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噂の皇女様〜アラン視点〜
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私、アラン・ブルーバードは王宮に来ていた。
他でもないこの帝国唯一の皇女シャーロット・シンフォニア様の家庭教師に抜擢されたからだ。
誰もあったことの無いシャーロット皇女殿下についての噂は社交界では二つに分かれていた。
「わがまま皇女」という噂と「溺愛されてる深窓の姫君」という噂だ。
私はどちらも話半分で聞いていたがどちらかと言うと後者だと思っている。
まず、皇帝と共に姿を見せる皇太子でありシャーロット皇女殿下の兄であるカイル殿下が「シャルは天使」と公言しているからだ。
それに、たまに仕事で王宮に来るとメイドや次女たちが「今日も皇女さまは可愛かった」などとキャッキャしている。
だが断定はいけないと思い今までどっちにもなびかなかった。
今日、真相がわかると思うとかなりテンションが上がってきた。
もっとも、私の教える勉強についてこられるかどうかは分からないが…殿下は5歳だが皇帝陛下によると既に高等部くらいの知識はあるとの事。
それがほんとうなら問題ないだろう。
私はメイドに案内されて皇女殿下の部屋にたどり着くとノックをして声をかけた。
「失礼致します皇女殿下。本日より皇女殿下の家庭教師に抜擢されましたアラン・ブルーバードでございます」
中からは「どうぞ」という少し舌っ足らずな声が聞こえてきた。
失礼しますと声をかけ扉を開ける。
「はじめまして先生。シンフォニア帝国が皇女シャーロット・シンフォニアでございます」
見事なカーテシーとともに迎えてくれたのは噂の皇女殿下。
「ご丁寧にありがとうございます皇女様」
私は軽く頭を下げると教材を取り出す。
「まあ!私、早くお勉強をしたかったんですのよ!」
目を輝かせ席に着く皇女殿下は私の理想の生徒そのままだった。
皇帝陛下の言っていた通り智識が豊富で私でも驚いたほどだ。
同時に分からないことはどんなに些細なことでも聞いてくる好奇心も持っている。
私はすっかり皇女殿下に魅了されていた。
そんなこんなで勉強が終わり帰る時も美しいカーテシーで見送ってくれた。
私が上機嫌のまま廊下を歩いていると不意に笑みを含んだ声をかけられる。
「どうだったうちのシャルは?」
聞き覚えのある声に慌てて振り向き臣下の礼をとる。
声の主…皇太子様は軽く手を上げるとニコニコ顔で続ける。
「社交界では色々噂が流れているだろう?君からしてシャルはどう見えたかな?」
探るような言葉に私は本心から答える。
「それはもう聡明で美しい素晴らしいお方です。好奇心や向上心なども文句なしで理想の生徒ですよ」
皇太子様は「だよね」と笑いながら去っていった。
わたしは、これから週に何度か皇女様に勉強を教えることになる。
…次の教師のが楽しみだ、なんて考えながら帰路を辿るのだった
他でもないこの帝国唯一の皇女シャーロット・シンフォニア様の家庭教師に抜擢されたからだ。
誰もあったことの無いシャーロット皇女殿下についての噂は社交界では二つに分かれていた。
「わがまま皇女」という噂と「溺愛されてる深窓の姫君」という噂だ。
私はどちらも話半分で聞いていたがどちらかと言うと後者だと思っている。
まず、皇帝と共に姿を見せる皇太子でありシャーロット皇女殿下の兄であるカイル殿下が「シャルは天使」と公言しているからだ。
それに、たまに仕事で王宮に来るとメイドや次女たちが「今日も皇女さまは可愛かった」などとキャッキャしている。
だが断定はいけないと思い今までどっちにもなびかなかった。
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もっとも、私の教える勉強についてこられるかどうかは分からないが…殿下は5歳だが皇帝陛下によると既に高等部くらいの知識はあるとの事。
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私はメイドに案内されて皇女殿下の部屋にたどり着くとノックをして声をかけた。
「失礼致します皇女殿下。本日より皇女殿下の家庭教師に抜擢されましたアラン・ブルーバードでございます」
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失礼しますと声をかけ扉を開ける。
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見事なカーテシーとともに迎えてくれたのは噂の皇女殿下。
「ご丁寧にありがとうございます皇女様」
私は軽く頭を下げると教材を取り出す。
「まあ!私、早くお勉強をしたかったんですのよ!」
目を輝かせ席に着く皇女殿下は私の理想の生徒そのままだった。
皇帝陛下の言っていた通り智識が豊富で私でも驚いたほどだ。
同時に分からないことはどんなに些細なことでも聞いてくる好奇心も持っている。
私はすっかり皇女殿下に魅了されていた。
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私が上機嫌のまま廊下を歩いていると不意に笑みを含んだ声をかけられる。
「どうだったうちのシャルは?」
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「それはもう聡明で美しい素晴らしいお方です。好奇心や向上心なども文句なしで理想の生徒ですよ」
皇太子様は「だよね」と笑いながら去っていった。
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