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37・ハーキス家の変化

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 オルドー様の館へ贈り物を渡しにいくと、夫人であるヘリン様はいつものように喜んでくれた。

「あらリシア! 来てくれたのね、嬉しいわ」

 近づいてくる彼女から、柔らかな香りが流れてきた。

「ヘリン様、私が作ってみた保湿クリームをつけてくれているんですね」

「もちろんよ」

 彼女の優美な微笑も素敵だけれど、今日はにこっとする少女のような笑顔を見せてくれた。

「馴染みも良くて長年の乾燥肌の悩みが一瞬で消えたんだもの、もう手放せないわ。つけるたび花に包まれているような香りがして、心まで癒されるし」

「気に入っていただけて良かったです」

「そうだ、イライナがあなたがいつ来るかとずっと待っていたの。少し顔を見せてあげてくれない?」

 そう誘われて、彼女の姪のイライナ様も含め、三人でお茶をごちそうになっている。

 イライナ様は引っ込み思案だとヘリン様が気にかけていたけれど、そんな心配もなさそうなくらい、明るい声を弾ませてくれた。

「リシア、あのね! わたし、ワンちゃんがとてもうまくかけたから、見てほしかったの!」

 イライナ様はお絵描きが好きで、まだ五歳なのに私より絵がずっと上手だし羨ましいわ。

「それは楽しみです、ボリーみたいな感じかしら」

「ボリー?」

「馬丁のコシマさんが飼っている、栗色の毛並みの、大きな子犬ですよ。やんちゃなので、跳びつかれると私でも倒されてしまうくらいです」

「おっきいワンちゃんなのね、すてき! 次はそのワンちゃんをそうぞうして、かいてみたいわ。どんなワンちゃんなのかしら?」

 そのままボリーについてのクイズが始まり、イライナ様が「背中に妖精の羽が生えている」「巨大グマと戦った傷が額にある」「好きな色はピンク」と、不思議な予想をするので私もヘリン様も笑ってしまった。

「リシアが来るとイライナがはしゃぐのを見て、古くからの使用人たちは、オルドーの子どもの頃によく似ているって言っているのよ」

「そういえばレオルが、最近のオルドー様は馬車酔いが減ったので、同行すると子どもの頃みたいにはしゃぐようになったと」

 呆れていた、というのは伏せておくことにする。

「あら、やっぱりそうでしょう? オルドーは出かける時に必ずあなたの作ってくれた携帯用のビスケットを持って行って、おやつを喜ぶ子どもみたいに食べているのよ。ふふ、だけど一緒にいるレオルにも分けてあげるって。末っ子のせいかしら、いまだにお兄さんのように振舞いたがってるって、みんなで笑ってるの」

「オルドー様が気に入って下さって、良かったです」

「実はあの人だけではなくて、私もイライナもこっそり頂いているのだけどね。本当に美味しくて、つい口に運んでしまうわ。たくさんあったはずがいつの間にか無くなってしまわないように、気をつけないといけないくらいよ」



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