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ep3

眷属化

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「まずは、夜鴉から話を聞きたいわ。
そこに居るのはわかってるわよ。」

「………」

〈パック、拘束して〉

パック手から蜘蛛の鉄糸が天井に向って撃ち出された。
鉄糸は、まるで意思があるかのように形を変えながら、夜鴉を追い詰めて捕らえた。

「な なぜ俺のいる場所がわかった。」

「質問するのは、こっちよ。」

「くっ 殺せ」

「そうは、いかないわよ。」

夜鴉は、口の中に仕込んであった自殺用の毒袋を噛み切った。
かっと目を見開き、呼吸が止まった。

その様子を見て、瞬時にシンディが「聖なる風」を吹き付けた。

アイが鉄糸を何本も夜鴉の頭に打ち込んだ。

「天の黒刃は、王様とどんな関係なの?
依頼は、どうやってするの。
靄の配下が、私の暗殺を狙ったけど、依頼主は誰。」

アイが夜鴉の記憶を探る。
アイは、そこで得た情報を念話でパックに送り、パックはその内容をX"エッグスメンバーに転送した。

『天の黒刃』と呼ばれている暗殺者集団は、三つの組織に分かれていて、組織間は何の繋がりもない。
暗殺者=『天の黒刃』と言われているようだ。
夜鴉のいる霧は、代々の王家に仕えている。
霞は、カイザー伯爵家のお抱えで、靄はどこにも属せず依頼があれば、誰彼構わず請け負うらしい。

霧は、毎夜王の寝所に顔を出して指示を受けているそうだ。
霞と靄のシステムは夜鴉は知らなかった。
またパールに誰の依頼で刺客が送りこまれたかも、夜鴉は知らなかった。


「夜鴉は、もういいわ。
パック、彼を眷属にして。
その後アイは、彼を解放してあげて。
夜鴉、死なないでよ。これからも王家に尽くしなさい。」

パックは、夜鴉の口を開けて、生卵を流し込んだ。
アイがそれに続き鉄糸を抜き、拘束も解いた。
夜鴉の体が一瞬光る。
周りから動揺した声があがった。

「夜鴉、スキル『タマゴ』でランクアップしたようね。
あの光 間違いないわ。」

パールがそう言うと、王様が

「夜鴉、ほんとランクアップしたのか」

と夜鴉に問いただした。


「はい、確かに力がみなぎっております。この力ならば、かしらの霧にも引けを取らないと思われます」

「ほう、それ程とはな」

「ただし、同時にパック殿の眷属にもなりました。
かしらに報告して参ります。
生きて戻れれば、パック殿を主として仕えましょう」


夜鴉は、そう一言言って再び姿を消した。








パールは、王様に向き直り何故か一度礼をした。








「ゴールド・エドモンド王には退位していただきます。
2ヶ月後の聖誕祭の日に、わたくしの戴冠式を執り行い、同時にパックとの結婚披露もします。」



「ぐぬっ、パール
わしをどうしようと言うのだ。」




「先王として、奉るつもりです。
王城からはおいおい出ていただきますが、まずは、我が母の別邸でお暮し下さい。」

王様の顔から血の気が引いた

「んあっ カミーラと一緒に暮らせと」



「そうです。第一夫人を差し置いて、他の女とでは、外聞が悪うございます。」




王様は頼むように手を合わせて

「北の塔にでも住ませてくれんかのう。
ワシはそなたの母が最近苦手なのじゃ」

パールは、何時もの仁王立ちポーズだ

「それは、第一夫人お付きの侍女にまで、あなたが手を出されたからでしょう。
『王様は、みさかいのないサルよ』と母は嘆いておりました。
この際に仲直りされては、いかがでしょう。」

王様は、プイッと横を向いて

「わしが、退位はしないと言うたらどうするのだ。
わしの首をハネるのか。」



「そんな恐ろしいことはしません。
パックの眷属となっていただき、命令に従わせるだけです。」


「それも拒否したら」


「拒否は、させません。
そこまでの選択肢は有りません。」


「そうか、それなら仕方ないな」

王様は、そう言うと腰の短剣を抜き自らの首につき刺そうとした。
しかし、短剣は王様の首元に届く前にパールによってはたき落とされた。
そして、パールはゴールド王にそのまま抱きついた。


「ごめんなさいパパ。
パールは、わがままな娘で。
絶対、絶対、この国を、国民の笑顔に満ちたいい国にするから。
それを見届けるまでは、死なないで長生きしてください。」


「パール、脅した次は、泣き落としか。
まぁいい。わしの勝ち目は全て埋められたようじゃな。
お前の言う通りにしよう。」


「ありがとうパパ
それじゃあ、まずその証として、この場に居る全員にパックの卵料理………そうねプルプルを食べてもらうわ。
すっごく美味しいんだから、そしてみんなでスキルアップよ」

パックが作り出すプルプルをX"エッグスのメンバーが王様はじめ、その場にいる近衛兵全員に配る。

女性兵士が顔を赤らめながら手をあげている。

プルプルをその女性兵士に渡したシンディが尋ねると

「わたし卵アレルギーなんです。卵を食べると、全身に発疹がでてその後凄く苦しくなった事がありました。」

「ああ、それなら心配無いと思うわよ。
パックの卵料理は、回復、治癒、解毒、解呪、スキルアップ、細胞活性化 あと何だっけ
とにかくいいことづくめだから。
拒否反応とか無いはずよ、もしもの時は私がヒールしてあげるわよ」

「はい わかりました
聖女様を信じます」

女性兵士は、ためらいもなく一口プルプルを食べた。

「あ 美味しいわこれ」

二口三口とあっと言う間にカップは空になった。

すると、女性兵士の体が光りだし

「ああ 凄いわ。力が湧いてくる。体が軽くなったみたい。
腰の張りも無いわ。」

「アレルギー、出なかったみたいね。おめでとう。よかったわね。肌艶も良くなってるわよ。」

シンディがそう付け加えると
女性兵士は、自分の頬に手を当てて

「うそ こんなに肌がツルツルして張りもあるわ」

うっとりした彼女の表情を見てゴールド王が

「それでは、わしも食するとするか」

そう言ってパックのプルプルに手を付けた。

「おお、これは本当だ。活力が湧いてくるぞ、まるで若返ったようだ」

王様はスキルアップこそしなかったものの、細胞活性化により誰が見ても十歳位若返ったようになった。

王様の言葉をよそに、パックのプルプルを食べた兵士たちが口々に感想を言いあっていて、玉座の間は賑やかだ。

「皆の者、黙れ。
勝手に話をするな。
ここは玉座の間じゃ。」

ゴールド王の一喝で、室内は波を打ったように静かになった。

「して パール
わしは、スキルアップしなかったようだが、なぜじゃ」

パックが、一歩前に進み出た

「それは、私からご説明致しましょう」

パールはパックを見て頷いて

「スキルを持ってる本人の説明の方がいいわよね。パックお願い。」

「では………。
先程女性兵士にシンディが言ってましたように、私の卵料理には様々な効果があります。
そしてその効果は、食べた人にとって一番メリットがあるように作用します。
怪我人なら怪我の治癒、魔力切れなら魔力回復、呪われていれば解呪といった形です。
失礼ながら、王様におかれましては、年齢からくる体の不調がお有りだったのではございませんか。
そういう訳でスキルアップは、残念ながら必ず起きるということでは、ございません。」


〈パック、王様と兵士全員を眷属にして、スキルについて箝口令かんこうれいをひいて〉




〈パール、完了したよ〉



〈みんなは、眷属にされたことに気づいてるの〉



〈気づいてるはずだよ。〉



〈その件も秘密にするように命令しておいてね。〉


〈了解、王女様〉


パールはパックに王女様と呼ばれるのは、嫌だった

〈ちょっとー、念話の時はパールって言ってよ〉


〈ごめん〉

パックは、この時のパールをなぜか遠くの存在に感じていた



「それじゃあ、私たちはそろそろ失礼するわ。
私の戴冠式への段取りお願いしますねパパ。」


「うむ」



パール以下X"エッグスの面々が玉座の間から退出しようとした時に、姉のダイヤと出会った。
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