上 下
16 / 36
第二章

大荒れの結婚式

しおりを挟む
ロベルトの誕生日に合わせて、結婚式の日となった。
15歳のロベルトと20歳のマリーンの年の差婚も話題になったが、マリーンの美しさが、全てをかっ攫っていた。
確かに、にわかロベルトファンもできていたが、マリーンのように家から出るのも大変な状況は、ロベルトには無かった。

世界中から王族や貴族が集まり、二人の結婚を祝福した。

結婚式は恙なく終わり、パレードへと続く
沿道は民衆があふれ返り、馬車は度々停止せざるを得なかった。
予定時間を大幅に過ぎて、二人の馬車は披露宴会場に到着した。

世界中からVIPが集まり、そこで提供される料理に始まり、食器のことから引出物に至るまで、マスコミが事細かに報道し、花を添えていた。

披露宴では次々と豪華な料理が供される中、賓客が次々と祝福の言葉を二人に贈った。

そして、ツンドラ帝国のプチーン皇帝が皇女ピポポタマを伴って、壇上に上がった。
「本日はインディー王家の皆様おめでとう。
わが娘ピポポタマを伴って来たのは、インディー王国と我がツンドラ帝国が、より深き縁を結べればと思ったからだが、少々出遅れたようじゃ。
ハッハッハ。
まぁ、もう一人王子もおるようじゃし、妻は一人と決まったわけでも無いからのう。
ハッハッハ
これからも両国の友好の証と………」

「父上、危ない!」

プチーン皇帝の前に飛び出した皇女ピポポタマの背中に矢が突き刺さり、ピポポタマは崩れ落ちた。

披露宴会場は悲鳴が起こり、大混乱になった。
ロベルトとマリーンは、ジョーンズ王を囲むようにして不測の事態に備えた。

各国の要人が集まる中、有ってはならない不祥事だ。

会場の警備にあたっていた近衛兵が、直ぐに犯人を取り押さえたものの、犯人は毒を飲んで直ぐに息絶えた。

「何ということだ!ピポポタマ、しっかりしろ!
この国の警備はどうなっているのだ!
回復士をよべ。もし娘が死ぬようなことに成ったら、この国ごと消し去ってくれるわ!」

ユウトは、ジーナから抜け出し、ピポポタマに取り憑いた。
矢傷は心臓にも達する程深く刺さり、ピポポタマは今にも死にそうだったが、ユウトの自動回復が発動して、一命をとりとめた。

ピポポタマの記憶をコピーしてみると、彼女はプチーン皇帝と3番目の側室との娘だが、皇帝は自分の娘かどうかを疑っている。
というのもピポポタマの母カバーナは元々は酒場の踊り子で、時々男の相手もして生きてきた女だったからだ。
ある時、たまたま皇帝が立ち寄って、カバーナの姿に魅了されて、そのまま連れ帰り側室としたのだった。

カバーナは、皇帝の側室となってからも男の噂がちょいちょいあがることがあった。

「カバーナ様は、何であのぷくぷくした体型にあのお顔立ちで、騎士からもチヤホヤされるんでしょう」
とメイドたちからも不思議がられていた。

ピポポタマは、母同様容姿には恵まれていなかった。
しかし、母譲りのスキル『魅了』を持っていた。

ピポポタマは、そんな自分を皇帝に娘として認めて貰いたくて、皇族としての嗜みだけでなく、武術も積極的に磨いた。
結果、皇族・貴族の女性では一番の戦闘力を誇り、皇女としてだけではなく、皇帝のボディーガードの役目も負うようになった。
長く一緒に居ることで、皇帝が次第に彼女に心を開いてくれるのが、彼女は嬉しかった。
いつか自分は政略結婚の道具となるだろう。その時もしっかりスキルを使って父のお役に立つ。そうピポポタマは心に決めていた。

ユウトは、ピポポタマから離れジーナの元に戻った。

「ジーナ、悪いが今すぐ入れ変わってくれ」

ユウトは、ジーナの体の支配権を持って、ロベルトの元に急いだ。

「ロベルト!俺に犯人の体を調べさせろ!直ぐにだ!」

「わかった!ユウト」

ロベルトはジーナ(ユウト)を犯人の死体が置いてある部屋に連れて行った。

「人払いだ!ぼくとユ ジーナ以外は、全員外に出なさい」

ユウトは人払いを確認して、犯人の頭に触れて意識を入れて見る。
ジーナに戻れなくなるとまずいのて、同期にならないよう注意深く、記憶を探って行くと、犯人の記憶が流れ込んできた。

彼はケジービというツンドラ帝国で諜報活動を行う組織に属していた。
今回の任務は、自国の皇帝の偽襲撃だ。
皇帝は服の下にミスリルを装備しているとのことで、矢が刺さることは無いと事前に言われている。
たった一本矢を射るだけで、後は逃げればいいだけだ。
なぜそんなことをするかは、俺みたいな下っ端には、教えてくれない。
もし捕まったら、毒を飲んで死なないといけない。
そうでないと、家族が殺される。
俺が失敗して死んでも、家族の生活は、保証されてるから安心だ。

ユウトは男との接続を切ってジーナに戻った。

「ロベルト、コイツはツンドラ帝国の諜報員だ。
プチーン皇帝暗殺は、フェイクで、間違ってピポポタマさんに当ててしまったんだ」

「でも何で自国の皇帝を諜報部員が」

「それは彼には知らされて無かったようだ」

「そうか」

「帝国の皇帝は、自分が襲われることを知ってたのは確かだ。
その上で『この国ごと消し去ってくれるわ!』って言ったんだよ。
あの皇帝は、火の無い所に煙をたてに来たんだよ。」

「戦争を仕掛ける口実作りか」

「そうだよ。回避するには何かと譲歩を迫られるな」

「例えば?」

「国境のいくつかの地域の接収とか、パンチ王子を人質として要求とか、高額の賠償金とか、武装解除とかね。
こちらが飲めない要求ばかりしてくるだろうね。」

「じゃあどうすればいいんだよ。」

「戦争したら勝つ自信が向こうにはあるんだろ。
だったら、その自信をへし折ればいいんだよ。
戦争したら負けるってわからせればいいのさ。」

「でも、国力も軍備力も向こうの方が上だよ。」

「何言ってるのさ?大賢者がこっちに居るんだぜ。
その気になれば、一人で帝国の1つや2つ滅ぼせるんだよ。」

「ああ、そうか。
じゃあまだ子どものジーナを戦わせるのかい?」

「いや ジーナを人質として差し出すんだ。王の孫姫だから、時間稼ぎ位にはなるだろう」

「もし殺されでもしたら………」

「死なないよ、俺がついてるんだぜ。
もしやばかったら、向こうの王宮をちりにしてくるよ。」

「ジーナは、それでいいの?」

「ん そうだな、俺の一存じゃダメだな。
ジーナどうする?」

「自分が戦争止められるなら、なんでもするってさ。
今ジーナと代わるから、本人に確認してみな。」

ユウトからジーナに人格が変わったからか、目に落ち着きがなく、キョドってる。

「ジーナ 大丈夫?
ごめんね。戦争を避ける為に君の力が必要なんだ。」

「うん 戦争は嫌。人がたくさん死ぬから。
ジーナ 戦争なくすため、なんでもするよ。」




招待された各国の賓客は、そそくさと予定を切り上げ、蜘蛛の子を散らすように自国に帰って行った。

襲われ怪我をしたヒポポタマ皇女は、体力が回復するまでとしてインディー国に留まったが、ツンドラ帝国のプチーン皇帝は即時、自国へと帰って行った。

プチーン皇帝襲撃は大きく報じられたが、国内では祝賀行事が続き、マリーン皇太子妃の人気も衰えず、一見何事も無かったかのように思えた。



※※※※※



もっと次々とストーリーを紡ぎたいと思いながら、作者として、納得行く話にしたいと………
更新ペースが遅くなるのをお許し下さい。
ジーナが、どんな子になったら………
ジイジの夢の続きをお楽しみに
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...