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60・何かの罰ゲームなのか

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 月明かりを頼りに、私は人目に付かないところで錬金釜を出して作りまくったタオルの束を抱えて戻り、ぎょっとした。

 驚愕の表情を浮かべたフロイデンたちは大地に倒れたまま気絶していて、なぜかおぞましい異形の群れに埋もれている。

 よく見るとそれは、私の黒歴史ともいえるあの猫?の石像で、なぜか辺りに散乱していた。

 近くに置きっぱなしだった収納箱のふたが開いているので、何か衝撃を受けたことがきっかけで、大量のホラー猫の石像が哀れな男たちに降りかかったらしい。

「だけど私が錬金釜からタオルを出してくるわずかな間で、どうしてこんな悲劇が……」

「フィリシア、僕のケーキがあっ!!!」

 呆然としていると泣き怒り狂うディノが駆け寄って来て、彼の私情にまみれた一部始終を聞かされた。

 つまり、想像を絶する惨状だということがわかったわ……。

「ケーキ! 僕の顔をしたお祝いのケーキを、あいつらが台無しにしたんだよっ!! 149体の僕だって怒って収納箱から飛び出すくらい悲しいんだよっ、うわあああんっ!!!」

「ごめんなさい、ディノ。どちらかというと被害者は誤解を受けた彼らで、あれをぶん投げてしまったのは私なのよ。これから作り直すわ」

「……本当?」

「ええ。だけどディノの存在が人に知られては困るから……。今起こったことは気のせいだと思ってもらえるように、彼らが起きる前に急いで149体もある私の黒歴史を片付けて、それから姿を隠していた方が良いわ」

「わかった。ケーキのためなら、僕はがんばるよ!」

 私たちは大急ぎで、見ているだけで憂鬱な気持ちになるホラー猫の石像の群れを収納箱に封印して、証拠隠滅を図る。

 それからディノは錬金釜の入っている袋に向かって、ひょいっと跳ねて空気に溶けるように消えた。

 これでようやく、フロイデンの顔を拭いてあげることが出来そうね。

 私は倒れているクリームまみれの顔をした青年に近づき、握りしめたタオルを伸ばすと、背後から声がかかった。

「リシア、無事か!?」

「!」

 思わず飛び跳ねて振り返ると、そこにはレオルと彼に言付けを頼んだフロイデンの使いの男がいた。

 男は私の足元に転がる、気を失った男たちを見てぎょっとしている。

「坊ちゃん! トム! サム!」

「あ、あの、これはつまり……悪夢を見ながら気絶してしまったようなの。それにフロイデンの顔についているのはただのクリームで、見た目は酷いけれど危険なものではないから安心して。ほら、タオルならたくさんあるわ、一緒に拭いてくれるかしら」

「拭く! 俺が拭くよ、大事な坊ちゃんの顔だ!!」

 タオルを差し出すと、言付けを頼んだ男は全て奪うように取って、フロイデンの顔をこねるように拭いている。

 レオルが私の隣に来て、戸惑いの眼差しを投げかけてきた。

「リシア、これは一体どういうことなんだ。何かの罰ゲームなのか?」

「そ、そんなところよ」


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