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第二章

獣人の里へ

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翌朝
ミツルがロビーで待っていると、ゴローナとレイがやって来た。

「おっはよーー ミツル
今日は私の故郷着いちゃうにゃ~」
朝からゴローナはハイテンションだ。

それに反して、レイは目の下にクマを作って、疲れた顔をして
「おはよぅ」
と力ない。

「レイさん、回復魔法使わないんですか?」

「ハハハ 疲れるから人間なんだよ。ぼくは化物じゃないからね。」

なんだか、わかるような わからないような説明だったけど、レイが本当につらそうなので、ミツルはそれ以上は聞かなかった。

太陽が真上にくる頃に一行は獣人の住む里に着いた。

里に着くといきなり、トラの獣人バースが声をかけてきた。

「ゴローナ、やっと俺の嫁になる気になって帰って来たのか?」

「バカね、それが嫌だから、里を出た私が、アンタの嫁になるわけないでしょ」

「なんだと!それじゃあもしかしてそのヒョロヒョロの人間とか」

「そうよ。レイは最高の男よ」

「信じられん。こんな弱そうな奴と。
ゴローナ獣人族のプライドはどこにやった。
コイツが強いとは信じられん」

「バース、あなた相手の強さもわからないの?
インパラ娘でも嫁にすれば」

「ゴローナ、俺のことを馬鹿にするのか、よしじゃあそいつと勝負だ!
俺が勝ったらお前は俺の嫁になれ!」

「遅かったわね。私はもう彼の嫁よ。」

「んんんー それじゃあ、俺が勝ったら、そいつと別れて俺の嫁になれ!」

「あれ?バースは、『嫁にするなら絶対処女』とか言ってなかった。
あんた、もしかして、まだチェリー?」

「うるせぇ、とにかく勝負だ!広場に行くぞ!」

レイは何も話をしないうちに勝手に勝負をさせられることになった。

ミツルは「これだから獣人は脳筋って言われるんだよ」とか言ってる。

広場には噂を聞きつけた人がどんどん集まってきた。

そばに並ぶとレイはバースの脇の下位の身長だ。
見た目は大人と子供見たいだ。
バースは、集まったギャラクシーにボディービルダーのようにポーズをとって見せている。

猫の獣人の女性が「Round1」と書かれたボートを持って回る。

蝶ネクタイの狐男が出てきて

「魔法、忍術何でもあり、殺すのだけは禁止。
相手の降参か戦闘不能で勝負は決めます。
リングアウト、フォール、押さえ込みは無効です。

両者コーナーへ

始め」

カーン ゴングが鳴った

バースは、仁王立ちで手をこまねいている。

「いいぜ、最初はお前にやらせてやる」

余裕の表情だ。

レイは『剣気』を飛ばした。
バースはそれに押されて半歩後ろに下がった。
バースから余裕の表情は消えた

「ガオー」

耳をつんざく咆哮で、周りの空気まで震える。

レイは『瞬足』でバースの懐に入り剣を横に払う。

バースは、腕をクロスしてそれを受ける。
普通なら腕が切り落とせるはずだが、身体強化か何かだろう「キン」と金属音がした。
バースがその鋭い爪で襲って来るのを『瞬足』でステップバックで距離を取ると、

「俺もできるぜ」
バースが瞬時に距離を詰めて来た。

『瞬足』と同じようなスキルが有るのだろう。
殺気が膨らむのを感じて、結界でガードをした。

「ガツンガツン」と衝撃音がする。

「ファイアー」を10発お見舞いするとやはり腕をクロスしてガードされた。
続けざまに「サンダー」も連発してお見舞いした。

これにはガードのしようが無いのか、効かないのかわからないが、バースはかまわず結界への攻撃を再開した。

「泥人形」
バースの体を泥で覆い尽くす。
「ゴーレム」
地面に手をつき、泥人形で型どったバースのコピーゴーレムを召喚した。

「ピキピキピキピキ」
バース泥人形に細かいヒビが入り砕け、バースが出てきた。

ゴーレムと力比べだ。

そのバースの頭を水で覆う。

バースはゴーレムを投げ飛ばしたが、苦しそうに息をゴボツっと水の中に吐いた。

「水牢」頭だけでは無く、3m角の水の結界に閉じ込めた。

バースは苦しそうに、両手で縁を叩いている。

オマケとばかりに、水牢ごと空中に浮かせてから、ぐるぐる回転させながら、上下左右に振り回した。

2分位して地上に下ろし術を解除すると、ボロ雑巾のように力なくぐったりしたバースが流れ出てきた。

「バース戦闘不能とみなし、勝者レイ」

レイはすぐにバースに回復魔法を施した。

「ゲホゲホゲホ」バースは咳き込みながら、水を吐き出した。

少し落ち着いたところで
「俺の完敗だ。何もできなかった。」


「もうつきまとわないでよ。私は、レイの奥さん!人妻なのよ!」


「わかったよ。もうゴローナのシッポは追わないよ」





「ゴローナ」「ゴローナ」
ギャラリーの中から二人の獣人が出てきた。

「ママ パパ」
ゴローナが二人に飛びついた。

「おかえりゴローナ、素敵な人を見つけたのね。」

「獣人以外は、認めん!
父さんは、そう言いたかったがな。
これほどの人だとはなぁ。認めざるをえんな。」

「パパありがとう。
レイはあれでも、実力の半分も出してないのよ。
大賢者なのよ。凄いでしょ」

するとゴローナの父親が、ギャラリーに向かって

「皆さん、わが娘ゴローナが夫となった人と里帰りしてくれました。
今宵は集会所にて、宴を開催したいと思います。
よろしくおねがいします。」

「それじゃあ、ぼくも食材を」

レイはそう言うと、ストレージからワイバーン、オークキング、デーモンバッファローを取り出した。

ギャラリーがそれを見て歓声が湧いた。

「これは大物ね。腕がなるわ」ゴローナの母親が腕捲りをした。





レイとゴローナは、ひな壇に座らされ、たくさんの人から祝福をされた。

宴たけなわの時に、一人の女性がゴローナの所に来た。

「ゴローナ、あなた本気で人間の子どもを産むつもりなの?
私みたいな半獣人を」

その人を見ると、顔は人でも鋭い犬歯があり、手には肉球が有って、シッポは申しわけ程度の長さだ。
体つきも獣人のガッシリ感は無く華奢な女性だ。

「メラニー姉さん。あなたは素敵な女性よ。なんでそんな自分を卑下するようなことを。」

「私は人間なら人間、獣人なら獣人らしく産まれたかったわ。」

「私たち獣人は、元から半分ケモノって言われて、人間からは蔑まれてるじゃない。
私は自分の子供が、あいの子とか、混血とか、半獣人とか言われようと構わないわ。」

「あなたは、それでいいかも知れないけど、子供は親を選べないのよ。そしてどんなふうに生まれるかも選べないのよ。
産んだあなたを、そして自分の身の上を恨むかも知れないわよ。
それでもいいのね。」

「私の夫は『穢れた子』として産まれて、母親に何度も殺されかけた人よ。
そして彼が7歳の時に、彼を捨てていなくなったの。
彼はそれでも親を恨んではいないわ。」

「そうなのね
ゴローナは、覚悟してるのね。」

「レイは、素敵な人よ、彼の子を産みたいわ。
なかなか子どもが出来ないけど」

「それなら確実とは言えないけど、人間の子を妊娠しやすくする方法は有るわよ。
普通は、妊娠したくないからやらないけどね。」

「そんな方法があるの!
教えて、メラニー お願い」

「まず野菜を食べること。
獣人は肉食中心で体が酸性なの、それで人間の種は受精する前に負けてしまうのよ。」

「それだけ?」

「目標は肉と同量の野菜やフルーツよ。」

「え~ そんなにぃ~
イチゴ一個とかじゃだめ?」

「それと、愛し合う時は、スライムローションにレモン果汁を数滴混ぜることよ。」

「ローションとか無くても私大丈夫だけど」

「あなたの酸性の強いラブジュースが問題なのよ。それが中和されないとダメってことよ」


その時誰かが叫んだ
「おい、あれを見ろ!火山の噴火か?」

東の空が真っ赤になり、巨大なキノコ雲が湧き上がっていた。


※※※※※※※

次話より新章となります。

レイは、運命に翻弄されながらも、悩みながら生きて行きます。

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