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第一章

オッコトボアと素材庫

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エスメラルダを先頭にして、二人は、逃げ出した。

エディは、通り過ぎた「けもの道」を周りと同化するように草を生やしながら逃げてみたが、オッコトボアは、全く気にすることも無く迫ってきた。

(エスメラルダ、このままだと追い付かれそうだぞ、どうするつもりだ)

「え~森から抜けられれば、何とか」

(いや~~、それ無理ゲーだよ)

「エディ、私を助けてよ」

(もしかして、囮になれってこと)

「私はオッコトボアに襲われたら死んじゃうわよ、エディは、死なないんでしょ。
例え食べられてウ●チになっても、再生出来るんでしょ」

(予想だけど、アイツの狙いは、エスメラルダだよ。だって俺って骨だけで食う所無いし)

「いいから、何とか足止めしてよ」

(チッ、しかたねぇな
ローズウィップ)

エディの蔓がオッコトボアの前足に絡みつき、オッコトボアはもんどり打って転んだ。

オッコトボアは、蔓から逃げようとしてるが、ほどける気配は無くて、ただジタバタしてるだけだった。

エディは、後ろ足も拘束することに成功して、オッコトボアは、悔しそうに吼えながらエディを睨みつけている。

エディは、意外と大したことない相手な気がした。

(エスメラルダ、こいつそんなに強い奴なのか)

(だって私の魔法じゃ、毛がちょっと凍り付くだけで、ダメージ与えられないのよ)

オッコトボアの体は剛毛でおおわれていて、アイスランスでも皮膚に少し傷つける程度しか効果が無いとエディも思った。

(エディ、あんたじゃ足止めはできたとしても倒すのは無理よ、今のうちに逃げましょう。
それと、多分そいつ火を吹くから、気を付けるのよ。)

エスメラルダからのアドバイスを聞いた直後、オッコトボアが、エディに向かって大きく口を開けた。

(やばい、火をふいてくるみたいだ。ロックアイス)
エディは、とっさに大量の氷を作り出して、オッコトボアの口の中に放り込んだ。

水蒸気爆発。それは火山の噴火でも起こることがある現象で、水が瞬時に気化して体積を増やすことで起こる爆発現象である。

エディのロックアイスとオッコトボアの火炎弾によって、水蒸気爆発が引き起こされたのだ。

オッコトボアの頭部は、見る影もなく粉砕された。
エディもまた、数十メートルふっ飛ばされて、地面に叩きつけられ全身骨折状態になった。
先に逃げていたエスメラルダにも多少爆風の影響は有ったが探知能力が危険を知らせて、即座に伏せた為に彼女は、殆ど無傷だった。

エスメラルダが立ち上がりまず発見したのは、頭部の無いオッコトボアだった。
エディが何らかの手を使って仕留めたんだと思ったが、肝心のエディが見当たらない。

「エディ、どこにいるの。出てきてよ。」

エスメラルダは自分が居た場所より遠くにエディの魔力を感じた。

「エディ召喚」

目の前に現れたエディは、頭蓋骨だけだった。

「エディ体は、どうしたのよ」

(あっちで、バラバラになってるよ)

「拾いに行く?」

(いや、それよりこのオッコトボアの体を使って再生したほうが、丈夫な人間になれそうだ)

「私は何したらいいの」

(俺をあの死体の上に乗せてくれ)

「相変わらず、ご主人様使いが粗いわね」

(頼むよ)

エスメラルダは、頭蓋骨の目の部分の穴に指を引っ掛けて、オッコトボアの体の上にエディを放り上げた。

頭蓋骨がオッコトボアの上に落ちるとすぐに眩しく光が放たれ、頭蓋骨もオッコトボアの姿も消え去って、一人の裸の青年が横たわっていた。

「いや~ん」
そう言いながらもエスメラルダは、青年をガン見している。

青年は目は落ちくぼみ痩せ細り青白く、いかにも今にも死にそうな病弱な感じだ。

男の子のあれって、あんな感じなんだ。
エスメラルダが青年の股間に注目した時、青年の体がブルブル震え出して、痙攣を起こしている。

「えっやめてよ。生き返ってすぐ死ぬの。」
エスメラルダは、その場に立ち尽くして、ただ見守ることしかできなかった。

青年の震えが止まると、先程とは見違える程立派な体格へと彼の体は変化していた。

「エスメラルダ」

青年の呼びかけにも反応せずにエスメラルダはボーっとしていた。

「エスメラルダ、恥ずかしいから、そこばかりみてないでくれよ」

エスメラルダは、我に返った。
「バカなこと言わないでよ。まるで私が変態みたいじゃない。
それであなた、エディなのよね」

青年は、立ち上がりエスメラルダの目を見下ろすように見て
「もちろんそうさ。エディだよ。
あまりに弱々しい体だから、再生能力で作り直したけどね。
上手くいってよかったよ。この体なら、戦闘もできそうだ。」
エディは、力こぶを作って見せた。

「いいから、早くそのプラプラしてるの隠しなさいよ」
エスメラルダは、バッグからローブを取り出してエディに渡した。

エディは、ローブを羽織りながら
「さっきから、ガン見してくるから裸の方がいいのかと思ったよ」
そう言って白い歯を見せてニカッと笑顔を見せた。

「バカ、人を変態みたいに言わないでよ」

「でも、見てた」

「終わり終わり。この話は終わり。
もうエディは普通の人間の体になったんだから、最初の目的は、達成したわ。」

「そうだな。ありがとうエスメラルダ。感謝している。」

「えっ、ちょっと、急に改まってお礼とか言わないでよ。
オッコトボア倒したのもアンタだし。私は逃げてただけだから」

「エスメラルダのアドバイスが無かったら、アイツは倒せなかったよ。これは本当さ。」

「だから~そう言うのやめてよ~恥ずかしくなる。」
エスメラルダは内股でクネクネしている。

「それから俺。
いや、折角この顔と体だから、僕にしよう。
その方が似合いそうだ。
な、そうだろエスメラルダ」

「えっ、あ、うん。そうね。」
目の前のエディは、それは顔もスタイルもかっこいい男性で、エスメラルダは、名前を呼ばれる度にときめいてしまう。

エスメラルダは、突然走り出した。
当然エディが追いかける。

はたから見れば、カップルのじゃれ合いがしばらく続いたが。

「ダッシュ」
エディは、エスメラルダを追い越してから振り向いた。

「オッコトボアの能力も手に入ったんだ。ほら」

エディは、空に向かって口から火を吹いた。

「凄いわ。人間通り越してない。ハイヒューマンね。魔力も信じられない位アップしたのを感じるわよ。
倒した相手の能力を自分のものにできるって、チートスキルね。
これからどんどん強くなれるんじゃない。」
エスメラルダは、目を輝かせてエディを見ている。

エディが、後頭に手を組んで歩いていると、ローブの紐がほどけた。

「あっ」

「えっ」

エディの彫刻のように美しい筋肉とアレが露わになった。
エスメラルダは、またソレを顔を覆いながらもガン見してから、走り出した。

「なんてもの見せつけるのよ。変態」

エディは、慌てて紐を拾い、縛り直してから、エスメラルダの後を追った。

「これは、事故だよ。わざとじゃないから。」

エスメラルダは、この胸のドキドキが走ったせいなのか、トキメキなのか分からなかった。
どちらにせよエディに恋してしまったようだ。
エディに追い付かれて、手を握られた。

「つかまえた。エスメラルダ」

エスメラルダは走るのをやめて、立ち止まり、握ったままのエディの手を胸の間にギュッと押し付けた。

「こんなにドキドキしてるのよ。わかるでしょ。これ以上ドキドキさせないでよ。」

エディは、エスメラルダの胸の感触を少し堪能してから、エスメラルダの手を引き寄せて彼女を抱きしめた。

「いや、ダメ」

エスメラルダは、小さな声でそう言った。

エディは、少し悩んだ「いやよいやよも好きのうち」の方なのか、本当に嫌なのかが分からなかった。
エディは、手放すほうを選んだ。
強引にいって本気で嫌われるよりも、「意気地なしねバカ」なんて言われる方が、後々のチャンスに期待できると思ったのだ。
そして彼女を解放する前に耳元でささやくことにした。
「エスメラルダ、ぼくは一生君を離さない。」

プシュー

エスメラルダは、沸騰したように真っ赤になって、うずくまった。

エディは、彼女が落ち着くのをその場で見守った。

しばらくしてエスメラルダは、再起動した。

「好きよエディ。私もあなたが大好き。
でも、今はまだダメ。
さっき迄、あなた骸骨だったのよ。
急にハンサムで細マッチョになった、あなたの「見た目の良さ」に惑わされてるのかもって思うの。
これからもっとお互いに知り合いましょうよ。」

「そうだね」

エディは、選択に間違いが無かったことに安心した。

二人は手を繋いで町へと歩き出した。

エディは、恋人繋ぎにするべきか、このままがいいのか悩んだり、自分の手汗が嫌がられないか心配していた。

しばらく沈黙が続いて、ちょっと気まずくなった頃

「ねぇエディ。今の体作るのに、オッコトボアの骨とか肉とか余らなかったの。」

「もちろん余ってるよ」

「それじゃあ、やっぱり収納系の能力も有るのね」

「『素材庫』って感じなんだ。
どれをどう使うってのじゃなくて。再生したい形をイメージすると自動的にそこから必要な材料を引っ張ってくるんだ。」

「素材庫に有る物って、自由に取り出せないの」

「やってみようか」

「うん」

「何を出せばいい」

「じゃあオッコトボアの毛皮を出して」
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