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6・まったり昼寝でもしていたい
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「ジェイル様が行方をくらませていた理由は、私のように人と会うのが苦手になってしまったせいなの」
「ジェイル殿が、リセのように人見知りを?」
オース伯は信じられないと言った風に、可愛らしい目をぱちぱちとしばたいた。
「そこのふてぶてし……堂々とされているジェイル殿が?」
「そうだよ。私もそうだから、つらい思いをされているのがわかる。だから出来る限りお手伝いをしたいの。お願いですお父様、私のためにジェイル様を騒がしい人目から避け、ここに匿って下さることを許して下さい」
「しかし見たところ、ジェイル殿は吟遊詩人の歌の通りふてぶてし……飄々とされているように見えるが」
「お父様、私の顔を見て!」
リセは無表情のまま、語気を強めた。
「感情のない人形のような顔だって言われてるの、知っているでしょう? 生気がないとか、死にかけとか、無気力とか……心の中は色々と渦巻いているけれど、見ただけでは相手に伝わらない。だけどお父様は私にこのままでいいと言ってくれた。だから私、お父様にはこんな風に真剣な相談ができるくらい心も元気になったの。お父様が人を見かけで判断せず大切に扱ってくれるって、私はよく知ってるから。そうよね?」
「う、うむ……そうだな」
オース伯が娘の信頼を受け、にやにやと喜びの照れ笑いを浮かべる。
「ジェイル殿も常に人の注目を浴びてきて、心が疲れているのかもしれぬな。しばらく喧騒を忘れて、ゆっくりしてもらうのがいいだろう」
「お父様、ありがとう!」
「ありがとうございます」
リセとジェイルは深々とオース伯に礼をする。
こうして父の深い愛は口下手な娘によってうまく丸め込まれ、ジェイルはこの館で静養できることになった。
*
館の廊下を歩きながら、リセはジェイルに用意された客間へと案内する。
「俺が人見知りか」
「あれは、すみません。お父様に許してもらうためとはいえ、ジェイル様の事情に嘘をついてしまいました」
「そうか? 俺は変化のことを抜いても猛烈に人に会いたくない。むしろ避けてる。人見知りと言われて納得した」
「ジェイル様も人と会うのが苦手なのですか?」
「そう言われるとそうだな。俺の噂は好き勝手広まって、好意や悪意を持った奴らが世界中から押し寄せて来る。それで初対面の奴に脅されたり、頼まれたり、追いかけられたり、媚びられたり、憎まれたり、利用しようとされたり、いい加減疲れた。俺はまったり昼寝でもしていたい」
「まったり昼寝……」
リセはもふもふの銀狼が警戒心なしで腹を出し、ひなたぼっこしている無防備な姿を妄想してひそかにときめく。
「いいと思います。あ、この部屋です」
二人はジェイルにあてがわれた客間に入った。
そこは人通りの少ない館の端に位置していて、夕陽の見える配置の窓と、調度品も高級感はあるが華美でなく、落ち着いた雰囲気をしている。
「この辺りは静かなので、人に疲れているのならとてもいいと思います。もちろん、他の人に姿が見られることは絶対ないように、お世話は全て私が務めさせていただきますので。安心して引きこもって下さい」
リセはそう心を込めて説明したが、相変わらず視線は常に足元で、手を伸ばしても届かないほどジェイルとの間に距離を取って壁際にいた。
(しっかりしなきゃ。キラキラした人から逃げ出したいなんて泣き言が許される状況じゃない。もしジェイル様が精霊獣に変化するなんて知られたら、酷い目に遭う)
「なぁリセ」
「は、はい」
「気になるからひとつ聞くけど」
「……なんでしょうか?」
「ジェイル殿が、リセのように人見知りを?」
オース伯は信じられないと言った風に、可愛らしい目をぱちぱちとしばたいた。
「そこのふてぶてし……堂々とされているジェイル殿が?」
「そうだよ。私もそうだから、つらい思いをされているのがわかる。だから出来る限りお手伝いをしたいの。お願いですお父様、私のためにジェイル様を騒がしい人目から避け、ここに匿って下さることを許して下さい」
「しかし見たところ、ジェイル殿は吟遊詩人の歌の通りふてぶてし……飄々とされているように見えるが」
「お父様、私の顔を見て!」
リセは無表情のまま、語気を強めた。
「感情のない人形のような顔だって言われてるの、知っているでしょう? 生気がないとか、死にかけとか、無気力とか……心の中は色々と渦巻いているけれど、見ただけでは相手に伝わらない。だけどお父様は私にこのままでいいと言ってくれた。だから私、お父様にはこんな風に真剣な相談ができるくらい心も元気になったの。お父様が人を見かけで判断せず大切に扱ってくれるって、私はよく知ってるから。そうよね?」
「う、うむ……そうだな」
オース伯が娘の信頼を受け、にやにやと喜びの照れ笑いを浮かべる。
「ジェイル殿も常に人の注目を浴びてきて、心が疲れているのかもしれぬな。しばらく喧騒を忘れて、ゆっくりしてもらうのがいいだろう」
「お父様、ありがとう!」
「ありがとうございます」
リセとジェイルは深々とオース伯に礼をする。
こうして父の深い愛は口下手な娘によってうまく丸め込まれ、ジェイルはこの館で静養できることになった。
*
館の廊下を歩きながら、リセはジェイルに用意された客間へと案内する。
「俺が人見知りか」
「あれは、すみません。お父様に許してもらうためとはいえ、ジェイル様の事情に嘘をついてしまいました」
「そうか? 俺は変化のことを抜いても猛烈に人に会いたくない。むしろ避けてる。人見知りと言われて納得した」
「ジェイル様も人と会うのが苦手なのですか?」
「そう言われるとそうだな。俺の噂は好き勝手広まって、好意や悪意を持った奴らが世界中から押し寄せて来る。それで初対面の奴に脅されたり、頼まれたり、追いかけられたり、媚びられたり、憎まれたり、利用しようとされたり、いい加減疲れた。俺はまったり昼寝でもしていたい」
「まったり昼寝……」
リセはもふもふの銀狼が警戒心なしで腹を出し、ひなたぼっこしている無防備な姿を妄想してひそかにときめく。
「いいと思います。あ、この部屋です」
二人はジェイルにあてがわれた客間に入った。
そこは人通りの少ない館の端に位置していて、夕陽の見える配置の窓と、調度品も高級感はあるが華美でなく、落ち着いた雰囲気をしている。
「この辺りは静かなので、人に疲れているのならとてもいいと思います。もちろん、他の人に姿が見られることは絶対ないように、お世話は全て私が務めさせていただきますので。安心して引きこもって下さい」
リセはそう心を込めて説明したが、相変わらず視線は常に足元で、手を伸ばしても届かないほどジェイルとの間に距離を取って壁際にいた。
(しっかりしなきゃ。キラキラした人から逃げ出したいなんて泣き言が許される状況じゃない。もしジェイル様が精霊獣に変化するなんて知られたら、酷い目に遭う)
「なぁリセ」
「は、はい」
「気になるからひとつ聞くけど」
「……なんでしょうか?」
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