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第二章

牛と豚

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「ギルドマスターのオージンです。
今回のスタンピードに関しまして、皆さんのご活躍により○✕△□○✕△□
よってレイをSランクと認定いたします。
では『おめでとう』と乾杯のご唱和をおねがいします。」

「おめでとう」

「おめでとう」
「おめでとう」

『ワイバーン焼鳥』は大好評で祝宴は盛り上がる。
歌う者もいれば、踊る者もいる。
みなレイを称え、感謝し、祝宴は遅くまで続いた。
レイは、『ワイバーン焼鳥』を一羽分位たいらげた。

レイは、宴の夜から再び『食っては、寝る』超成長モードに入った。
3日目の夜イレーヌがベッドに入ってみると、もう背丈が自分と同じ位に感じた。
日に日にレイの身体は成長して、10日目にはたくましい青年となっていた。

イレーヌは、あの日から毎朝観察を続けていた。
日に日に大きく育つそれは、今朝も天を突き上げるばかりになってる。

この日イレーヌはそれに触れてみたい衝動に勝てなかった。

そっと握ってみる

ドクンドクンと拍動している

イレーヌの鼓動も早くなってる。

「イレーヌ」

声をかけられ、ハッとしてみると、レイと目があった。

ヤバイ。痴女決定だ!
なぜか、レイの視線に身体が固まり、手も離さずに、握り続けていた。

イレーヌはレイにベッドへと引っ張りあげられた。

レイの顔が近づいてきた。

レイの唇がイレーヌの唇に重ねられ、イレーヌはもう何も考えられなくなった。



チュンチュンチュン



シーツに赤くシミが残された。

やっぱりレイがわたしの王子様だったんだ。

イレーヌは、身も心もこの時は幸せに包まれていた。



「あれっ?レイさんのお兄さんじゃないですよね」

「本人ですよ」

「どうして急に大きく…」

「イレーヌと愛し合える体に早くなりたいと望んだら、こうなりました。」

「なるほど~さすが大賢者ですね。
昨日はじっくりお楽しみですね。」

イレーヌは、真っ赤になってうつむいていた。

「いや 昨日じゃない。今朝だよ」

「あっ そ そうですか
それはそれは」

「やめてよレイ恥ずかしいわ」
イレーヌは、レイの服をつまんでもじもじしている。


二人は朝食を済ませると、冒険者ギルドへと出かけた。

恋人繋ぎで手を繋いだままギルドに入って行くと、注目を集めてしまった。

先日の調査チームのメンバーだった『キッスは目にして』の女性3人に囲まれた。

「レイさん?よね~
子どもだったのに、なんで?」

「イレーヌと愛…むぐぐぐく」
レイは、イレーヌに口を塞がれた。

「レイは、大賢者だから、大人になりたいと思えば、なれるのよ」

「へえ~ 若返りも成長も自由自在なのね」

「ねぇレイさん 私ともつき合わない?」

一人の娘がレイの腕にすがるようにして、胸を押し付けた。

「ブリジット抜け駆けしないでよ、レイさん私とつき合いましょうよ」

「まあ、マリクレールまでズルい。わたしよ彼とつき合うのは」

イレーヌは女たちを引きはがしにかかるが、なかなか埒があかない。

「私がぁ~!今朝!
彼の女になったのよ!
あなたたちは、引っ込んでてよ!」

イレーヌは、言ってしまってから真っ赤になった。

「保護者じゃなかったの?」
「親子どんぶり?」
「近親相姦?」

「違うわよ、レイと私は赤の他人よ。
親戚でもないわ。
たまたまレイの親から訳あって預かったのよ。
年の差が有ったけど、だんだん彼を好きになって……
とにかく、今、レイは私の恋人よ。
わかった。」

「そう。
でも   そんなこと
どーでもいいわ。」

「そうよ
どーでもいいわ」

「理由にならないわよね」

「へっ?」

「イレーヌさん あなたが恋人宣言したからって、彼はあなただけのものじゃないってことよ」

「彼に恋人が何人いようがなにも不思議じゃないわ。」

「彼女になったって言えば、独り占めできるとでも思ったの?図々しいわね。」

「イレーヌを イレーヌを
いじめないでよ」

「いじめてないわよ。
わたしたちもレイさんと遊びたいのに、イレーヌさんがじゃまするから、困ってるのよ」

「そうよ。みんなで仲良くしましょうよ。」

「みんな一緒の方が楽しいわよ。」

「そうかなぁ~」

「そうよ、この5人でパーティ組みましょうよ」

「パーティは三人迄じゃないの?」

「5人ならツートップをベースに攻撃型の2-2-1とか防御型の2-1-2の布陣も組めるでしょ」

「レイさん一人いれば、どんな敵が来ても関係ないかも知れないけど、
パーティメンバーで力を合わせて、足りない所を補い合って戦うのも、良いものよ」

「ねぇ イレーヌさんも、いいでしょ。一緒にやろうよ~」

イレーヌは、プイって横を向いて返事をしないつもりのようだ。

「う~~ん それじゃあ、試しってことで、どうかなぁ」

「そうしよう」
「そうしましょ」
「決まりね」

レイは両脇を抱えられて、受付カウンターに連れて行かれた。

「ゴローナさん こんにちは」

「えっ?どなたでしたかにゃ?
え~~~ レイさんにゃの?」

ゴローナさん、レイが青年になったら、にゃ語尾になった?

「それで、私たち『キッスは目にして』と『イレーヌとレイ』は合体して一つのパーティになります。」

「え~~~ いいにぁ~
それで、パーティの登録名は?何かにゃ~」

「はい はぁ~い」

「ブリジットさん」

「『レイの女たち』がいいです」

「ちょっとそれじゃあ直接的すぎるわよ『レイのエンジェル』なんてどう?」

「マリクレール エンジェルはどうかと思うわ、レイは本物のエンジェル知ってるんでしょ。
『平和統一連合』はどうかな」

「ケリー そんな宗教団体みたいな名前勘弁してよ。」

「イレーヌさん、何かいい案なぁ~い。
この前の作戦中とかズバズバ決めてたじゃない」

イレーヌは、まだむくれてる

「あの~ぼくは、5人だから 『ペンタゴン』なんてどうかなぁと思って…」

「あっ それいい」
「うん 悪くない」
「決まりね」

みんなの視線がイレーヌに集まると

「いいんじゃない。レイが決めたんなら」
ちょっとつっけんどんだ

「はい、それではパーティ『ペンタゴン』承認・登録するにゃ
それで早速依頼こなすのかにゃ?」

「オークとかデーモンバッファローとかないですか?」

「豚肉牛肉狙いなんですにゃ。4人の女に肉食系男子。全部食べ放題だにゃあ
ダンジョン、R333はどうかにぁ」

「どんなダンジョンなの?」

「フロアは1階だけなんだけど、ボス部屋へのルートが333通り有るんにゃ。
それから3日毎に、ルートが変更されるんにゃ。
つまり3日以内にボス部屋に行かないと、また最初からと同じにゃ」

「簡単そうだな」

「えっ?そうなの?」

「今夜はステーキだぁ~
ゴローナの分ももって帰るからね」

『ダンジョンR333』へは、走って1時間ほどで到着した。

ブリジット、マリクレール、ケリーの三人がゼーハー苦しそうだ。

「レイさんこの前みたいに、一瞬でピッって移動出来ないの」

ブリジットがそう言うと
マリクレールが

「まさか、本当に走らされると思わなかったわ」

「こんなに走ったのは、学院生以来よ。
なんで馬車使わないのよ」

とケリーも同調すると
イレーヌが

「あんたたち冒険者のくせに体力無いのねえ。情けない。
普段ラクしすぎよ。」

「ここ来るの初めてだから………一度行った所なら『転移』使えるんだけど、ごめんなさい。」

「レイさん謝らなくていいわよ。それじゃあ突撃しましょう」

「デーモンバッファローに当たるといいわね。」

「私はオークがいいなぁー」

「イレーヌとブリジットはどっちがいいの?牛?豚?」

「レイさん、なんか好きな方選んでって と聞こえるんだけど?」


「もちろん、そうだよ。
牛ルートなら左から3つ目の坑道に入って、最初の二又を左
その先の十字路を直進して50m進むと右上に上ってゆく所があって、その先の下り坂の手前に、人一人やっと通れそうな横穴に入ると、広間に出るんだ。それから……
あれっ?みんなついてきてる?」

レイが見回すと、イレーヌはしれっとしてるけど、他の3人は、ポカンとしている。

「元 キッスは… の三人、こんなんでいちいち驚いてるなら、レイの相手は務まらないわよ」

イレーヌは、自分もドキドキしながらも、先輩風を吹かせた。

「牛コース行きましょうよ。私もビフテキご無沙汰だから」


※※※※※※※※※※
この先ちょっとエッチな展開も………
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