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21・かわいい弟分(オルドー視点)

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 俺はオルドー・ベルン・ハーキス。

 まだ二十三という若輩ではあるけれど、三年前に他界した父から伯爵位と領地が流れてきて、それから忙しい日々が続いている。

 仕事柄、距離のある王都へ向かったり荘園へ赴く馬車移動が多く、今も領内の視察の途中、辺境のうんざりするような悪路に揺られていた。

 それでも、今日は三つ下のかわいい弟分が一緒に乗っているので気分もマシだ。

 目を向けると、レオルは俺に素っ気ない視線を投げかけてくる。

「なんだよオルドー。相変わらず馬車酔いしてるくせに、俺を見てにやにやする余裕はあるのか?」

「余裕はないけど、お前に色々聞きたいことを考えていたんだ」

「余裕はないのかよ。仕事も全部自分でやりたいのはわかるけれど、ある程度人に任せないと過労で倒れるぞ」

「もう二度ほど倒れてる。三度目はしばらく先だろう」

「多忙すぎるんだよ。ヘリンのことを心配性だって言うけど、自覚したほうがいい」

 それもわかっているつもりだが、声がかかったものは応えたいし、自分の目で確認したほうが落ち着くんだよな。

「仕方ないんだ。王都へも地方へも移動に時間がかかるのは諦めてるよ」

「だけどまた痩せただろ。少しは食べているのか?」

「いや……なかなか時間が取れなくて」

「それだけか? ヘリンが言ってたぞ。あれは好きじゃない、これは苦い、それは舌触りが……って、栄養食とか携帯食にも手を付けないし、仕事が立て込むとすぐやつれるって。忙しいのならせめて、偏食くらい直す気はないのか?」

 う……。

 それも気にはしてはいる。

 自分でも子どもっぽいことは承知しているが、食欲の失せるものが目の前に並んでも食べる気にならないんだよな……。

「嫌いなものは嫌いだ」

「開き直るのか。まぁ仕事詰めで一日中馬車に揺られているんだ。降りた後も気分が悪いのは仕方ないとして、お前が倒れたらヘリンとイライナはどうなるのか、忘れるなよ」

 レオルはそうやって俺だけでなく俺の家族も大切に考えてくれるが、相変わらずの淡々とした口調とこの悪路でも涼しい顔なので、見た目ではその優しさが伝わりにくい。

 ただ、馬車に揺られるその姿は絵になるような佇まいだが。

 本人はそれを使って人生を謳歌するタイプではなく、恵まれ過ぎた容姿と才能にまとわりついてくる数多の異性にうんざりして、女嫌いが年々ひどくなっているのは明らかだった。

 それにレオルは隣国の戦渦から逃げてきた孤児のようで、国境沿いの山で倒れていたところを俺と父で助けてからの付き合いだが、その過去に関係あるのか人目を避けている節もある。

 だけど意外と情の深いところがあり、争いごとの苦手な俺が魔獣討伐や侵略からの防衛などを任されて泣き言を吐くたび、恩に着せることもなく何度も助けてくれた。

 そうやって俺をフォローしているうちに、ごまかしきれないほどの実績を上げてしまい、騎士の爵位を賜ったときは本当に迷惑そうな顔をしていて、喜ばしいどころか申し訳ないくらいだったけれど。

 久々に会って驚いた。

 正直、ほっとした。

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