上 下
8 / 27
ep2

アクアは子供?

しおりを挟む
受付嬢のシェリーのそばに行くと

「あら アクアさん、見ただけで大変過ぎて断って帰って来たのかなぁ~」

「それが………
ほんのちょっと………
やり過ぎちゃいました!
ごめんなさい。」

依頼書をそーっとシェリーに見せた。

「んんんんん」

シェリーの顔から血の気が引いて、シェリーは一瞬アクアを睨んでから、依頼書をひっ掴んで
「ちょっとこっちに来なさいよ。」
そう言って、カウンターを跳ね上げた。
「Fランクの依頼をギルド長案件にしちゃうのはあなたくらいよ」

そう言いながらアクアをギルド長の部屋の前に引っ張って行き、いきなりドアを開けた。

「シェリー ノックも無しに モゴモゴ」

「あ~ギルド長、またお菓子食べてる。奥さんに止められてるんでしょ。
言いつけますよ。」

「シェリー、そこは内緒にしてくれないかなぁ。」

「いいですけど、奥さんギルド長のお体を心配されてるんですよ。
愛妻の為にもこれからは我慢して下さいよ」

「わかった。わかった。
もう我慢するから。
で、アクアさん連れて飛び込んで来たのは?どうかした?」

「この依頼書見て下さいよ」

「Fランクのドブさらいだな」

「そこじゃ無くて、完了のサインの所です。」


「え~~~~~っ
80ユニット。
なになに『アクア様のお手を煩わせ、申し訳ありません。別途追加報酬100万Gもお受取下さい』だと~」

「アクアさんが、今朝依頼を受けて、2時間で終わらせて来たんです。」

「ちょっと、詳しく聞かせて貰おうか」

アクアは、事の顛末を詳しく話した。

「それで、私が空から降りたら、みんな『へへ~』ってひれ伏してて、お婆さんからは拝まれるし、担当者のタナーさんは『天女様』っていい出すし。
困っちゃいますよ。ね~」

「困っちゃいますよ ね~
なんて言ってる場合じゃないでしょ」

「どうしたらいいですかね」

「天女だって認めればいいんじゃないか」

「それはちょっと嫌よ。
だって天女じゃないし、嘘つきたくないわ」

「あとは、それだけのことができて当然の存在になる。
例えばAランクいやSランクの冒険者とかなら、天女説を否定出来ると思うが」

「う~ん、それも目立つわよね。取り敢えず、タナーさんやスラムの人たちは口外しないって言ってくれたから、このままってのは」

「そう長くは持たないと思うけどなぁ。
なぁシェリー」

「私の考えとしては、ランクなりの成果を、ランク以上の力を使わずにこなせるように注意するべきだと思います。
Fランクの依頼に対して、空を飛んで広範囲に大規模魔法を、しかも同時に複数展開すれば、天女と思われて当然と思います。
空を飛んだりせずに、魔法も一つずつやって、規模も2ユニット迄に抑えておけば、こんな騒ぎにならなかったはずです」

「うんうん、流石だシェリー
あ、そうだ!そうしよう」

「ギルド長、なに一人で思いついて勝手に納得してるんですか。
教えて下さいよ」

「ん ああ 
これよりシェリーをアクアの教育係に任命する。
アクアは宿屋暮らしを止めてシェリーのいるシェアハウスに入る。」

アクアはポカンとして聞いていた。

「ちょっと待って下さいよギルド長。確認ですけど、それって命令なんですか?
そんな命令を出す権限があなたに有るんですか?」

「無いよ、職権乱用だな。
教育係に指名は可能だと思うが、同宿指定はパワハラ案件だな。
でもこれ以上の案は無いと思うぞ」

「アクアさんが冒険者止めて、ジンベエさんの所で暮らすのはどうですか
とか
ギルド長権限で騎士団に推薦はどうですか」

「う う う
うわ~~ん」

アクアが泣き出した。

「どうしたんだアクア急に泣き出して」

「ふぇ~~ん」

アクアはなかなか泣き止まない

「ギルド長の顔が恐いんですよ。声は大きいし、むちゃな命令するし」

シェリーは、アクアを抱き寄せ落ち着かせようとしたが、
アクアはシェリーの胸をポコポコと叩いた

「違うもん ヒック ハックさんは恐くないもん ヒック」

「じゃあ何なのよ!」

シェリーは少し苛ついて語気強めで言った。

「シェリーさん 私のこと嫌いなんだぁ~~ ふぇ~~ん
一緒に 一緒に 暮らすの
嫌なんでしょ ヒック」

「えっ あっ
いや そうじゃ無いわよ。
アクアさんのこと私が嫌いな訳ないじゃない」

「じゃあなんでジンベエさんの所に帰れとか言ったの」

「それは………わかったわ。一緒に暮らしましょう。ギルド長もそれでいいんでしょう。
但し、お菓子の件も含めて給料30%増しで手を打つわ」

「15%で頼む」

「ケチ。せめて20は出してよ。」

「わかった。20で」

「シェリーさん お給料増えたの私のおかげよね」

「へっ まぁそう言えなくはないけど、ん~そうね
後で何か買ってあげるわよ」

「わ~い」

「現金な娘ね」

「えへへ」

「アクアは、今回の件でCランクな。戦闘経験が含まれて無いが、実績としては、十分だろう。」

こうして、アクアは、Cランクとなり、180万Gを手に入れた。
Cランク以上には、冒険者カードにキャッシュレス決済機能が付与される。
今回アクアが得たお金は、この口座に入金された。

シェリーに今泊まっている宿を引き払うように言われて、一旦「かあちゃんの店」に戻り女将のマーサに事情を話して、礼を言ってから、冒険者ギルドへと戻ってきた。



「アクア、宿を引き払って来たんでしょ。荷物はどうしたの?
まさかのストレージ魔法持ち?」

「荷物は、何もないわよ。
持ち物は、今着ている旅人の服一着だけです。」

「えー 本当にそれだけ?着替も無いの?あとその下は裸なの?
下着は?」

「下着は着けてません。裸です。」

「そんなの駄目よ。胸だってこれから大きくなるだろうし、ちゃんと下着くらい着けないと。」

「フフ もう大きくはならない歳ですよ」

「何言ってるの、どう見てもあなたまだ子供じゃない。
背も伸びるし胸も大きくなるわよ」

シェリーにそう言われてアクアは「はっ」となった。

そう言えば、この世界に来てからまだ一度も自分を鏡に映して見たことが無かった。
自分はマリの体のままだと思い込んでいた。

「シェリー どこかに自分の体全体が見れる姿見は有りませんか」


「アクア あなた もしかして自分のこと鏡に映して見たこと無いの」

「はい。有りません。
何歳くらいに見えますか」

「そうね。11~13歳って所かな」

「やっぱりそうなんですね。なんか精神が肉体に引っ張られて、子供になってる気分がしてて、変だと思ってたんです。
さっきも、急に不安になって泣いちゃいましたが、演技じゃないんです。本当に。」

「あなた 自分が何歳だと思ってたの」

「32歳です」

「ブッ なにそれ。
ギルド長位の歳じゃない。
32歳でその見た目なら、長命な天女で説明がつくわよ。
本当に天女なんじゃなくて?」

「これまで私に起こったこと、聞いてくれますか?」

「ん~ いいけど、それ絶対長くなるわよね。
先に服を買いに行って、あなたは店の鏡で自分の姿を見て確認する。
それから私の家に一緒に来て、落ち着いてからその話を聞くことにするわ」


♤♡♢♧♤♡♢♧


気がついたら、他人の体に転生ですからね。
馴染むには、それなりの時間が必要ですよね。

これからは、どんどんアクアは年齢なりのキャラになっていきます。

面白く思えたら「お気に入り」登録お願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?

歩芽川ゆい
恋愛
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」  コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。  プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。  思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。  声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

異世界ハニィ

ももくり
ファンタジー
ある日突然、異世界へ召喚されてしまった女子高生のモモ。「えっ、魔王退治はしなくていいんですか?!」あうあう言っているうちになぜか国境まで追いやられ、隙あらば迫ってくるイケメンどもをバッサバッサとなぎ倒す日々。なんか思ってたのと違う異世界でのスローライフが、いま始まる。※表紙は花岡かおろさんのイラストをお借りしています。※申し訳ありません、今更ですがジャンルを恋愛からファンタジーに変更しました。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...