魔法使いフウリン

烏帽子 博

文字の大きさ
上 下
10 / 69
第一章

ワインと毒

しおりを挟む
男たちの話だと、私をさらいに来るのは今夜だ。
多分薬で寝かせてとかだろう。

「旦那様やロジャーさんと一緒に食事!
そんな恐れ多いです。
あの時にメイドとして拾っていただいただけでも、感謝しております。
そんな者が、一緒に食事だなんて」

「フウリン 今日お前は我が家の客だ。
ワシがそう決めた。
それだけじゃ。早く座りなさい。この食事時位しかゆっくり話ができないからな」

私は仕方なく席に着いた。
毎日こんな食事をしたら、旦那さんのような体になる訳だ。
豪勢な料理が次々と出てきた。

「それで、結婚する人とは、どう知り合ったんだい」

私は盗賊に幌馬車が襲われた時の話をちょっと脚色して話した。
その時活躍したのは、彼ではなく、冒険者の護衛にした。
これまで薬草採取や街の清掃とかの依頼をこなして、ぎりぎり二人で暮らしてたことにした。

「どのくらい強くなったのかな、明日手合わせしてよ」

「ロジャーさん、まだチャンバラごっこ好きなんですね。
おかげで、私今日まで生き延びられたんですけどね。
私でよければ、お相手させていただきますよ。」

「おいロジャー いくらフウリンだとはいえ、今はプロの冒険者だぞ。お前がかなうはずないだろ」

「ぼくもそう思いますよ。だからこそ、どんだけ強くなったか、知りたいじゃないですか。ワクワクしますよ」

「商売の方もそれくらい興味を持ってくれたらいいんじゃがな」

「偉大過ぎる親には、僕みたいな方が、良いんですよ。
真面目にやればやるほど比べられるのは、かんべんして欲しいですよ」

「これまでで、一番大変なクエストは、どんなのがあったんだい」
旦那さんが、明らかに私の力量を測る質問を投げてきた。

私は適当な作り話をした
「お婆さんが飼ってた猫が逃げたんで、それを見つけるクエストです」

「猫かぁ それで見つけたのかい」

「ええ でもその猫が、ワイルドパンサーだったんです」

「ヘェ~ ワイルドパンサーか、猫科でも大違いだよなぁ
それで無事捕まえたのかい」

「いいえ 見つけるクエストですから、捕まえてません。危ないですしね」

「それでどうやって見つけたのの」

「そのワイルドパンサーがまだ小さい頃に寝かされてた籠とお婆さんの古着をそこに入れて森に置いたんです」

「それで」

「ワイルドパンサーは、籠とかお婆さんの匂いを覚えていたんですよ」

「なんでそうと分かるの」

「お婆さんの古着に頬ずりしたり、小さくて入れない籠に入ろうとしたんです」

「ヘェ~ それで」

「それで、そのワイルドパンサーが出没する場所にお婆さんを連れて行って、感動の再会して終わりです」

「お婆さんが食われて終わりってことじゃ無いよね」

「もちろん、ちゃんとなついてましたよ。」

「そのワイルドパンサー他の冒険者が狩ったりしなけりゃいいけどなぁ」

「お婆さんが、首輪を着けてあげましたから、そうそう襲われないとは思いますが、そのへんは運でしょうね」

その後は、ロジャーのノロケ話を色々と聞かされ、食事も終盤になる頃

「フウリン、ワインはどうだ、少しは飲めるだろう」

キター、定番パターン。
毒入りワインでしょ。
今回は眠り薬よね。

どうやって薬を入れるのかしら?

グラスが配られた。
目に魔力を集めて見たけど、異常はなかった。

ワインが、旦那様、ロジャー、と注がれて、

あ! ボトルの口を拭う仕草が不自然

私のグラスにもワインが注がれた。

「では、フウリンの結婚おめでとう。乾杯!」

私はほんの少しだけワインを口に含んだ。
味覚と嗅覚に魔力を集めてみると、眠り草の成分が入っている

「フウリン 乾杯なんだから、全部飲まないとだめだぞ、さあ」ケントさんが無理強いする

私はとっさに席を立って、ボトルを持ってケントさんの席に行く
「旦那様、グラスが空のようですね。お注ぎします」

「わ ワシはいい ワインは1杯だけと、医者に言われとる」

「まぁまぁ、一応お注ぎして置きますね」
ケントさんのグラスにワインを注ぎ終えて、席に戻ろうとする時に眠気が襲ってきた。

「ごめんなさい、疲れが出たのか、眠くて仕方ありませんので、失礼ですが、退席させていただきます」
最後の方は、ろれつが回らない風に話した。

部屋に戻る途中トイレに寄って、胃の中を空にした。
水が飲みたかったが、枕元に置いてある水も怪しいので我慢した。
魔力で脳と肝臓を活性化してみた。
それでも少しは寝ておこう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...