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41・ギルバルトの誘い

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「君と同じように、俺もギルバルト殿の邸館にお世話になっていたんだよ」

(ギルバルト殿ってことは……まさか)

「本当に? 本当に私なのですか? どうして、ひいお爺様のところに……あっ」

(確かお父様はクレイが静養という建前で身を隠していたとき、ヴァルドラを探していたのではないかって予想していたけれど。まさか本当に、ひいお爺様のところに……?)

「ヴァルドラのことを、探しに行ったのですよね?」

「そうだよ。ヴァルドラが矢を受けて逃げていった後、俺の意識が『邪竜に支配されている』とか、『反逆の呪いにかかっている』と信じる人もいてね。だから過激な反竜派からの暗殺を心配する大人たちが、俺の身を隠して影武者を置く話を進めていた。でも俺は自分の代わりに何人殺されるのだろうと思うと、精神的にも殺伐としてきてさ。そんな時、ギルバルト殿が俺の居場所を伏せる形で、自分のところに静養しにこないかと打診してくれたんだ」

「ひいお爺様が……。もしかして、以前から仲がよかったのですか?」

「いや、ほとんど初対面だったよ。ギルバルト殿はあちこちから俺の噂を聞いて、気にかけてくれたのだと思う。静養と公言すれば影武者を立てずに来れると言われたけれど、俺がすでに無気力になっていることを知って、直接会いに来てくれたんだ。彼は子どもの扱いを心得ていたんだろうな。俺が喜ぶと知っている飴を持ってきてくれた。俺も子どもらしくすぐ飛びついたよ」

「……飴?」

「そう。ギルバルト殿は俺に『我が領の北に位置するノウズディーム山脈の方角で、二股の尾を持つ竜を見た者がいる』って教えてくれたんだ」

「それって……!」

「うん。俺もヴァルドラのことをギルバルト殿が知っているのだと思った。彼からまだ話を聞きたかったし、単純にヴァルドラが生きているとわかって嬉しくて、無事な姿を見たくて、すぐ行く気になったよ」

「では、ひいお爺様の協力で、ヴァルドラとは会えたのですね?」

「一度ね。俺に気づいて、静かに去って行ったよ」

 その行動に、ティサリアは違和感を覚える。

「ヴァルドラは、あなたに気づいて静かに去って行ったのですか?」

「うん。元気そうでよかった」

 クレイルドは自然な口ぶりだったが、彼を追って何度も時計塔に戻って来たヴァルドラのことを聞いているティサリアには、それが余計に痛々しかった。

「俺はヴァルドラと会うという目的は果たした後も、城に帰る気が起きなかった。もともと静養中という建前だったし、ギルバルト殿は『城の方にはうまく伝えておくから、好きなだけゆっくりしていけばいい』と言ってくれたから、しばらくそうさせてもらったよ。ほとんど誰にも会わずに、ずっと部屋にこもっていたけれどね。あの邸館には色々な人が来ていたから、何気なく窓から外を眺めることもあった。そのうち、俺は自分がある子を目で追っていることに気づいた。誰だと思う?」

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