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33・平常心でいられない
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「なに、レオルさん。ワシ一人で降りるから。少しボリーを見ていてやってくれ」
とは言っても、コシマさんの近くにある浮遊石はどれもそこそこ離れているし、飛び移るのは危険すぎる。
仮に移動したとしても、その浮遊石が人を乗せるほどの浮力が無くて墜落する可能性もあるし……。
そういえば浮遊石は、衝撃を受けると浮上する性質があるのよね。
私は辺りを見回して、そばにある大きく平たい浮遊石に飛び乗ってみると、それは沈むこともなく安定している。
そこで魔力の暴発だとは見ためではわからない程度、微量の魔力を当ててみると、それが刺激になって乗っている浮遊石が少し上昇した。
うまくいきそうね。
レオルがボリーを抱きしめたまま私を見る。
「リシア、何をする気だ?」
「私、コシマさんを迎えに行くわ。レオルはボリーが危なくないように、しっかり押さえていてね。元気すぎて、私では突き飛ばされてしまうから」
私は浮遊石の中央に座り、障害物を避けるゲームをしているような気持ちで、音が立たない、割れない程度の魔力の暴発を浮遊石に当て続けながら空へ昇っていく。
見上げていたはずのコシマさんの乗っている浮遊石に近づくと、それからはさらに慎重になりながら横に乗り付けた。
「こんにちは、コシマさん。こちらの浮遊石に乗ってください」
緊張や疲れを見せないように笑顔で挨拶すると、コシマさんは目を見開いた。
「おや、あなたは旦那様の別館に住んでいるリシアさんでは? どうやってここまで上って来たんだね」
「浮遊石に向かっててのひらで刺激を与えまくって、ここまで来ました」
暴発のことは秘密なので、それだけの説明に留めておく。
「そうでしたか、ほぉ。見た目に似合わず、ずいぶん屈強なてのひらのようだ」
コシマさんは言われたことを素直に信じてくれる人なのか、納得した様子で私側の浮遊石に移ってくれた。
よし、これで降りるだけね……。
降りる?
……そ、そうよね。
だけど私、今、気づいたわ。
上昇方法しか頭になかったこと……。
一瞬、頭の中が真っ白になっていると、下からボリーが待ちきれないような声で鳴くので見下ろす。
「……っ!」
遠く下にレオルとボリーの小さな姿が見える景色に、足元からぞわぞわと嫌な感じが這い上がってきた。
私は慌てて岩の中央に身を寄せて、無言で震える。
た、高すぎて平常心でいられないのだけど……。
それに、どうやって降りればいいのかしら。
私の挙動不審に気づいたらしく、レオルが遙か下から声をかけてくる。
「リシア、まさかお前……高所恐怖症なのに上ったのか?」
「実は私も今知ったのよ」
「……つまり、降りる恐怖を考えないで上ったんだな?」
「え、ええ……というか、降り方も全く頭になかったと白状した方が良いかしら……」
後半は小声で本音を漏らすと、コシマさんは私を見て頷いてくれた。
とは言っても、コシマさんの近くにある浮遊石はどれもそこそこ離れているし、飛び移るのは危険すぎる。
仮に移動したとしても、その浮遊石が人を乗せるほどの浮力が無くて墜落する可能性もあるし……。
そういえば浮遊石は、衝撃を受けると浮上する性質があるのよね。
私は辺りを見回して、そばにある大きく平たい浮遊石に飛び乗ってみると、それは沈むこともなく安定している。
そこで魔力の暴発だとは見ためではわからない程度、微量の魔力を当ててみると、それが刺激になって乗っている浮遊石が少し上昇した。
うまくいきそうね。
レオルがボリーを抱きしめたまま私を見る。
「リシア、何をする気だ?」
「私、コシマさんを迎えに行くわ。レオルはボリーが危なくないように、しっかり押さえていてね。元気すぎて、私では突き飛ばされてしまうから」
私は浮遊石の中央に座り、障害物を避けるゲームをしているような気持ちで、音が立たない、割れない程度の魔力の暴発を浮遊石に当て続けながら空へ昇っていく。
見上げていたはずのコシマさんの乗っている浮遊石に近づくと、それからはさらに慎重になりながら横に乗り付けた。
「こんにちは、コシマさん。こちらの浮遊石に乗ってください」
緊張や疲れを見せないように笑顔で挨拶すると、コシマさんは目を見開いた。
「おや、あなたは旦那様の別館に住んでいるリシアさんでは? どうやってここまで上って来たんだね」
「浮遊石に向かっててのひらで刺激を与えまくって、ここまで来ました」
暴発のことは秘密なので、それだけの説明に留めておく。
「そうでしたか、ほぉ。見た目に似合わず、ずいぶん屈強なてのひらのようだ」
コシマさんは言われたことを素直に信じてくれる人なのか、納得した様子で私側の浮遊石に移ってくれた。
よし、これで降りるだけね……。
降りる?
……そ、そうよね。
だけど私、今、気づいたわ。
上昇方法しか頭になかったこと……。
一瞬、頭の中が真っ白になっていると、下からボリーが待ちきれないような声で鳴くので見下ろす。
「……っ!」
遠く下にレオルとボリーの小さな姿が見える景色に、足元からぞわぞわと嫌な感じが這い上がってきた。
私は慌てて岩の中央に身を寄せて、無言で震える。
た、高すぎて平常心でいられないのだけど……。
それに、どうやって降りればいいのかしら。
私の挙動不審に気づいたらしく、レオルが遙か下から声をかけてくる。
「リシア、まさかお前……高所恐怖症なのに上ったのか?」
「実は私も今知ったのよ」
「……つまり、降りる恐怖を考えないで上ったんだな?」
「え、ええ……というか、降り方も全く頭になかったと白状した方が良いかしら……」
後半は小声で本音を漏らすと、コシマさんは私を見て頷いてくれた。
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