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第二章

覚醒

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キャロライナたちからの陰湿なイジメは影を潜めて、ジーナとテイルは平穏な日々を過ごしていた。

「ねぇジーナ。私に魔法教えてくれない?」

テイルは、体術・剣術は優れていたが、魔法に関しては、身体強化以外からっきしだった。

「テイルの魔法適性は何?」

「一応 水 だと思う」

「ちゃんと調べてないの?」

「うん」

「私が鑑定してもいいかな。テイルの記憶もスキルも全部見えちゃうけど。」

「恥ずかしいけど、ジーナならいいわよ。」

「それじゃあ、今夜見せてもらうわ。
テイルが寝てる時に一時的に身体を乗っ取っるから」

「えー なんか怖~い」

「テイルは、なんともないわよ、寝てるだけでいいのよ。
無理には薦めないけど、どうする」

「やっぱ やってもらおうかな」

その夜、ユウトはジーナから抜け出て、テイルの中に入った。

テイルの魔法適性を見ると、時空間だった。
それに伴うスキルが
『ストレージ』
『転移』
の二つだった。
ユウトは、一晩中テイルの体で二つのスキルを使いこんで、朝方にこれをコピーして、ジーナに戻った。

「おはようテイル」

「おはようジーナ。うふふ。ありがとうね。なんか体が今朝は軽いわ。
それで、どうだったの私の魔法適性は」

「『水』じゃあ無かったわ。練習しても、無駄だったのはそのせいね。
テイルの魔法適性は『時空間』
スキルは『ストレージ』『転移』の二つよ。
おかげで私も使えるようになったわ。
どっちも凄いじゃない。私も驚いちゃった。
これトンデモチートよ」

「えっ ジーナもう使えるの?」

「うん、テイルの体で一晩中練習したからね」

「じゃあ私も出来るんだ
『ストレージ』と『転移』」

「もちろんよ。見てて、実際は言葉は要らないけど『ストレージ』」

机の上の水さしが無くなった。

取り出すのも簡単、しかも~

机の上の空間が一瞬かげろうみたいに揺らぐと、水さしが現れた。

「空っぽでしょ」

取り込んだ物を分けて出せるのよ。

「ほら」

水が床に撒かれてビショビショだ。

「テイル この水取り込んでみて」

「あ うん
やってみる
こ こうかな?
『ストレージ』」

テイルが水に向けて手をかざすと、水が無くなった。

「わ わぁ~~ 出来た~~~ 
私の魔法!
嬉しい。ありがとうジーナ。」

「テイル、収納したものを見れる?」

「ちょっと待って
え~っと
『床の埃が混ざった水』が有るわ」

「水だけを水さしに戻してみて」

「そんなことできるの?」

「出来たら凄いと思うでしょ。それが出来ちゃうのよ~」

「水だけ出てきて、水さしに入れ!」
テイルが変なふりをつけてそう言うと、空だった水さしに水が入った。

「テイル、ストレージの中をもう一度見て」

「『床の埃』が残ってる!」

「窓から捨てちゃえ」

「埃 バイバ~イ」

「戦いでも、こんなふうに使えるわよ」

「えっ えっ イヤ~~ん」

ジーナはテイルの着てた服をストレージに入れた。

「やったわね」

テイルもジーナの服をストレージに入れた。

「うふふ、二人とも裸になっちゃった。」

「アハハ」

しばらく裸で、くすぐりっこしたりじゃれ合ってから、服を着た。

「ねぇジーナ『転移』はどうなの?」

「イメージさえ出来れば簡単よ。
行ったことあるところでしっかりイメージできればね。
手を繫ぎましょう。行くわよ。」

二人は脱衣所に転移した。
ジーナは、この時間なら誰も居ないと思ったからだ。

「えっ!」

テイルが声を出した。
その目線の先には、パンツを脱ぐ途中のキャロライナのお尻があった。

ジーナは、慌てて部屋にすぐさま転移した。


「アハハハハ」

「アハハハハ」

「キャロライナ 気づいたかなぁ~」

「パンツ下ろす所だったね」

「アハハハハ」

しばらく二人は、笑い転げた。

朝食の時にカフェテリアでキャロライナの顔を見て二人はまた吹出して笑ってしまった。

キャロライナは
「何が可笑しいのよ!私の顔になんかついてるとでも言うの!」

「顔じゃないわ。」

「ジーナ!ダメだって」

「何よ!言いなさいよ」


「言ってもいいの?」

「ダメだって、ジーナ、言ったら」

「いいから、言いなさいよ」


「キャロライナはイチゴのパンツ履いてる!」

少し離れた席のユリウス王子がミルクを吹き出した。

キャロライナは、真っ赤になって逃げて行った。

「ほら、言わない方がよかったでしょう。
謝りに行こう。ジーナ」

「うん。」

キャロライナの部屋の前に行くと、キャロライナの泣き声が聞こえてきた。
少し落ちついた頃を見計らって

「キャロライナごめんなさい」
「キャロライナごめんなさい」

ドアの外で二人とも謝った。
すると、ドアが開いて

「そんな所で、大声あげられたら恥ずかしいわよ。
中に入ってよ」

二人は、キャロライナの部屋に、招き入れられた。

「これ、朝ごはん。食べ損なったでしょう」

ジーナがストレージからパンと牛乳とベーコンエッグを取り出した。

キャロライナは、ビックリしてそれを見ていたが

「凄~い、
ジーナあんたさぁ なんでも有りなのね。
あなた達は朝食食べてきたの」

「ううん、まだよ」

「じゃあ一緒に食べましょう。
自分たちの分も、そうやって出せるんでしょ」

「許してくれる?ごめんね」

「ごめんなさい」



「許すもなにも、私はあなた達の家来でしょ。
さぁ食べましょ。」



これを機会にキャロライナとの距離が縮まった気がした。


食べながらキャロライナの話を聞くと、取巻き連中だった娘たちは、強いこの傘の下に居たいだけで、友だちとは呼べない相手だそうで、周りに何人もの取巻きが居ても、孤独を感じてたそうだ。

「私は、本当はテイルのこと蔑む気は無かったんだ。でも、あの集団のトップとしては、そうしないといけない感じがしたんだ。
ジーナにケンカ売ったのもそう。
グループのトップとしての威厳というか、出来ることを見せないと、下の者に示しがつかないのよ。
そうしないと下剋上が起きるでしょ。

でも、今はそんなことしなくてよくなった。
ケンカに負けてせいせいしたわ。
でも、あの恥ずかしいかっこさせられたのは、恨んでるからね。」

「ああ ごめんなさい。」

「もう いいわ 謝らないでよ。
私が家来だし」

「キャロライナ 友だちになろうよ」

「友だち?家来じゃなくて」

「そうよ 友だちよ。家来じゃなくて」

「ん~~ん
 まだしばらくは家来でいいわ」

「どうして?」

「家来の方が楽な気がしてさ。
友だちだと、また演じないといけない気がして。
友だちにして欲しくなったら言うわ。それでもいいかしら?」

「ふむ 構わん構わん
アハハハハ」

「アハハハハ」
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