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12・完全に呪いの装備
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レルトラスはふと思案顔になり、再び唐突に部屋を出て行った。
扉の閉まる音でエアが我に返ると、戸惑った様子でイリーネのそばへ寄ってくる。
「あの……指輪を気に入っていただけたということは、まさか、ありえないとは思いますが、勘違いだとは思いますが、誤解だとは思いますが、イリーネ様はレルトラス様のことを……」
イリーネは嬉しそうにはめてもらった指輪を撫でる。
「あいつ、気前いいところもあるね。これ、いくらくらいになるかな」
イリーネの気軽な物言いに、エアの顔は人前にさらすべきではないほど驚愕した。
「イリーネ様、まさかレルトラス様からの心のこもった贈り物を……!」
「高く売れそうだね」
上機嫌のイリーネにエアはきんきん響く声で抗議する。
「イリーネ様、それは換金する類の品ではありません! その指輪は王家に伝わる婚約指輪なのです!」
「ん?」
聞き間違いかと思い、イリーネは何度もまばたきをした。
そばで見せてくれるエアの迫力に満ちた顔芸に不安を覚え、表情を曇らせる。
「……こ」
「婚約指輪です!」
エアに続き、今度はイリーネが顔を驚愕に歪める。
(重いんだけど!)
「で、でも……まぁ、品物は道具屋に持っていけば、平等に査定されて金額がつくだろうし……」
狼狽しながらもかろうじてそう言い訳をしたが、重量級の意味を知ったまま指輪つけているほどたくましい心ではないため、イリーネは速やかに外そうとした。
しかし指にはまった指輪は、きつくもないが絡みつくようにしっかり収まっている。
「あれ、外れないな……」
指輪外しに難航しているイリーネの様子を見て、エアが長年の勘を働かせた。
「王家の婚約指輪に、外せないなどの付属能力はなかったはずです。もしかすると、レルトラス様の魔術では?」
「魔術? 確かに妙な力を感じるけど、それって高価な付属能力じゃなくて、あいつが余計なことをしただけ?」
「おそらくは……少し見せて下さい」
イリーネが手を広げると、エアは確認するため側まで飛ぶ。
そして両手で指輪に触れた瞬間、指輪とエアの間に雷撃のような閃光が弾けた。
「ひゃあっ!」
あっけなく壁際まで吹き飛ぶエアに、イリーネはスカートを翻して駆け寄る。
「ちょっと、エア! どういうこと?」
「し、痺れます……」
エアは味わった魔術により、へなへなと床に倒れた。
「おそらく、指輪を与えた者以外は外せず、他者が触れると吹き飛ばされる術がかけられています」
「えええっ!」
イリーネは叫びながら辺りを見回すが、肝心の男がいない。
(なんだっけ、あいつの名前。なんか気に食わない、微妙に長い……そうだ)
「レルトラス、どこにいるの!」
大声で呼びつけると、ほどなく扉が開かれる。
「イリーネ、俺を呼ぶようになったのは懐いて来た証かな。ちょうど良かった、マイフから君へともらった……」
「そんなことより、これ!」
イリーネはレルトラスの言葉を遮ってずんずん近づき、指輪のはまった手を威勢よく振り上げる。
「あんた、この指輪に変な魔術かけたでしょ! 迷惑なんだけど!」
混血の悪魔は冷酷な微笑を浮かべる。
「迷惑ではないよ。失くしたり奪われたりしないように、少し力を込めただけだから」
「私は迷惑。すぐにとって!」
「つけておいた方がいいよ。俺にはイリーネの居場所がわかるようにしてある」
「……居場所が、わかる?」
「そう。君が逃げたり迷子になったら迎えに行けるようにね」
「げっ、完全に呪いの装備じゃない!」
「珍しいだろう。そうだ。マイフに君の世話する話をしたら、これをもらったんだよ」
レルトラスは全て自分本位に解釈すると、サヒーマに良く似合いそうな鈴付きの首輪を差し出す。
「いらないし!」
イリーネは罪のない首輪を乱暴につかむと、八つ当たりの限りにぶん投げた。
扉の閉まる音でエアが我に返ると、戸惑った様子でイリーネのそばへ寄ってくる。
「あの……指輪を気に入っていただけたということは、まさか、ありえないとは思いますが、勘違いだとは思いますが、誤解だとは思いますが、イリーネ様はレルトラス様のことを……」
イリーネは嬉しそうにはめてもらった指輪を撫でる。
「あいつ、気前いいところもあるね。これ、いくらくらいになるかな」
イリーネの気軽な物言いに、エアの顔は人前にさらすべきではないほど驚愕した。
「イリーネ様、まさかレルトラス様からの心のこもった贈り物を……!」
「高く売れそうだね」
上機嫌のイリーネにエアはきんきん響く声で抗議する。
「イリーネ様、それは換金する類の品ではありません! その指輪は王家に伝わる婚約指輪なのです!」
「ん?」
聞き間違いかと思い、イリーネは何度もまばたきをした。
そばで見せてくれるエアの迫力に満ちた顔芸に不安を覚え、表情を曇らせる。
「……こ」
「婚約指輪です!」
エアに続き、今度はイリーネが顔を驚愕に歪める。
(重いんだけど!)
「で、でも……まぁ、品物は道具屋に持っていけば、平等に査定されて金額がつくだろうし……」
狼狽しながらもかろうじてそう言い訳をしたが、重量級の意味を知ったまま指輪つけているほどたくましい心ではないため、イリーネは速やかに外そうとした。
しかし指にはまった指輪は、きつくもないが絡みつくようにしっかり収まっている。
「あれ、外れないな……」
指輪外しに難航しているイリーネの様子を見て、エアが長年の勘を働かせた。
「王家の婚約指輪に、外せないなどの付属能力はなかったはずです。もしかすると、レルトラス様の魔術では?」
「魔術? 確かに妙な力を感じるけど、それって高価な付属能力じゃなくて、あいつが余計なことをしただけ?」
「おそらくは……少し見せて下さい」
イリーネが手を広げると、エアは確認するため側まで飛ぶ。
そして両手で指輪に触れた瞬間、指輪とエアの間に雷撃のような閃光が弾けた。
「ひゃあっ!」
あっけなく壁際まで吹き飛ぶエアに、イリーネはスカートを翻して駆け寄る。
「ちょっと、エア! どういうこと?」
「し、痺れます……」
エアは味わった魔術により、へなへなと床に倒れた。
「おそらく、指輪を与えた者以外は外せず、他者が触れると吹き飛ばされる術がかけられています」
「えええっ!」
イリーネは叫びながら辺りを見回すが、肝心の男がいない。
(なんだっけ、あいつの名前。なんか気に食わない、微妙に長い……そうだ)
「レルトラス、どこにいるの!」
大声で呼びつけると、ほどなく扉が開かれる。
「イリーネ、俺を呼ぶようになったのは懐いて来た証かな。ちょうど良かった、マイフから君へともらった……」
「そんなことより、これ!」
イリーネはレルトラスの言葉を遮ってずんずん近づき、指輪のはまった手を威勢よく振り上げる。
「あんた、この指輪に変な魔術かけたでしょ! 迷惑なんだけど!」
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「迷惑ではないよ。失くしたり奪われたりしないように、少し力を込めただけだから」
「私は迷惑。すぐにとって!」
「つけておいた方がいいよ。俺にはイリーネの居場所がわかるようにしてある」
「……居場所が、わかる?」
「そう。君が逃げたり迷子になったら迎えに行けるようにね」
「げっ、完全に呪いの装備じゃない!」
「珍しいだろう。そうだ。マイフに君の世話する話をしたら、これをもらったんだよ」
レルトラスは全て自分本位に解釈すると、サヒーマに良く似合いそうな鈴付きの首輪を差し出す。
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イリーネは罪のない首輪を乱暴につかむと、八つ当たりの限りにぶん投げた。
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