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転生したみたい
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水田マリ32歳独身。
豪華客船のアテンダントとして、
東京から出港する船で働いている。
この日もクルーズ船が港を離れ東京湾を南へと進んでいく。
振り返ると、お台場の明りの先に東京タワーが見え、浦安のディズニーリゾートや東京スカイツリーも見えた。
「さて、仕事仕事」
船内では、既に盛り上がっていて、何度も歓声があがっていた。
シェフにより目の前でシャトーブリアンが焼かれたり、焼きチーズがドリアにかけられ、板前が寿司を握る。シャンパンタワーにチョコレートファウンテン。
その隣には北京ダックやフカヒレスープに、アワビのオイスターソース煮やら上海ガニがある。
ビュッフェスタイルで客は思い思いの料理を好きに選んでいるが、一度テーブルに着くと、立ち上がる人はほとんどいない。
マリの仕事は、そんなお客に「何かお持ちしましょうか」と声をかけて、酒や料理を運ぶのが主だ。
この日も
「後で、ぼくの部屋に来ないかい。次の寄港地に着いたら、宝石でも買ってあげるよ。」
と自分の父親ほどの年齢の男から声をかけられた。
マリは年齢こそ30歳を越えていたが、身長168cmのスレンダーな美人で、よく「モデル?女優さん?」と聞かれたりしていた。
女子では背が高かったので、小学校の高学年位からは、よくモテて告白も嫌になるほど数多くされていた。
高校生になって直ぐの頃、バイトしてたコンビニのお客にストーカー行為をされて、怖い思いをした。
それ以来、マリは男性恐怖症となってこの歳迄誰とも付き合ったことが無かった。
レストランでの仕事が終わり更衣室から出ると、先程口説いてきた中年の男が待ち伏せをしていた。
「ぼくとバーで飲まないかい」
男はいきなりマリの手を掴んできた。
「ごめんなさい。私お酒は飲めないので、失礼します。」
「ジュースでもいいんだよ。少し話し相手になってくれたら」
「ごめんなさい。お話することもありません。お願いします離して下さい」
男の掴む力が少し弱くなったように感じたので、握られた手を振り解いてマリは逃げ出した。
「なんだよ~怖がらなくてもいいじゃ無いか。
一緒に話をしながら飲もうってだけだよ」
マリは、遠回りをするように一旦デッキに出てから自分の部屋に戻ることにした。
通路を歩いて部屋のそば迄来ると自分の部屋の前にさっきの男が居た。
「あっ」
思わず声を出してしまった口を手で塞いだが、遅かった。
男と目があった。
男はニッコリ笑って手を振っている。
マリは、背筋が寒い思いで再び逃げ出した。
デッキにあがり隠れる場所を探した。外を覗くと救命ボートが目に入った。
〈あそこなら隠れられる〉
ボートの上はテントのような素材でおおわれていた。
〈ここから飛び降りても、きっとあれで衝撃が弱くなるはずよね〉
金属製の階段を駆け上がってくる音がする
〈今しかない〉
マリは意を決して、デッキから空中へと身をおどらせた。
マリの計算通りに救命ボートの上に落ちるが、ピンと張ったテントの上で体が思いの外大きく弾んだ。
マリは、運良くボートの周りに張ってあるロープを掴むことができたが、ボートの脇にぶら下がるのがやっとの状態だった。
マリは、なんとか体をボートの上まで引き上げようとしたが、彼女の腕力ではそれはかなわなかった。
ジタバタすればするほど、腕から力が抜けて行く。
〈助けを呼ぶ?でもそしたらあの男が。
この船の人はみんなお金持ちのいいなり
私はそんなの死んでもいや。
このまま海に落ちれば、確実に溺れ死ぬだろう。
でも、その方がいい〉
マリは、ロープを掴む手の力を弱めた。
マリは、悲鳴をあげる事もなく暗い夜の海へと落ちていった。
海上へと顔を出そうともがくが、船がかき分ける波にのまれて、海中へと引きずりこまれた。
〈息がもう続かない〉
胸の中に貯めていた空気を吐きだすと、水が入ってきた。
〈ああ これで死ぬんだ。〉
死を覚悟すると共に、苦しさが無くなり、意識も途切れた。
しばらくして、マリの意識が再び目覚めた。
一条の光に包まれていてとても眩しい。
〈なに?わたし海で溺れて死んだはずよね〉
そんなマリの意識の中に声が聞こえてきた。
〈あなたに、新たな命を授けましょう、『水の申し子アクア』として、生きるのです。〉
柔らかな女性の声が頭の中に聞こえた。
自分を包んでいた眩い光が消えた。
まだ海の中のままだ、水面から光が射し込んでいる。
〈とにかく水の上に出なきゃ〉
すると、体がグンと上に向って上昇し始め、勢い余って3メートル位空中に飛び出した。
〈何この能力?思っただけで水中を高速で動いたりしたわ
それに船から落ちた時は夜だったはずよね〉
マリは、水面にプカプカと浮いて空を見上げた。
真っ青な空に白い雲、それにギラギラした太陽が見える。
〈何か助かったみたいだけど、相変わらず海の上をボートも無しに漂流中なのよね。
まだまだピンチじゃない〉
水中に目をやると、テーブルサンゴやカラフルな魚が泳いでいる。
急に心配になって自分の足を見て見ると、ちゃんと白い足が二本あった。
〈幽霊でも人魚でも無いわね。よかったぁ~
次は陸に上がらないとね〉
キョロキョロと周囲を見渡しても、波で遠くが見えない。
それに、いつもしていたメガネも無くなっていた。
〈ちょっと待って!
メガネだけじゃなくて、私真っ裸じゃない。〉
「えええー!」
〈これじゃあ陸にあがっても大惨事じゃない〉
「さっきの声の人、助けるなら、ちゃんと助けてよ~~~」
〈『水の申し子アクア』水の羽衣を纏えばよかろう。
我の授けた力を使いこなしなさい。
水はそなたの力となる。
アクアよ、水は全ての物に力を与え、全ての物は水無くして生きられぬ。〉
「えーっと。女神様。陸はどっちですか~
教えて下さい」
マリの問いかけに、女神の言葉が返ってくることは無かった。
〈放任主義かぁ~。家の親もそうだったけど、この女神様もそうなのね。
海の中に素っ裸で放り出して、後はご勝手にって?
能力あげたから何とかなるでしょってかぁ?
まぁいいわ。
あのまま成仏よりはましね。〉
マリ=アクアは、海水を自分の下に集めて、体を押し上げさせた。
10mほどの高さにして、目をこらして遠くを見ると西の方に陸地が見えた。
〈なるほど、これも『水の申し子アクア』の力なのね。
メガネも無しで遠く迄よく見えるし、水をこんなふうに自由に扱えるなんて、凄いわ。
男性は30歳迄チェリーだと魔法使いになれるって聞いたことあるけど、32歳迄ヴァージンだった私も魔法使いになったのかしら
これってもう人じゃ無い、神様に近い存在になったみたいね。
いいわ、マリ改めアクアとして、これからは生きていくわ〉
アクアは胸と腰に水のベールを纏って、陸に向ってサーフィンのように滑り出した。
目立つのを避けたくて、波しぶきが立たない位の速さで3時間位かけて陸に近づいた。
珊瑚礁の先の砂浜は、絶景のビーチだった。
運良く人影は全く無かった。
砂浜の端に木造の漁師小屋が有るのが目に入った。
〈きっとそこに居れば人と会えるはずよね〉
水中からジャンプして小屋の前に着地した。
小屋の扉に手をかけると、鍵はかかってなく、すんなり開けることができた。
小屋の中に入る
人の気配は無い
干して有るのか、みすぼらしい着物が壁際にかかっていた。
アクアは、その着物を着て、小屋の主人の帰りを待つことにした。
♢♧♡♤♢♧♡♤
女神様も、ひどいですね~
能力授けて、海にポイって。
さて、こんなマリ=アクアにこれからどんなことが起こるでしょう。
面白そうと思われたら、是非『お気に入り』登録お願いします。
豪華客船のアテンダントとして、
東京から出港する船で働いている。
この日もクルーズ船が港を離れ東京湾を南へと進んでいく。
振り返ると、お台場の明りの先に東京タワーが見え、浦安のディズニーリゾートや東京スカイツリーも見えた。
「さて、仕事仕事」
船内では、既に盛り上がっていて、何度も歓声があがっていた。
シェフにより目の前でシャトーブリアンが焼かれたり、焼きチーズがドリアにかけられ、板前が寿司を握る。シャンパンタワーにチョコレートファウンテン。
その隣には北京ダックやフカヒレスープに、アワビのオイスターソース煮やら上海ガニがある。
ビュッフェスタイルで客は思い思いの料理を好きに選んでいるが、一度テーブルに着くと、立ち上がる人はほとんどいない。
マリの仕事は、そんなお客に「何かお持ちしましょうか」と声をかけて、酒や料理を運ぶのが主だ。
この日も
「後で、ぼくの部屋に来ないかい。次の寄港地に着いたら、宝石でも買ってあげるよ。」
と自分の父親ほどの年齢の男から声をかけられた。
マリは年齢こそ30歳を越えていたが、身長168cmのスレンダーな美人で、よく「モデル?女優さん?」と聞かれたりしていた。
女子では背が高かったので、小学校の高学年位からは、よくモテて告白も嫌になるほど数多くされていた。
高校生になって直ぐの頃、バイトしてたコンビニのお客にストーカー行為をされて、怖い思いをした。
それ以来、マリは男性恐怖症となってこの歳迄誰とも付き合ったことが無かった。
レストランでの仕事が終わり更衣室から出ると、先程口説いてきた中年の男が待ち伏せをしていた。
「ぼくとバーで飲まないかい」
男はいきなりマリの手を掴んできた。
「ごめんなさい。私お酒は飲めないので、失礼します。」
「ジュースでもいいんだよ。少し話し相手になってくれたら」
「ごめんなさい。お話することもありません。お願いします離して下さい」
男の掴む力が少し弱くなったように感じたので、握られた手を振り解いてマリは逃げ出した。
「なんだよ~怖がらなくてもいいじゃ無いか。
一緒に話をしながら飲もうってだけだよ」
マリは、遠回りをするように一旦デッキに出てから自分の部屋に戻ることにした。
通路を歩いて部屋のそば迄来ると自分の部屋の前にさっきの男が居た。
「あっ」
思わず声を出してしまった口を手で塞いだが、遅かった。
男と目があった。
男はニッコリ笑って手を振っている。
マリは、背筋が寒い思いで再び逃げ出した。
デッキにあがり隠れる場所を探した。外を覗くと救命ボートが目に入った。
〈あそこなら隠れられる〉
ボートの上はテントのような素材でおおわれていた。
〈ここから飛び降りても、きっとあれで衝撃が弱くなるはずよね〉
金属製の階段を駆け上がってくる音がする
〈今しかない〉
マリは意を決して、デッキから空中へと身をおどらせた。
マリの計算通りに救命ボートの上に落ちるが、ピンと張ったテントの上で体が思いの外大きく弾んだ。
マリは、運良くボートの周りに張ってあるロープを掴むことができたが、ボートの脇にぶら下がるのがやっとの状態だった。
マリは、なんとか体をボートの上まで引き上げようとしたが、彼女の腕力ではそれはかなわなかった。
ジタバタすればするほど、腕から力が抜けて行く。
〈助けを呼ぶ?でもそしたらあの男が。
この船の人はみんなお金持ちのいいなり
私はそんなの死んでもいや。
このまま海に落ちれば、確実に溺れ死ぬだろう。
でも、その方がいい〉
マリは、ロープを掴む手の力を弱めた。
マリは、悲鳴をあげる事もなく暗い夜の海へと落ちていった。
海上へと顔を出そうともがくが、船がかき分ける波にのまれて、海中へと引きずりこまれた。
〈息がもう続かない〉
胸の中に貯めていた空気を吐きだすと、水が入ってきた。
〈ああ これで死ぬんだ。〉
死を覚悟すると共に、苦しさが無くなり、意識も途切れた。
しばらくして、マリの意識が再び目覚めた。
一条の光に包まれていてとても眩しい。
〈なに?わたし海で溺れて死んだはずよね〉
そんなマリの意識の中に声が聞こえてきた。
〈あなたに、新たな命を授けましょう、『水の申し子アクア』として、生きるのです。〉
柔らかな女性の声が頭の中に聞こえた。
自分を包んでいた眩い光が消えた。
まだ海の中のままだ、水面から光が射し込んでいる。
〈とにかく水の上に出なきゃ〉
すると、体がグンと上に向って上昇し始め、勢い余って3メートル位空中に飛び出した。
〈何この能力?思っただけで水中を高速で動いたりしたわ
それに船から落ちた時は夜だったはずよね〉
マリは、水面にプカプカと浮いて空を見上げた。
真っ青な空に白い雲、それにギラギラした太陽が見える。
〈何か助かったみたいだけど、相変わらず海の上をボートも無しに漂流中なのよね。
まだまだピンチじゃない〉
水中に目をやると、テーブルサンゴやカラフルな魚が泳いでいる。
急に心配になって自分の足を見て見ると、ちゃんと白い足が二本あった。
〈幽霊でも人魚でも無いわね。よかったぁ~
次は陸に上がらないとね〉
キョロキョロと周囲を見渡しても、波で遠くが見えない。
それに、いつもしていたメガネも無くなっていた。
〈ちょっと待って!
メガネだけじゃなくて、私真っ裸じゃない。〉
「えええー!」
〈これじゃあ陸にあがっても大惨事じゃない〉
「さっきの声の人、助けるなら、ちゃんと助けてよ~~~」
〈『水の申し子アクア』水の羽衣を纏えばよかろう。
我の授けた力を使いこなしなさい。
水はそなたの力となる。
アクアよ、水は全ての物に力を与え、全ての物は水無くして生きられぬ。〉
「えーっと。女神様。陸はどっちですか~
教えて下さい」
マリの問いかけに、女神の言葉が返ってくることは無かった。
〈放任主義かぁ~。家の親もそうだったけど、この女神様もそうなのね。
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能力あげたから何とかなるでしょってかぁ?
まぁいいわ。
あのまま成仏よりはましね。〉
マリ=アクアは、海水を自分の下に集めて、体を押し上げさせた。
10mほどの高さにして、目をこらして遠くを見ると西の方に陸地が見えた。
〈なるほど、これも『水の申し子アクア』の力なのね。
メガネも無しで遠く迄よく見えるし、水をこんなふうに自由に扱えるなんて、凄いわ。
男性は30歳迄チェリーだと魔法使いになれるって聞いたことあるけど、32歳迄ヴァージンだった私も魔法使いになったのかしら
これってもう人じゃ無い、神様に近い存在になったみたいね。
いいわ、マリ改めアクアとして、これからは生きていくわ〉
アクアは胸と腰に水のベールを纏って、陸に向ってサーフィンのように滑り出した。
目立つのを避けたくて、波しぶきが立たない位の速さで3時間位かけて陸に近づいた。
珊瑚礁の先の砂浜は、絶景のビーチだった。
運良く人影は全く無かった。
砂浜の端に木造の漁師小屋が有るのが目に入った。
〈きっとそこに居れば人と会えるはずよね〉
水中からジャンプして小屋の前に着地した。
小屋の扉に手をかけると、鍵はかかってなく、すんなり開けることができた。
小屋の中に入る
人の気配は無い
干して有るのか、みすぼらしい着物が壁際にかかっていた。
アクアは、その着物を着て、小屋の主人の帰りを待つことにした。
♢♧♡♤♢♧♡♤
女神様も、ひどいですね~
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