魔王の子

烏帽子 博

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第一章

マオマオとタマ

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「マオ 余り遠くに行っちゃだめよ」

「はーい ママ」

私のパパとママは本当の両親じゃあない。
私は魔人だったんだけど、ママが聖女の力で人間にしてくれたそうだけど、よく覚えてない。
魔人の時は背中に黒い羽が生えてて、何でも壊しゃうような凄い魔法が使えたらしい。
今でもとんでもない魔力が私の中には有るらしいけど、よくわかんない。
どうやったら魔力使えるか、わかんないんだー。

「小石よ動けー」
「風よ吹けー」
「水よ出ろ」
「灯りを灯せ」
「われの声に応え顕現せよ」
「テイム」

どれも駄目。

魔力が沢山あったって何にもならない。

つまんないなぁ~

私が使える唯一の魔法はこれ!
木に登って、頭から墜ちると地面にぶつかる少し手前で、ふわっと私を受け止める。
駆け出して転んだ時も、ふわっとなってどこも怪我しない。

そんなのちっともかっこよく無いし、つまらない。

うちの近くに丘があって、その頂上に、大きな木が一本立っている。
いつもそこに来て昼寝したり、雲を見たりするのが好きなんだ。

その日もいつものように丘の上にマオは来ていた。
すると子どもの声が聞こえてきた。

「コイツ気持ち悪いな、やっちゃえ」

「痛いよ。やめてよ」

「お前らコイツを押さえてろ」

「いやー。やめてー」

三人の男の子が、一人の子を虐めてる。

私は丘を駆け下りて行った。途中すっ転び、ゴロゴロ転がったけど、何時ものとおりどこも痛くない。
立ち上がってもう一度走って行った。

「やめなよ。三人で一人の子を、虐めるのは」

「何だと!お前もこうしてやる!」

1番大きい子が、殴りつけてきた。
「いてててて!手が!手が!」
その子は泣きながら走って行った。
他の二人も逃げた子の後を追った。

虐められてた子だけが、残された。
「あ ありがとう。助けてくれて」

「大丈夫?痛くない?」

「うん、ちょっとまだ痛いけど、大丈夫」

「あっ」

その子の頭には、猫みたいな耳がついていた。

「君も気持ち悪い?わたしのこと」

「ううん、気持ち悪くないよ。初めて見たから驚いただけ」

「みんなは、気持ち悪いって言うんだ。」

「ふ~ん ねぇその耳 触ってもいい?」

「えっ う うん いいけど
ちょっとだけだよ」

私は、その子の耳に触れてみた

「も もう やめて くすぐったいから」

「あ ゴメンね。くすぐったいんだ。」

「うん」

「ねぇ 君 名前は?私はマオ この丘の向こうに住んでるんだ」

「タマラよ だけど、パパもママもタマって呼ぶのよ。」

「私はどっちで呼べはいい」

「う~ん やっぱりタマでいいかな」

「うちのパパは、たまにだけど私のことマオマオって呼ぶのよ」

「へー それじゃあ マオマオって呼ぶね!」

「ねぇ 友だちになりましょ」

「友だちってどうしたらなれるの?」

「私が友だちなりましょって言ったら、タマがいいよって言えばなれるのよ」

「ヘェ~ それじゃあマオマオ いいよ 友だちになろう」

「タマ 丘の上まで競走よ」

「マオマオ ずるい、言い出して先に走って」


「ハァハァ タマ足速いんだね、すぐに抜かれちゃったなぁ」

「ハハハ 獣人ナメんなよ!」

「四本脚で走れるんだね すごーい」

「マオマオ なんか目がこわいけど………
キャー やめてよ」

「しっぽ しっぽ~」

「にぎらないで~」

「いいなぁーー しっぽ
わたしも欲しいなぁ~」

「わたしは欲しくなかった」

「えー どうしてー 可愛いのに」

「マオマオだけよ、可愛いって言うの、みんな気持ち悪いって」

「ふ~ん、タマのしっぽって面白いのに。
楽しいとか嬉しいとかだと動くよね。嫌なことだとしっぽもダラ~んってなるし。
絶対面白いよ」

「そんなこと言っても、ちっとも嬉しくないもん!」

「アハハハ しっぽはブンブン嬉しそうに動いてるわ。」

「アハハハハ バレた~」

「ねぇ、タマ 明日も一緒に遊ぼうよ。朝ごはん食べたらここに来て」

「マオマオ ゴメンね朝は家の手伝いが有るから、お昼からならいいよ」

「タマ偉いなぁ、お家の手伝いしてるんだね。
どんなことしてるの?」

「水汲みして、家畜の面倒見て、お昼ごはんづくりかな」

「えー すごーい ごはん作れるの?」

「お母さんの手伝いよ、野菜切ったりとかだから簡単よ。」

「えー そうなんだ。わたしもママに言ってやらせてもらおう」

「もう、帰らなくちゃ」

「わたしも タマまた明日ね」

「マオマオ またね~」

マオは、家に帰るとニコニコしていた。

「マオ どうしたの?なんか楽しそうね」

「パパとママとマオの三人一緒の時に話すの。
今話たらパパ可哀想でしょ」

「あら、マオはパパ大好きなのね~ママ妬けちゃうわ~」

うちの夕食時間は、家族のお喋りで何時も賑やかだ。ママのご飯を美味しい美味しいっていいながら、パパはお酒呑んで、わたしは、遊んだときの事を話している

今日は、タマと会ったことが嬉しくて、全部話したかった。
でもお腹がいっぱいになったら眠くなって、ちょっとしか話せなかった。

「マオ もう目が寝てるわよ、歯をみがいて寝なさい」

「ふぁ~い」
明日タマと遊ぶの楽しみだなぁ~
そう思いながらマオは眠りについた。
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