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第一章

ロベルトと俺

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頭の中で声がする

「自動回復を始めます。」

徐々に意識がハッキリしてくる。
それと同時になんか違和感がある。

「君は誰?神様?ぼく死んだの?」

え~~~~~!

この体、元々の所有者が生きてる!
まだ生きてる人間に、俺をぶっ込んだのか?
あのおっちょこちょい天使

「ああ、まだ君は、生きてるよ。自動回復って声が聞こえたから、そのうち元通りになるだろう」

「神様ありがとうございます。」

「俺は神様じゃない。
お前が死んだと勘違いして、天使が俺をお前の中に入れたんだ。
でもお前が生きていたんじゃ、俺はここには居られないな。」

「おい、手違い天使のリンダ、続けざまにやらかしてくれたな!
どうすんだよ。この体はちゃんと持主がいるじゃないか。」

………


「もしもし~ リンダ!
なんとか言えよ」


「えっと………これは、手違いじゃないの

う~んと………このほうがきっと、いいのよ。」


「言い逃れはしなくていいから、ちゃんとした器になる人にしてくれよ。
ガキと一つの体に同居は勘弁しろよ。」


「彼はちゃんと死んでたはずなの。でもまだ精神が切り離される前だったのよ。
ちょっとしたタイミングのズレってことですます。
それであなたのスキル自動回復が作用して専有者も一緒に復活したのね。
あなたが入るのがもう少し遅ければ、彼はあのまま死んでたわ。」


「それじゃあその生き返ったぼうやをもう一度ちゃんと天国につれていけよ。」


「今さら無理ですよ。
生き返ったんですから。
シェアハウスだと思って上手くやって下さい。」









「なぁ君、俺はユウトだ。君の名前は?」

「ロベルトです。ユウトさん。」

「ユウトでいい。敬語は無しだ。
周りの人が驚かないように、お前がメインキャラをやれよ。
俺は裏でいいから。」

「ユウト。」

「なんだよ。」

「ありがとう。」

「ああ。生きてて良かったな。
そろそろ目を開けたらどうだ。」



俺(ロベルト)が目を開けると



「へっ? 


ロベルト様!



気がつかれましたか。


生きてるんですよね。



おお神よ!
ロベルト様をお戻しくださりありがとうございます。

奇跡ですわ。
心臓が止まったのに………


旦那様にお知らせしないと………」


バタバタとメイドのリリーは部屋から出て行った。



どうやらロベルトの記憶は自分にも共有されているようだ。
メイドの顔を見ただけで、ちゃんと名前が浮んだ。

ロベルトはインディー王家の三男で、側室だった母のマリアは既に他界していた。
王のジョーンズと正妻のケイトの間に生まれた兄が二人いて、何かとイジメを受けていたようだ。
ロベルトは兄たちにイジメられるのを恐れて、部屋に、引きこもりがちで、病弱者と周りからは思われるよう演出していた。
しかし、気がつくと本当にどんどん体が衰弱していった。

ある日、少し体調が良くてメイドのリリーと庭に出ていた。
すると早速、次男のパンチに見つかった。

「ロベルトのくせに、なんで庭に居るんだよ。
気分わりーな。お前の顔なんか見たくねえよ。」

「ごめんなさい、今すぐ うぐっ」

パンチはいきなり殴りかかってきた。ぼくが倒れるとお腹を蹴ってきた。
お腹を押さえてうずくまると、馬乗りになって顔を殴られた。

リリーが「パンチ様、おやめください。お庭にお連れしたのは私です。
お叱りは私に。」

「そうか?それじゃあ、ここで裸になって見せろよ。
そしたら許してやるよ。」

「兄さんやめてよ。リリーは何も悪くないよ。イジメるのは僕だけにしてよ」

「ゴチャゴチャうるせぇんだよロベルトのくせに」

パンチのキックがみぞおちに入って、息ができない。
庭の端に義母のケイトの笑顔がチラッと見えた。
ぼくはそのまま気絶した。

気がつくとぼくは自分の部屋で寝かされていた。

体のアチコチが痛い。

「リリーごめんなさい。ぼくのせいで君まで………」

なんとか声を絞り出した。

「私のことはお気づかい不要です。
ゆっくりお休みください。」

その日を境にロベルトはベットに伏せたままになった。
リリーに食事も食べさせてもらうようになり。
寝たきりの生活になった。
体もだんだん動かせられなくなってきて、母のマリアの元に召される日を待っていた。

そしてある日、母のマリアが目の前に立った。

「ロベルト、ごめんなさい。辛かったわね。
もう大丈夫。お母さんと行きましょう」

ぼくは母さんと手を繋いで歩き始めた。
だけど、少し歩いたら母さんの姿が消えて無くなって、また一人になった。

そしたら俺=ユウトと天使のリンダの声が聞こえてきたってことか。

「おいロベルト、お前の人生これまではろくでもねえな。
俺がきた以上、このクソみてえな生き方変えてやる。
わかったか!」

「ユウトありがとう。でもそんなこと出来るの?
ユウトさんだって彼女さんを友だちに取られて…」

「お前!見たのか?」

「見たっていうよりか、知ってる感じです」

「俺たちの間じゃ、秘密も無しだな。ハハハだますこともできねぇか。
そうさ、俺もみっともねえ男だよ。
でもな、これからは二人で反撃開始だ!」


父のジョーンズが、リリーと部屋に、入って来た。

「本当に生きてるのか!何でだ!神の力か?ロベルト、わかるか父さんだ!
リリー、医者をよべ。
いや、王家お抱えでは無く、騎士団の医者を連れてこい。
王家のやぶ医者はダメダ。ロベルトは死んだと言った奴だ!信用ならん。」

しばらくして、リリーが医者を連れてきた。
医者の魔法で包まれた。
温かくて気持ちがいい。
そして、体力回復薬を処方された。

医者は「ちょっと王様」と言って父さんを部屋の外に連れ出して、何か話をしたようだ。

「ロベルト、もう大丈夫だ。今まで気づかなくて悪かった。父さんに任せて安心しろ。」

医者は、部屋の水差しをもって部屋から出て行った。

「リリー、しばらくロベルトの世話は他の者にさせる。指示ある迄自分の部屋で待機していなさい。」




父は、私のことをどう思っているのだろう。
側室の子として産まれて、これまではそれほど可愛がってもらった記憶もない。
王様である父にとって、側室が産んだ子どもなんて、死のうが生きようがどうでもいい存在だったんじゃないのか?


「確かに、ちょっと手のひら返しだよな」

「ユウトもそう思うよね。僕だって急に王様から、大切そうに扱われても、なんかこそばゆいし、素直に信用出来ないんだ。」


真夜中になって、俺は行動を起こすことにした。

ロベルトの体の中には居るが、精神体なので眠くなることもないし、疲れることもない。


「ちょっとさ、ロベルト、留守番してろよ。俺のスキルの自動回復は止まるかもと思うけど、もう大丈夫だろ。」

「何?何するの?」

「お前の体からちょっと抜け出してみようかと思ってさ」

「へ~ ユウトそんなことも出来るんだね」

「なんか出来そうな気がするんだ」

「そのまま、帰って来ないとか無いよね。僕一人になるのはもうイヤだよ」

「わかってるって、お前は俺で、俺はお前だろ。
いい子で留守番してろよ」

「危ないことしないでよ。」

「心配すんなって、んじゃあ行くな。」

俺はロベルトの体から抜け出した。
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