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47・みんな気づかない
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タリカが一生懸命ずれた気遣いをしていると、開いた扉の隙間から三角帽子のナイトキャップをかぶったエアが眠そうに目をこすりながら飛んでくる。
「イリーネ様、タリカ様も……こんな夜中に何かあったのですか」
イリーネは寝台の中にもぐりこんだまま鼻声で呟いた。
「言いたくない」
「イリーネ様……?」
エアは心配そうに寝込んでいるイリーネに近づくと、タリカがエアの耳元で小さく耳打ちする。
エアはとろんと眠そうな瞳をひん剥いてぎょっとした。
「ま、まさか……私に念願のまご、っ」
言葉の途中でエアの上半身を捕獲したタリカは、若干浮かれている妖精にきつく注意する。
「エアさん、期待に胸躍らせている場合じゃないの! イリーネもはじめての気持ちで戸惑っているんだから」
(失恋さらしてる私って……)
妙な誤解が広まっているとは知らず、イリーネはブランケットをかぶりなおすと鼻声で訴えた。
「二人とも、お願いだから。私のことはレルトラスに何も言わないで」
タリカとエアは顔を見合わせる。
「でもねイリーネ。大切なことだから、私はレルトラスさんときちんと話したほうがいいと思うよ。いつでも相談してねー」
「イリーネ様……私はイリーネ様を応援していますので。ぜひ、その……多少強引でもよろしいのではないかというのが本音でして」
「エアさん、本音はしまって行くよー」
誤解に気づかないまま、二人は部屋を去って行った。
(これから二人とも、私に気を使うだろうな……。レルトラスへの気持ち、ばれたし)
イリーネは枕に顔をうずめると、叶わない思いを自分なりになだめようと試みる。
(考えれば、レルトラスのサヒーマでいるのも悪くないんだよね。安全な場所で、みんなと一緒に楽しく暮らせて……。うん、悪くないよ)
そう自分に言い聞かせていると、扉の奥からタリカとエアのひそめく声が聞こえてきた。
「レルトラスさん、部屋にもいないし……いつ帰ってくるつもりかなー?」
「あのお方のことですから心配することもありませんが……いえ、心配はありました。姿が見えない場合、被害者のいる可能性が常に付きまとうのです」
「やっぱり探しに行く?」
「いえ、寝ます。被害者も心配ですが、睡眠不足の私のお肌はもっと心配です。レルトラス様には、明日問いただしましょう!」
「エアさんに私も賛成ーふあぁ……眠いもんね。じゃあ、おやすみなさーい」
二人の気配が遠ざかり、扉の閉まる音が響く。
(レルトラス、まだ帰ってきてないんだ)
イリーネは自分の身勝手な感情から唐突に突き放してきたレルトラスのことを思い出すと、途端に申し訳なくなった。
(私、レルトラスの気持ちが自分の思い通りにいかないからって、拒絶するような逃げ方してた……。あいつはずっと、母さんのことを思い出して不安定になっていた私のことを、慣れないながらも励ましてくれたのに)
イリーネはレルトラスのやさしさにまた泣けてきて、そんな自分に呆れた。
(私、飼育が難しいサヒーマより手間かかってるな、絶対)
イリーネは反省するとレルトラスを迎えに行くと決め、気持ちを切り替えて寝台から出る。
扉を使えばエアとタリカに勘付かれる気がして、部屋の窓に手をかけた。
(「さっきはごめん」とか言って、連れて帰ろう。このままだとあいつが寝不足になる)
イリーネは音をたてずに窓から出ると、夜も更けた月照る平原へ静かに進む。
しかし、レルトラスは別れた場所にいなかった。
(エールでも見に行ったのかな)
「イリーネ様、タリカ様も……こんな夜中に何かあったのですか」
イリーネは寝台の中にもぐりこんだまま鼻声で呟いた。
「言いたくない」
「イリーネ様……?」
エアは心配そうに寝込んでいるイリーネに近づくと、タリカがエアの耳元で小さく耳打ちする。
エアはとろんと眠そうな瞳をひん剥いてぎょっとした。
「ま、まさか……私に念願のまご、っ」
言葉の途中でエアの上半身を捕獲したタリカは、若干浮かれている妖精にきつく注意する。
「エアさん、期待に胸躍らせている場合じゃないの! イリーネもはじめての気持ちで戸惑っているんだから」
(失恋さらしてる私って……)
妙な誤解が広まっているとは知らず、イリーネはブランケットをかぶりなおすと鼻声で訴えた。
「二人とも、お願いだから。私のことはレルトラスに何も言わないで」
タリカとエアは顔を見合わせる。
「でもねイリーネ。大切なことだから、私はレルトラスさんときちんと話したほうがいいと思うよ。いつでも相談してねー」
「イリーネ様……私はイリーネ様を応援していますので。ぜひ、その……多少強引でもよろしいのではないかというのが本音でして」
「エアさん、本音はしまって行くよー」
誤解に気づかないまま、二人は部屋を去って行った。
(これから二人とも、私に気を使うだろうな……。レルトラスへの気持ち、ばれたし)
イリーネは枕に顔をうずめると、叶わない思いを自分なりになだめようと試みる。
(考えれば、レルトラスのサヒーマでいるのも悪くないんだよね。安全な場所で、みんなと一緒に楽しく暮らせて……。うん、悪くないよ)
そう自分に言い聞かせていると、扉の奥からタリカとエアのひそめく声が聞こえてきた。
「レルトラスさん、部屋にもいないし……いつ帰ってくるつもりかなー?」
「あのお方のことですから心配することもありませんが……いえ、心配はありました。姿が見えない場合、被害者のいる可能性が常に付きまとうのです」
「やっぱり探しに行く?」
「いえ、寝ます。被害者も心配ですが、睡眠不足の私のお肌はもっと心配です。レルトラス様には、明日問いただしましょう!」
「エアさんに私も賛成ーふあぁ……眠いもんね。じゃあ、おやすみなさーい」
二人の気配が遠ざかり、扉の閉まる音が響く。
(レルトラス、まだ帰ってきてないんだ)
イリーネは自分の身勝手な感情から唐突に突き放してきたレルトラスのことを思い出すと、途端に申し訳なくなった。
(私、レルトラスの気持ちが自分の思い通りにいかないからって、拒絶するような逃げ方してた……。あいつはずっと、母さんのことを思い出して不安定になっていた私のことを、慣れないながらも励ましてくれたのに)
イリーネはレルトラスのやさしさにまた泣けてきて、そんな自分に呆れた。
(私、飼育が難しいサヒーマより手間かかってるな、絶対)
イリーネは反省するとレルトラスを迎えに行くと決め、気持ちを切り替えて寝台から出る。
扉を使えばエアとタリカに勘付かれる気がして、部屋の窓に手をかけた。
(「さっきはごめん」とか言って、連れて帰ろう。このままだとあいつが寝不足になる)
イリーネは音をたてずに窓から出ると、夜も更けた月照る平原へ静かに進む。
しかし、レルトラスは別れた場所にいなかった。
(エールでも見に行ったのかな)
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