魔王の子

烏帽子 博

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第一章

冒険者ギルド

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アイシャは、移動中ジンのポケットの中で、ジンたちとの出会ってからの二日間のことを思い返していた。

たった二日でこんなにも自分や自分の環境に変化が起きるとは夢にも思わなかった。

ジンたちと出会う前は、ちょっと変身が得意なタヌキ。しかもタヌキで十五歳は既にオバサンの歳だ。

それが、マオの魔力で獣人となった。獣人で十五歳は娘盛りだ。
力が溢れ、そして雷に撃たれたようにジンに恋した。

ジンは、わたしを眷属にしてくれた。
そして、マオとタマラは友だちだと言ってわたしを受入れてくれた。

ジンは、今度は眷属から解放して、仲間にするって言ってくれた。

この先もジンは、わたしを恋人にしてはくれないかも
でも、わたしは、この三人の、仲間になれて幸せだと思う。
これからは、ずっとこの仲間と共に生きようと決心した。


新たな村に着くと、真っ先に宿屋に行き、ジンは四人部屋を予約した。

「マオマオの結界のことなんだけと、これをマオマオが自分でコントロールするにはどうしたらいいか、僕も色々と考えてるんだ。
それで先ずは、僕も体験したいと思って、今日は皆、一つの部屋で寝ることにした。」

「タマはマオマオと一緒に何度か寝たことが有るんだろ。
その時の事を話してくれる」


「マオマオと一緒に寝るときは、だいたいお喋りしてて、知らないうちに寝ちゃうかなぁ

それで、トイレに行きたくなって部屋から出ようとしたら、出られないの

その時何が起きたのか分からなくて、マオマオを必死になっておこしたの。

それで、マオマオと二人でドアの所に行ったら、普通にドアが開いたの

マオマオが『タマ夢みたんじゃないの? わたし寝るね』って言ってベッドに入って、わたしは、トイレに行って戻ってきたの。

そしたら、今度は部屋に入れないの。ドアは開くけど、何かに跳ね返されてるみたいだったわ。

マオマオをそこで何度も呼んだんだけど、起きてくれなくて、そしたらマリアさんが、来てくれて、マリアさんたちの部屋で朝まで寝かせてもらった事があったわ」


「マリアさんから聞いたとおりだな。

皆 トイレはちゃんと済ませてから寝ようね。

マオマオ、悪いけど今夜は寝てるところ起こすこともあると思うけど、我慢してね」

部屋にはダブルベッドが2つ有って、マオとタマラを先に寝かしつけることにした。

アイシャは品を作って、クネクネしてる。

ー ポコ 君は魔力のコントロールを練習な。
手足に集めたり、身体強化を中心にね。
誰かのポケットから卒業をめざしてね ー

マオが寝入ると、やはり強い魔力が漏れ出た。
しかし、直ぐほぼ同時に部屋には結界が張られた。

タマラは、慣れてるのか平気でマオの隣で寝ている。

アイシャはベッドから飛び退いて、部屋の隅で縮こまり
「な 何ですか!この魔力は」

ー ポコ、安心しろ!これはマオマオの魔力だから ー

ー ※※※※※※ ー

「ポコ、念話聞こえないか?」

「念話ですか、全く聞こえません。使えなくなったみたいです」

「このマオマオの結界の中では、魔力が皆使えないようだな」



「この魔力、ポコがマオマオから分けてもらったのと、量は多いけど同じ波長だって分かるかな」

「わかります。
でも、それにしてもこんなに多いって、驚いたわ」

「落ちついた所で、ポコに課題。
マオマオのこの魔力を浴びるだけじゃなくて、自分の中に取り込むようにすること。
タマは、マオマオと知り合った頃から遊びながら自然とそれが身についたみたいだ。
それがポコにも出来るようになれば、マオマオと一緒に居るだけで、どんどんパワーアップだよ。
凄いだろう」

「ジンは、そうしないの?」

「僕は、魔力量は今のままでもう十分だと思ってるから

じゃ そうゆうことで、ポコはがんばって

僕はこれから実験を始めるからね」

ジンはポコにそう言うと結界を調べ始めた。

結界を破ろうと試みたが、破ることは出来なかった

結界の中に居る人同士は念話はダメでも、会話は可能だ。


あとはマオマオを傷つけようとしたらどうなるか?

「な なにをするんですか?」ポコが啞然とするが構わない。

ジンはベッドサイドにあったイスをマオマオに投げつけた。

イスがマオマオに当たるかと思った瞬間にマオマオとタマを包むように結界が現れ、イスは脚が折れて、弾き返された。

結界が二重に自動的に造られたのだ。

次の瞬間、イスがジンに向かって攻撃を始めた。
そのスピードは、驚く程で、ジンは、弾き飛ばされた。
多分肋骨の2~3本いっただろう。
イスの攻撃は、それだけでは止まない。

「ポコ! マオマオを起こせ! 今すぐに!」

ポコは、目の前の惨劇に茫然としていたが、慌ててマオマオを起こした。

マオマオが目覚めると、イスの攻撃はやみ、結界も消えた。

マオマオは、目をこすりながら

ー ジンどうしたの?
凄い怪我してる
大丈夫?ー

ー 自業自得の怪我なんだ。
マオマオ、少し魔力を分けてくれる?ー

ー いいわよ ー

ジンは、全身打撲で内蔵迄損傷していて、危機的状況になっていた。
マオマオの魔力を使い、ジンは回復魔法で自らの治癒を始めた。

皆心配して、ジンの様子を見ていたが、一時間位すると、血の気がなかった顔色に赤みがさしてきた。

「ヤバかった。みんな心配かけてゴメンね。
僕も、ベッドで休むよ」

朝、ジンが目を覚ますと、ベッドサイドで、イスに座って寝ているポコがいた。

マオマオとタマも起きていて、ジェスチャーで、ポコをそのまま寝かせて置くようにしましょう的なしぐさをしてる

ー 念話があるだろう。マオマオ タマ
わざわざそんなことしなくても ー

ー 寝起きでジンも念話は辛いかなぁと気づかったのよ。ー

ー ポコは、私たちが起きたときは、まだ寝てなかったわ、ずっとジンのこと心配して、そばに居たみたいよ ー

ポコの寝顔には、泣いた跡がある。
が、ヨダレをたらしながら、ムニャムニャ寝言を言ってて
ちょっと 可愛さより、残念な方が勝ちだ。

「ポコ 起きろ!朝飯食べに行くぞ!」



「えっ ふぇ~ あっ ジン!
も もう大丈夫なの?」

「ああ、もう心配ない。元気になったよ」

朝食 といっても時間的には昼食だが をとりながら、ジンが念話で話しだした。

ー 今日は、こんな時間だし、訓練をしてここでもう一泊。
明日からは、午前中は移動、午後は訓練にする ー

ー 訓練内容は、ポコは身体強化の自習。
走るスピードアップはもちろん、ジャンプの高さは30メートル以上。パンチで大岩の粉砕な。後は夜マオマオから魔力の取込。

タマは、探知の強化と投てきの訓練と、戦闘力のアップね。
探知は広ければ広い程有利になるし、相手が何でどの位の強さかを遭遇する前に分かれば、戦うか、逃げるか、戦わずやり過ごすかを決めるのが楽になる。

そして、マオマオは、結界を意識的に使うための訓練を僕と する。 ー

ー ジン わたし又ジンを傷つけちゃわない?ー

ー 多分大丈夫だと思う ー

ー 多分じゃ、恐いわ。
ジンのこと、あのときみたいにボロボロにしちゃつたら ー

ー 大丈夫だと思う理由は、マオマオが起きてる状態でやるからだよ。それとマオマオの結界の中には僕は入らないから ー

村から少し離れた場所に移動して各自の訓練が始まった。

ー マオマオ、君に石を投げつけるから、避けないでね ー

予想通り、結界が自動的に発動した。

ー 結界が出来るときの感覚って分かるかな?これを意識的に作り出したい ー

ー う~ん よくわからない ー

ー それじゃ 何回か続けて石を投げるよ ー

ジンは、結界が消えると投げるを何度か繰り返す。
その度にマオマオの結界が発動して石は力無く足下に落ちる。

20回以上投げたあと、ジンは投げるのをわざと失敗した。
マオマオをかすめもせずに脇を石は通り過ぎた。

しかし、このときも、結界は発動していた。

ー マオマオ! それだよ!
たぶん君の自動危険探知では、危険はないとなってたはず。
それなのに結界が発動したのは、マオマオが意識的に結界を造り出したからだよ。
そこの違いがわかれば、目標達成だよ ー

それからも失敗成功を繰り返し、この日の訓練は終わった。


それから1ヶ月位かけて、一行はトッポの町に着いた。

その頃には、マオマオは結界を意識的に作れるようになっていた。

タマは20メートル先のハエを撃ち落とすのも難なくこなし、探知は数キロ迄広げられる。

ポコは大岩粉砕なども出来るようになり。タマとニャーゴ(組手)で遊べるようになった。

トッポのギルドに入ると、受付の女性と目があった。
受付の女性は、対応中の冒険者に断りを入れて、走ってきた。

「ジンさん。お久しぶりです。どうぞ、奥へ」

ギルドマスター室に通されると、ギルドマスターのハマーが待っていた。

「いやぁ 久しぶりですなジンさん。フウリンさんとは、その後いかがですか?」

「彼女とは、別々に行動してますが、たまに連絡は取り合ってますよ。
今日はこの子たちの冒険者登録に来ました。
できればレベルチェックは無しで、登録したいんですが。
実力は僕が保証しますし。この四人でパーティで活動します。」

「ジンさんの保証付とは、また相当な娘さんたちなんですな。いいですよ、レベル判定無しで。
パーティ名はどうします?」

「シャル ウィ ファイト でおねがいします」

「好戦的な名前ですね。まぁ本当に強いでしょうから、ザコ避けにも良さそうですね。」

登録を済ませて、依頼の掲示版を4人で見に行った。

女子3人が、Bランクの依頼を見てると

「お嬢さんたち、君たちはあっちだよ、ここはBランク以上じゃないと受けられないんだ。
まぁ僕とパーティ組めば、受けられるけどね。」

「お兄さん、折角のお誘いだけど、私たちは既に4人パーティなの、ほら あそこにいるSSSランクの人よ。
パーティ『シャル ウィ ファイト』宜しくね」

「SSSだって!そんな奴この町に居るはずが………」

騒ぎを聞きつけて、ギルドの受付の女性が、割って入ってきた。

「あなた知らないの?『ジンとフウリン』のジンさんよ。SSSランクのジンさん。」

「マジかよ。しかしずるいよなぁ~かわい子ちゃん3人連れて冒険者か。
羨ましいぜ」

受付の女性のおかげで、トラブルは避けられたようだ。

「ありがとう、君のおかげで面倒なことにならなくて済んだよ。」

「ジンさん、彼女たちもそれなりに強いんでしょ。
だったら、ランク上げには依頼をちまちまこなすよりも、闘技場をおすすめするわ。
闘技場で名を上げて、ランクを上げれば、あのての人は寄ってこないはずよ」

「闘技場なんてシステム、いつ出来たんだ?」

「最近です。冒険者同士でもしょっちゅうトラブルがありますし、ランクの割に戦闘力が低いとかのチェックができますから。
あっちの掲示版に闘技場の対戦相手募集がでてるわよ」

闘技場では、自分と同ランクの相手の場合、お互いの同意が必要で、募集を出した人より下のランクの挑戦者の応募は断れない。
挑戦者は自分より2ランク上の募集迄応募出来る。
試合は、どちらかの戦闘不能、又はどちらかの降参によって決まる。
相手を死亡させてはいけない。死亡させた場合は、当事者はFランクに降格の上、その後の闘技場参加資格を失う。
選手のランクアップ条件は、
1、ワンランク上の選手一人に勝利しかつ同ランクの選手3人に連勝
2、ワンランク上の二人に連勝3、2ランク上の選手一人に勝利
この3つの条件のどれかを満たせばいい。

マオマオもタマもポコも迷わず2ランク上の選手との対戦を選んだ。

それには、先ほど3人に絡んできたBランクの男の強さを、タマが探知で、ポコより弱いと判断したからだ。

当然の結果だろうが、三人は次々と対戦相手を撃破して、10日程でBランクにまでなった。

2ランク上狙いであっというまにBランクにまで三人はなったが、そこで問題が発生した。

先日迄出てたAランクの対戦相手募集が、全てなくなったのだ。

それと言うのも、2ランク下の相手に負けたら降格となるため、当ギルドに三人いたAランカーがみな『シャル ウィ ファイト』のCランクの女の子に負けてBランクになってしまったからだ。

闘技場では、しばらくランクアップはできそうに無いので、私たちは、冒険者ギルドにきている依頼をこなすことにした。


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