お前だんだん俺に対する態度
でかくなってるよな」
「え~ そうかなぁ~
まぁ いいじゃないですか
それだけ親しくなったってことですよ」
「うふふ お二人は仲が良いんですね。
やり取り見てると
永年連れ添ってる夫婦みたいですね」
「メアリーさん やめて下さいよ」
「やだぁ~ メアリーさん。
そうですか
やっぱり、そう見えますぅ~」
「そう言えばロジャーさん
確か炎系の魔法をお使いになるってフウリンから聞きましたが」
「ほう、そんなこともフウリンが話してましたか」
「不躾なお願いですが、それを後でご披露いただけませんか?」
「えっ まぁ、いいですよ。
食事が終わったら、中庭でやりましようか」
「それでは、ロジャーさん
あなたの最大火力で、マオに向かって撃って下さい」
「えっ 今 なんと?」
「御心配なく マオはBランカーですが、防御力に関してはSSSランクの僕より上です。
経験のためにも是非おねがいします」
「そうは言われても、あんな子どもに向かって、やりにくいなぁ~」
「マオマオなら大丈夫だから、おじさんやって見せて」
「タマ!ロジャーさんって言わなきゃダメだよ!」
「ごめんなさい。ロジャーさん」
「タマさん いいよ おじさんで
それじゃぁ やってみるよ
行くよ マオさん」
「どうぞ~」
ロジャーはファイアーランスを3本出現させ、そしてその後にもう3本出現させ、一斉に撃ち出した
「あなた!止めて!」
マリアさんの悲鳴にもかかわらず、ファイアーランスはマオを襲った………かにみえた。
が、マオの前に現れた結界が全て受け止めた。
ファイアーランスが結界に当たる瞬間、マオの前の結界が輝き
その威力を全て吸収したようにみえた。
ファイアーランスは、飲み込まれるように、音もなく消えたのだ。
「さすが、ジンさんの仲間ですね。まるで刃が立たないとは、このことですね。
ハハハ 参りました。
わたしはもう魔力切れ寸前で、立ってるのが、やっとですよ。」
「マオマオ、ロジャーさんに、魔力分けてあげて」
「は~い 今の火くらいの量でいいの?」
「それよりちょびっと少なめにしてくれ」
マオがロジャーさんの手をとり魔力を送り込むと
ロジャーさんはみるみる顔色が良くなった。
「メアリー 見ただろ。
この方たちが君を守ってくれるんだ。
こんな安心なことはないよ。」
「そうね。明日からよろしくおねがいします。」
「かしこまりました。
私たちは、このまま少しここに残っていてもいいですか?
少し訓練したいので」
「どうぞ遠慮なく、大変ですね。それだけの強さで、まだ訓練とは。
私たち夫婦は、これで失礼します。」
「みんな聞いて!
あっセーラもね。
僕は火を作るのはできるけど、ロジャーさんみたいに火を撃ち出すことは出来ないんだ。
水も土も風もできるけど、飛ばせないんだ。
だから、みんなにロジャーさんの撃ち出す炎を見て貰いたかったんだよ」
「私たちも、あの火の矢を撃てるようになるの?」
「タマ、それはその人の資質、つまり生まれつきの才能が関係するから出来るかどうかは試してみないとわからない。
僕みたいに出来ないかも知れないよ
それじゃあ、みんな手のひらを上に、向けて、その上で火が燃えるイメージをして」
ジンは、炎を出して見せた。
「ポイントはしっかりとイメージすること
僕の魔力の流れを見て。
よくわからなかったら、僕に触れて感じて
セーラもだよ」
誰も火を出すことは出来なかった。
が、次に水で試してみると
「あっ わたし な 何これ!」
タマの手から水が湧き出した。
「タマ、凄い!」
「マオ、ありがとう。できたわ」
そして、ポコは手の上で小さな竜巻を
そしてなんとセーラが眩しい光を作った
「えっ わたし、どうなったの?」
「セーラさんは光属性か、僕の母さんと一緒だ」
「セーラさん凄いわ、『光の剣聖』と同じなんて」
「えーーーーー」
セーラさんは、そう言うと倒れそうになった。
ポコがすぐ抱き止めたので、大事はないが、魔力切れのようだ。
「ポコ、そのまま魔力分けてあげな」
セーラさんの顔に血色が戻った。
「私だけ 何も出来なかった」
残念そうにマオが呟いた。
「マオ
たぶん心配無いよ。
ちょっと試したい事があるんだ、やってみてくれる」
「どうするの?」
「まずこの中庭いっぱいに結界を張ってみて」
マオは言われたように結界を広げた
「よし、じゃあ、さっきロジャーさんがやったファイアーランス作ってみよう」
マオはファイアーランスをイメージした。
すると目の前にファイアーランスが現れた。しかも何本も
「マオ それ消すか、周りの結界に吸収させるか出来るかな」
マオが手を振ると、ファイアーランスは結界にぶつかり、先程同様音もなく消滅した
「すご~い マオ!やっぱりマオが一番凄い」
「タマ、そんなことないよ~
タマだって、水って凄いよ」
「マオマオ、たぶん君の結界は攻撃を受けると、それを覚えるんだと思う。
そして、結界の中でのみそれを再現出来るんだ。
僕が前にマオマオの結界の中で痛めつけられた事が有ったろ。
あれは、一角ウサギのチャージみたいだった。
確か、あの前に一角ウサギのチャージ攻撃をマオマオは受けたよね
今回、それを確かめる意味もあって、ロジャーさんの技を受けてもらったんだ」
「ちょっと待ってジン!」
「ん!? ポコ なにか?」
「それって、マオマオには誰も勝てないってこと?」
「う~ん、たぶん無敵だと思う。
マオマオの結界を破ることが出来る人又は武器がないとマオマオには勝てないね」
「それなら、恐いもの無しよね。」
「いいや、ポコ
今マオマオの力を利用したら………とか考えなかった」
「ちょっと考えた」
「マオマオが、悪い人に騙されたり、洗脳されたりしたら、どうなると思う」
「誰も勝てないから、悪い人の思い通りになる」
「そうだよね。だから、マオマオの力はなるべく人に知られない方がいいんだ。
ポコはいい人だけど、ポコが相手が悪い人だと知らずにしゃべっちゃうこともあるよね。
そういうことも含めて、とにかくここにいる人以外には、マオマオの能力は教えないこと。
もし知られたら、その相手はたとえいい人でも始末するんだ」
「始末って、殺すんですか。」
「それは自分で判断し実行しないと」
「な なんて恐ろしい人たちなの!
わたしは、なんの為にここにいるの!
秘密をわざわざ教えて、殺すため?」
「いや!殺すわけないよ!
こんなことに連れ込んでしまい申しわけない。
出会った時から、セーラさんには、仲間になってもらって、一緒にマオマオを守って欲しいと思ったんだ。
セーラさんには、何か特別な力がある気がしたんだ。
僕にも責任があるのは、承知してる。
どうしても嫌なら、無理にとは言わないよ、その代わり誰にも話さないって約束はしてくれ」
「そんな、わたしになんか無理よ、人を守るなんて」
「セーラさんは、『光の剣聖』になる人だよ」
「ジンさん いいい!
何を夢みたいなことを。
わたしは隻腕なのよ」
「セーラさん、強くなれば、腕の一本や二本 関係なくなるよ」
「そうなの? 本当に?」
「ああ 本当だよ
まずは、改造した義手の動かし方からだけどね。
先は長いよ」
「わかったわ。奇跡みたいなことばかりだけど、信じるわ。
明日旦那様に暇乞いをしてみる。
あとは、何すればいいの」
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上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
凡人がおまけ召喚されてしまった件
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第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
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