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7・1 第2の証人

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「メラニー・クリスハイル!」

「幼くして亡くなったはずのメラニー嬢が、生きていたということか?」

「確かにあの青い髪は、クリスハイル家に受け継がれる天恵『魔力堅固』の証だろう!」

 ロイエの妹を名乗る女性の登場に、展覧会の来場者は騒然としている。
 誰よりも動揺しているのは、間違いなくロイエだった。

「孤島に隔離していたメラニーが……?」

 ロイエは血走った目でティアナを睨みつける。

「ティアナ! なぜお前がメラニーの居場所を知っているんだ。どうしてメラニーを連れ出した!?」

 ロイエの言葉を聞き、メラニーは声に怒りをにじませた。

「あなたは彼女の名を呼んでも、姿を見ても、まだわからないのですか! その姿は……ティアナは私たちの大切な乳母です!!」

「ティアナが俺たちの乳母!?」

 ロイエは信じられないように、自分と同じ年ごろのティアナを見た。

「そう言われてみると、乳母はティアナという名だった気がする。だがあいつは俺の母上と同じくらいの年で、しかも老婆のように醜い姿だった。ここにいるティアナはどう見ても、俺と同じくらいの年齢だ!」

 ロイエの言い分に、エルーシャが静かに答える。

「ティアナが老いた姿になっていたのは、黒魔術を施されていたせいよ。そして今は、姿が変わる魔病を起こしているわ」

「姿が変わる魔病!? それで俺と同じくらいの見た目に若返っているということか!?」

 エルーシャはティアナから、魔病の治癒をしないでほしいと頼まれていた。

(なにか事情があると思っていたけれど、今ならわかるわ)

「ティアナはロイエの目を欺くため、本当の姿を隠したかったんでしょうね」

「俺を騙していたのか!」

「彼女は黒魔術で人質となったメラニー様の命を守ろうとしただけ。どうしてそんなひどい目に遭わされたのか……あなたはよく知っているんでしょう?」

 ロイエの言い訳より早く、エルーシャは彼の前に歩み出た。

「実は私、自分の婚約者のことをもっと知りたくて、クリスハイル家について調べてみたの。楽しかったわ。あなたについても色々なことがわかったし」

 ロイエは顔をひきつらせた。
 対してエルーシャは優美な笑みを浮かべる。

「もちろんそれだけでは足りなかったわ。私が荒魔竜を倒した英雄の姿を見たわけではないから。でもこれで私が一番知りたかったことを、第2の証人であるティアナに話してもらえる」

 静まり返る王宮のホールに、ティアナの声が朗々と響いた。

「荒魔竜を退治した青髪の人物はロイエ・クリスハイルではありません。彼の双子の兄、ノアルト・クリスハイルです」

 会場内に息をのむ気配が満ちる。

「ノアルト・クリスハイルって、あの……!」

「ロイエの双子の兄、性悪だと噂だったクリスハイル家令息の名だ!」

「でもおかしいわ! 彼は4年前、嫌がる妹を魔獣が巣食う森へ連れて行き、2人とも命を落とした。有名な話よ」

「しかしメラニー嬢は生きている。その後に行方不明となった乳母まで……」

 エルーシャは胸の前で両手を重ね、握りしめた。

(騎士様……やっと、あなたの名を呼べるのね)



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