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ep2

あやかしの森

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パーティーMRA
ミルド、ロキシー、アクアの三人は、アクアの水のベールに乗ってダンジョン『あやかしの森』に向かった。
ムルムルの街から馬でも1日かかる距離を3時間程で到着したので、そのままダンジョン攻略を始める事にした。

「アクア、ここの魔物は、ゾンビとかの他にシャドウみたいに実体が無い魔力の塊の奴もいるのよ。
だから『スライムダンジョン』みたいに簡単に倒せる相手ばかりじゃないから気をつけてね」

「ロキシーありがとう。
でも『魔力の塊』の魔物なら、『魔力溜り』の魔力を吸い取った時みたいに、一旦水で包んでから魔力ごと吸い取れば、倒せると思うわ。」

「そうかぁ~
そうよね。やっぱりアクアは無敵かもね。一応ガードは、必要ないだろうけど、私たちに任せてね。」

「アクア、このダンジョンでは『スライムダンジョン』みたいに殲滅はしないで、通るのに障害となる相手だけを倒すんだ。
魔力溜りも残して行くこと。
そうすればダンジョンが崩壊することは無いはずだからな」

「うん、ミルド わかった。
それでどっちに行けばいいの。」

3人はアクアの水のベールで森の上空をミルドの指し示す方向へと飛んでゆく。
障害となるものは何もなく、時々真下から討伐された魔物の魔石が飛んでくるだけだ。

「こんなに簡単でいいのかなぁ~」

「確かに、死角の多い森の中を、どこから突然襲ってくるか分からない魔物に対処しながら歩いて進むのとは、全然違うな。」

「1日に1層進むどころか、今日中に5層のボス迄行けそうね。」







ロキシーの言葉通りに5層のボス部屋の前まで、その日の内に3人は到達した。

「戦闘を避けて飛んできたらあっと言う間で来れるんだな」

「ロキシー、ここのボスはどんなやつなの?」

「イテテイっていう、雪だるまみたいなモンスターで、分身を創り出すのよ。
こっちが分身を攻撃すると、あざ笑うのよ。
本体にダメージを与えれば、それ程強い相手じゃないわよ」

「じゃあ全部纏めて攻撃すれば?」

「そうだな、アクアにはその手が有ったな。
ボスも肩なしだなぁ」





3人がボス部屋に入ると自動的に入口のドアが閉まった。

少し先のステージにロキシーの言うとおり、雪だるまのような魔物のイテテイが現れた。

イテテイは、すぐに3体に分身した。

「やっていい?」

アクアの問いに二人が頷く。

大量の水がどこからか現れて3体のイテテイを包む。
水が引くと共に少し大き目な魔石がアクアの手元に飛んで来た。

「ボス戦がこれじゃあ、張り合い無いわね」

「ロキシーも私も、何もしてないからなぁ
アクアのベールで飛んできて、ダンジョンの中でも、見てただけだもんな。」

「ミルドは、まだいいわよ。
進む方向をアクアに指示してたでしょう。
私なんか、本当にただの見学者よ」

「二人共、ごめんなさい。
私のせいで、退屈させて。」

「アクアは、気にしなくていいよ。こうなることは予想してたし。」

「そうね、わかってたけど、やっぱりって感じね。
今日はこのまま、ここで野営しましょうよ。
ここなら、もう何も襲ってくる心配も無いし。」

アクアたち3人は、ボス部屋で一夜を過ごす事にした。

アクアが眠りに着いた頃、ミルドがロキシーに話し掛けた。

「なぁロキシー、あたしたち二人だけで、もう一度このダンジョン攻略しないか」

「ミルド、私もそれいい出したかったのよ。
アクアが凄いのはわかってるわ。
だけど何もしないでダンジョンクリアって、心苦しいし、フラストレーション溜まるわよね。」

「アクア1人ムルムルに帰すことになっても、問題ないかな」

「危険は無いと思うけど、本人がどう思うかよね。
全く、安心しきった顔して寝てるわこの子」

「こうして見るとただの少女なのになぁ」





翌日
ロキシーから、二人での再攻略の話を聞いたアクアは

「私1人で帰るのは絶対嫌よ。
自分は何もしないでもいいから二人に付いて行きたいわ」

こうして攻略したばかりのダンジョンに彼女らは再び入った。

アクアは二人の戦闘の様子を上空から見ている。文字通り高みの見物だ。
地上からは、ロキシーの魔法だろうか、爆発が起きたり、ミルドの槍が何かとぶつかる金属音が聞こえてくる。

アクアから見ても、二人の火力は圧倒的だった。
アクアほどのスピードでは無いにしろ、午前中に2層まで攻略し3層との間の階段のセフティーゾーンでランチを取ることにした。

上空にいるアクアを二人が手招きで呼び寄せて、アクアのストレージから温かいスープやパスタを3人で食べた。

「なぁロキシー、前に二人で来た時と違って、簡単過ぎないか?」

「そうね、折角アクアの手出し無用でやってるのに、これまでの所楽勝よね。
多分『スライムダンジョン』とかここの1回目の攻略の時、アクアとパーティー組んでるから、戦わなくても経験値は入って来てるんじゃない。
つまり、何もしてないのに私たち前より強くなってるのよ」

「そうか。魔物が弱いんじゃ無くて、あたしたちが強くなったのか」

「そうね。ちゃっちゃと終わらせて、もっと強い魔物がいるダンジョンに行かないと、ストレス解消にならないわね。フフフ」

「そうだな、ハハハ」

「私も行きたい!」

「もちろん、アクアも一緒よ。
ねっ ミルド」

「ああ そうだな。一緒だ」

「わ~い へへへ」







ミルドとロキシーは、こうして1日で4層迄攻略した。

翌日のボス戦もあっけなく終り
3人は、アクアの水のベールに乗って、その日の内にムルムルに帰った。

喜んだのは、チャラ・イリッチだ。滞在期間を延長することなく、アクアたちから話が聞けるからだ。

パーティーMRAの3人は、いつものようにギルド長の部屋に呼ばれた。
そこには当然、チャラ・イリッチとシェリーも待っていた。

「おかしいなぁ
君たちのカードには、『あやかしの森』を連続で2回攻略したと記録されている。」

ギルド長のハックが読み取り機を見てブツブツ言ってる。

ミルドが、それを見て笑いながら

「それで合ってるよ。
アクアが1人で1回目、あたしとロキシーで2回目
『あやかしの森』2回攻略してきたんだよ」

「えっ?だって、普通往復に2日かかって、攻略に3日位かかるだろう。
それを3日で2回攻略………君らならやるれるか………そうか」

「おい、ハックギルド長。
なに納得してるんだ、おかしいだろそんなの。
どうやったら、そんなに短期間で、それだけのことが出来たのか、誰にでも分かるように説明して貰おうか。」

チャラ・イリッチが興奮して問いただしてきた。

ロキシーがスッと手を挙げて

「私が説明するわ。いいわね」

ミルドとアクアが頷く

「まずアクアの能力の話からするわね。
アクアは、水魔法に特化している魔法使いで、その威力も種類も神レベルだって言う事。
『あやかしの森』へ私たちは、3時間程で空を飛んで着いたわ。
ダンジョンの中でも森の上を飛んで、たまたま下にいた魔物を討伐するだけだから、簡単に5層のボス部屋までその日の内に行けたわ。
ボスも、アクアがサクッと倒して1日目が終了。
私とミルドが、何もしないで終わってしまったので、アクアには見学してもらって、二人で一層からもう一度始めたわ。
アクアみたいに半日って訳にはいかなかったけど、それでも1日半で攻略したわ。ほとんど駆け出しっぱなしよ。
で、また3人でその日の内に帰って来たって訳よ」

少し放心状態になってから、気を取り直してチャラ・イリッチが口を開いた。

「それは本当の話か?」

「アクア、ちょっと浮く位とか、やって見せたら。」

ロキシーがそう言うと、アクアは頷いた。

「あわわわわ。
降ろせ、降ろしてくれ~~」

チャラ・イリッチの体が浮かび上がり、部屋の中を飛び回ったのだ。
空中から降ろすと水牢で取り囲んだ。
水の中でチャラ・イリッチがもがく。
次の瞬間水牢が無くなり、ずぶ濡れの男がよろよろとたちあがった。

「よくも、ぼくにこんな事を」

「こんな事ってどんな事かしら」


その時には、チャラ・イリッチの服も髪も乾いていた。

「濡れて無い」

チャラ・イリッチは不思議そうに自分の服を点検している。

「調査官、疑問は、晴れましたか?」

「あ うん そうだな
カードに記された記録も間違いでは無いようだ。
但し、こんなことが出来るAランクやBランクが居たらおかしいだろ。
調査官権限で、MRAの3名を今からSランクとする。
これで全て不思議は無い。」

「スライムダンジョンの件も解決ですか?」

「ああ、ダンジョン内のスライムを3名のSランク相当の冒険者が一匹残らず瞬時に殲滅したことにより、崩壊したんだろうと結論づけた。」

こうして、アクアたちはSランクとなり、チャラ・イリッチは調査を終えて王都へと帰って行った。




♤♡♢♧♤♡♢♧

チャラのせいで、3人揃ってSランクになってしまいました。
実力が上がると、低レベルの相手をしたくなくなる。
より強い相手を求めてしまうのが人の性でしょうか。
彼らがこの先どう変わっていくかお楽しみに。

お気に入り登録者が100人以上になりました。
大感謝です。ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
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