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ep2

シェリーの剣と盾

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シェリーは、冒険者ギルドの受付嬢になる前は、Bランクの冒険者として活動していた。
スキルは、回復と支援で、パーティーメンバーに常に守られながら、仲間に強化魔法をかけたり、怪我人の治療をするのが主だった。
シェリーは、常に戦いが人任せなのを、だんだんと申し訳なく思うようになり、パーティーを抜けてギルドに勤めることにしたのだった。

シェリーはギルドに勤めながらも、いつか冒険者に戻ることを思い続けて、体の鍛錬は欠かさずやっていた。

シェリーがはやぶさの剣を鞘から出して、じっと見つめている。

「シェリー、何してるの?」

「私の支援魔法で、この剣に何か付与出来ないかと思って、考えてたのよ」

「へぇー 付与ってなに?」

「例えば、歯が欠けても自動的に修復するとか、攻撃力をアップするとか、スラッシュが撃てるとか。その剣にプラスアルファの能力をつけることよ。」

「それ全部つけちゃえば」

「私の魔力だと一つが限界よ、だから迷ってたのよ」

「そっか、じゃあ、シェリーに魔力あげるわ」

アクアがシェリーの肩に手を置くと魔力がシェリーに流れ込んでいった。

「アクア、ストップストップ。
ありがとう。これ以上は体が持たないわ。体が燃えそうだし、気絶しちゃいそうよ。」

「シェリー、それじゃあ付与
やってやって。アクア見てみたい」

こうして、はやぶさの剣は、元々の一振りで2回攻撃に加えて、斬撃を飛ばす水刃。それに、威力は五割増しで、刃こぼれしない剣となった。
そして、はぐれメタルの盾には、魔法を反射する力と、自動修復が付与された。
こうしてシェリーの剣と盾は、国宝級の物となった。

「私、このパーティーで、タンク役になる。」
夕食時に、シェリーはそう宣言した。

「ミルド、良かったわね。シェリーがタンク役になってくれて。
これで私の心配しないで、暴れられるわね。」

「またロキシーは、あたしのことバトルマニアみたいに言う。」

「あらっ。違うの?
あなたの通った後ろには、いつも倒された魔物の魔石しか残って無いわよ。」

「いや、それは申し訳ない。今度から自分で魔石は拾うよ」

「いいわよ魔石拾いくらい私がやってあげるから。
ミルドが戦ってるの姿を『カッコいいなぁ~』って思って私は後ろで見てるのよ。
男性だったら好きになってたと思うわ。」

「ロキシー、わかった。
よし、これからもやるぞ!」



アクアが、シェリーにツツーっと近寄って、小声で

「ロキシーって魔性の女なのね」

「ミルドは、あれで幸せなんだからいいのよ。
ってちょっと、アクア!
時々大人みたいなこと言うの止めてよ。
ドキっとしたわ。」


シェリーをメンバーに加えた、パーティー「マーズ」は翌日、ダンジョン『インディー迷宮』で初陣を飾ることにした。

『インディー迷宮』はムルムルの街の近辺のダンジョンでは、最難関のBランクを誇っている。

「シェリー、なんで『インディー迷宮』にしたの」

「アクア、
元ギルド受付の私が、パーティーメンバーの結束を高めるのに、ここが一番いいと思ったからよ。」

「そうなの?1人1人バラバラにされて、ニセモノが出るんでしょ。私1人にさせられるのは怖いわ。」

「見た目に騙されなければ大丈夫よ、本人しか知らないはずの質問をぶつけるのよ。」

「それでも怖いわ。」

「アクア、あなたは誰よりも強いのよ。自信を持ってね。
このメンバーの中では、私が一番弱いの。その私も頑張るから、心配しないでいいわよ。」

「私、シェリーと絶対離れないから」

「そうね、そう出来るといいわね。
私もアクアと離れないように気をつけるわね。」


『インディー迷宮』は、これまでのダンジョンとは違い、中は真っ暗だ。

このダンジョンに入るには、Bランク以上であることと「灯り」の魔法、若しくは「ランプ」「たいまつ」を持ってることが条件だった。

ダンジョン入口の検問所で、ロキシーとシェリーは魔法で「灯り」を出して見せ、ミルドはたいまつを出して火打ち石で火を点けた。
アクアはストレージから火のついたランプを取出して見せた。

前もってシェリーには言われていたが、真っ暗なダンジョンにアクアは緊張した。

「ロキシー、シェリー もっと明るくしてよ~~」

「アクアは怖がりね~~」

ロキシーが光量をあげた。

洞窟の中が照らし出された。
壁面も天井も溶岩のようだ。
ゴツゴツしていて、湿っている。
小さな虫や虫の幼虫がウニョウニョ動いていて、それをコウモリやキルビーが捕食している。

「ううう~ シェリー、気持ち悪いよ~」

アクアはシェリーの服を掴んでいる。

「アクア、こいつらは雑魚よ。
ここでそんなにビビってたら、先に行けないわよ」

ロキシーが炎で、あたりを焼いた。

「ギャー ロキシー何すんのよ~~」

天井から、焼け死んだ虫やコウモリが異臭を放ちながらボトボト落ちてきたのだ。

「あなた、ミルドじゃないでしょ!」

「なに言うんだよロキシー。」

「本物のミルドなら、この程度で悲鳴あげたりしないはずよ。」

「シェリー、あたしだよ、わかるだろ。」

「ん~~本物なら~~」

「本物なら?」

「ビキニアーマーのブラに」

「ブラに???」

「パッド入れてる。」

「ざけんな!これは生乳だ!」


ミルドはブラをめくりあげてみんなに見せた。

「本人ね」
「本人みたいだね」
「乳首ピンクなんだ」

アクアはまじまじとミルドの胸を観察した。
ミルドは、これみよがしに胸を張ってアクアに見せた。

「アクア、こう見えてあたし
彼氏いない歴=年齢だからね」


「ごめんなさいミルド、アクアに騙されないように免疫つけさせたくて。
ちょっと、やりすぎたわね」


「あっ ああ、わかってるって
多分そうだろうと、最初から思ってたよ。ハハハ~」

ミルドはブラを直しながら、額の汗を拭った。

なんの気無しに、ミルドが一歩後ろにさがると

「カチッ」スイッチが入る音がした。

「えっ!」驚き顔のミルド
「ミルドー」ロキシーがミルドに飛びついた。

次の瞬間、二人の姿は消えて無くなった。

アクアは呆然として、シェリーの洋服をギュッと掴んだまま震えている。

「アクア、大丈夫。二人には絶対又会えるからね。
私がついてるじゃない。」

「シェリーも消えたりしない」

「大丈夫よ。そうだ!
『水のベール』でアクアと一緒に私を包んで。それならもっと安心でしょ」

少し落ち着きを取り戻したアクアが『水のベール』で二人を覆い、これまで以上に慎重に歩を進めた。

坂道のT字路に差し掛かった。
そこを右に曲がり坂道を登って進むと、大きな丸い石が通路を塞いでいた。
石は、あと少しで天井に届きそうな大きさで、二人のその先への進入を拒んでいるようだった。

「戻ろうか」
「そうね」

「ガタッ」

「やっぱり」
「走らないとヤバイやつ」

「アクア、飛べる?」
「わかった」

二人は飛んでさっきのT字路に飛び込んだ。

少しして轟音をとどろかせながら大きな石は目の前を通り過ぎて行った。

「これで、さっき石で通れなかった所の先に行けるかな」

アクアの目が輝いている。

「アクア、あなたワクワクしてるんじゃない」

「えへへ だってゲームみたいなんだもん。
これでさっきの、石の先に行けるかもね。」

「そうね、でも又、石がある可能性も有るわ。気をつけて行きましょう。」

二人は今度は最初から飛んでゆくことにした。
そしてシェリーが心配した通りさっきの場所は再び大きな石があった。

「ガタッ」

「またぁ」
「逃げましょ」

二人は、再びT字路に逃げ込んで、大石をやり過ごした。

「シェリー、逆に坂を下の方に行ったらどうかな。」

「石が落ちて来た時に逃げ場が無かったらまずいわよ。」

「うん。それなら調べてみる。」

「えっ ちょっと アクア
あなた『探知』使えるの?」

「ミルドの『探知』とはちょっと違うみたいだけど、大体わかるよ」

「なんで今まで使って無かったのよ」

ちょっとシェリーが語気強く言ったら

「あー シェリー 怒ったー むぅ」

「ごめんごめん。怒るつもりじゃないのよ。
こうした、先がどうなってるか分からない、しかも、どこに魔物が潜んでるか分からないダンジョンでは、『探知』系のスキルは、常に使っているのが、普通なの。
だからね。アクアができるのに、なんでやってなかったのかと思ったから、言い方強くなっちゃったのよ。ごめんね。」

「うん。わかった。」

「それで、坂を下った先はどうなってるの。」

「二又になってて、真っ直ぐと左カーブが有るわ」

「その先はどっちも下り坂なの」

「真っ直ぐの方は、少し行くと上りになるわ。
左はしばらく下ってるわ。」

「アクア、あともう一つ教えて、あなたのスキルで、あの転がってくる大石を、細かくバラバラにするとか、ストレージに収納するとかは出来ないかな。」

「あっ! …………
シェリー、怒らない?」

「怒らないわよ」

「それどっちもできると思う。」


♤♡♢♧♤♡♢♧

あらあら、ロキシー・ミルドと、はぐれちゃいましたね。
アクアは、持ってる能力をまだ使いこなせて居ませんね。
シェリーと二人で、このピンチをどうするか、お楽しみに。

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