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48 観察してわかったこと
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しゅうかく祭用のお店の前で、リシェラさまがこまったように、セレイブさまから後ずさっている。
でもセレイブさまが片手でだきよせるから、ほっぺを赤くして目もそらしたわ。
「リシェ、いい子だから口を開けてごらん」
「……いいえセレイブ様、これ以上はダメです」
「いじらしい君もかわいいけど、そんな我慢はしなくていい」
「でも試食とはいえ、全種類のクッキーを食べたらお店の人が困ってしまいます。そろそろ止めなくては……」
話しているリシェラさまの口元に、セレイブさまは上手に一口大のクッキーをはこぶと……あ、ぱくって食べたわ!
ついクッキーを口にしたリシェラさまは、ハッとした様子で動きがかたまった。
でもセレイブさまは、ほめるようにリシェラさまの頭をなでている。
「こ、これは……!」
つぶやくリシェラさまのほっぺがふわっと赤くなって、目がキラキラしはじめた。
……かわいい。
リシェラさまのおいしそうに食べるお顔、すごくすごくすごーくかわいいわっ!!
店員さんまでニコニコしているもの。
「聖女様、遠慮はいりませんよ。むしろ全種類食べてもらって、どれが聖女様のオススメか選んでいただけたら宣伝になります」
あのお店、薬用クッキーを売っているみたいね。
同じ小麦でも、そだて方によって味や薬のききめを変えることができるって、お父さまが言っていたわ。
リシェラさまがそんなクッキーをせんでんしたら、すごく人気になりそう。
だってリシェラさまは動物と話せるし、魔法も使えるし、本当にすごい方だもの。
今日はミュナの持ってきた魔石杖に魔力を入れて、安全な花火が出るようにしてくれたらしいわ。
それにジンジャーやオモチの体も大きめにして、私たちが乗れるようにしてくれたし。
「私のオススメのクッキーがお店の宣伝になる……それは責任重大です。では心していただきます!」
リシェラさまは、まよいのなくなった明るい顔で、セレイブさまからクッキーを食べさせてもらいはじめた。
でも、その……さっきから気になっていたけど、ふたりともなかよしすぎないかしら?
それにあの男の人、本当にセレイブさまなのよね?
セレイブさまって、いつもこわそうだと思ってたけど……。
今はちがう人みたいに、あまあまな顔をしてるわ。
なによりセレイブさまはリシェラさまをじっと見つめたり、手をにぎったり、ほっぺをなでたり、かたをだいたり、やさしく食べさせたり……子どもが見てもいいのかしら。
わたしはドキドキをおさえるために、となりにいるオモチの首にぎゅっとだきついた。
お兄さまも真っ赤になった顔を、ジンジャーの首元におしつけてだきついている。
「ナタリア、アーサー、だいじょうぶね?」
気づいたらそばにミュナが来ていた。
でもミュナはまだ小さいわ。
ふたりの様子を見たら、わたしたちよりドキドキしてしまうはずよ。
「ミュナこそだいじょうぶなの? リシェラさまとセレイブさまの様子、ミュナにはしげきが強すぎるんじゃないかしら?」
「? いつものことね」
な、なれている……!?
ミュナはおちついた様子で、リシェラさまのくちびるに残ったクッキーのかけらを、セレイブさまが指でなでるように取って口にしているのをかんさつしている。
きゅうにミュナが大人に見えてきたわ。
「リシェはどの味が気に入った?」
「それがどれもおいしくて……どうやって選べばいいのでしょうか」
「それなら選ぶ必要はない」
セレイブ様は当たり前のように、二十種類くらいある小ぶくろのクッキーをすべて買っている。
大人だわ……!
お店の人もホクホク顔で、『当店のクッキーはすべて聖女様のオススメ!』とせんでんの紙を書きはじめた。
「そうですセレイブ様。アーサーとナタリアが私の野菜を気に入ってくれたそうです。それでネスト公爵邸の庭園の一角に、自分たちのガーデニングスペースをつくったと聞きました」
「それなら見に行こうか」
「はい、ありがとうございます!」
うす暗くなってきた空の下、リシェラさまとセレイブさまが、なかよく手をつないで歩きはじめる。
お兄さまは真っ赤な顔の色が少しおちついてから、ミュナに聞いた。
「ミュナ、リシェラ様とセレイブ様は特に問題なさそう……というか、ぼくが目のやり場に困るほど仲良しだってことがわかったよ。でもミュナがさっき話していた、重大な使命ってなに? リシェラ様とセレイブ様のことでなにか困ってるなら、ぼくもナタリアも協力するよ」
「そうよ、ミュナにはわたしたちがいるわ! なによりリシェラさまのためだもの、わたしも手伝いたい!」
「でも、じゅうだいなひみつ……」
「「せいじょさまにちかって、ミュナのひみつをまもります」」
わたしとお兄さまはむねの前で両手を重ね、聖話教会のちかいをとなえる。
ミュナはその言葉をしんじてくれたみたい。
わたしたちに顔をよせて、はっきり言ったわ。
でもセレイブさまが片手でだきよせるから、ほっぺを赤くして目もそらしたわ。
「リシェ、いい子だから口を開けてごらん」
「……いいえセレイブ様、これ以上はダメです」
「いじらしい君もかわいいけど、そんな我慢はしなくていい」
「でも試食とはいえ、全種類のクッキーを食べたらお店の人が困ってしまいます。そろそろ止めなくては……」
話しているリシェラさまの口元に、セレイブさまは上手に一口大のクッキーをはこぶと……あ、ぱくって食べたわ!
ついクッキーを口にしたリシェラさまは、ハッとした様子で動きがかたまった。
でもセレイブさまは、ほめるようにリシェラさまの頭をなでている。
「こ、これは……!」
つぶやくリシェラさまのほっぺがふわっと赤くなって、目がキラキラしはじめた。
……かわいい。
リシェラさまのおいしそうに食べるお顔、すごくすごくすごーくかわいいわっ!!
店員さんまでニコニコしているもの。
「聖女様、遠慮はいりませんよ。むしろ全種類食べてもらって、どれが聖女様のオススメか選んでいただけたら宣伝になります」
あのお店、薬用クッキーを売っているみたいね。
同じ小麦でも、そだて方によって味や薬のききめを変えることができるって、お父さまが言っていたわ。
リシェラさまがそんなクッキーをせんでんしたら、すごく人気になりそう。
だってリシェラさまは動物と話せるし、魔法も使えるし、本当にすごい方だもの。
今日はミュナの持ってきた魔石杖に魔力を入れて、安全な花火が出るようにしてくれたらしいわ。
それにジンジャーやオモチの体も大きめにして、私たちが乗れるようにしてくれたし。
「私のオススメのクッキーがお店の宣伝になる……それは責任重大です。では心していただきます!」
リシェラさまは、まよいのなくなった明るい顔で、セレイブさまからクッキーを食べさせてもらいはじめた。
でも、その……さっきから気になっていたけど、ふたりともなかよしすぎないかしら?
それにあの男の人、本当にセレイブさまなのよね?
セレイブさまって、いつもこわそうだと思ってたけど……。
今はちがう人みたいに、あまあまな顔をしてるわ。
なによりセレイブさまはリシェラさまをじっと見つめたり、手をにぎったり、ほっぺをなでたり、かたをだいたり、やさしく食べさせたり……子どもが見てもいいのかしら。
わたしはドキドキをおさえるために、となりにいるオモチの首にぎゅっとだきついた。
お兄さまも真っ赤になった顔を、ジンジャーの首元におしつけてだきついている。
「ナタリア、アーサー、だいじょうぶね?」
気づいたらそばにミュナが来ていた。
でもミュナはまだ小さいわ。
ふたりの様子を見たら、わたしたちよりドキドキしてしまうはずよ。
「ミュナこそだいじょうぶなの? リシェラさまとセレイブさまの様子、ミュナにはしげきが強すぎるんじゃないかしら?」
「? いつものことね」
な、なれている……!?
ミュナはおちついた様子で、リシェラさまのくちびるに残ったクッキーのかけらを、セレイブさまが指でなでるように取って口にしているのをかんさつしている。
きゅうにミュナが大人に見えてきたわ。
「リシェはどの味が気に入った?」
「それがどれもおいしくて……どうやって選べばいいのでしょうか」
「それなら選ぶ必要はない」
セレイブ様は当たり前のように、二十種類くらいある小ぶくろのクッキーをすべて買っている。
大人だわ……!
お店の人もホクホク顔で、『当店のクッキーはすべて聖女様のオススメ!』とせんでんの紙を書きはじめた。
「そうですセレイブ様。アーサーとナタリアが私の野菜を気に入ってくれたそうです。それでネスト公爵邸の庭園の一角に、自分たちのガーデニングスペースをつくったと聞きました」
「それなら見に行こうか」
「はい、ありがとうございます!」
うす暗くなってきた空の下、リシェラさまとセレイブさまが、なかよく手をつないで歩きはじめる。
お兄さまは真っ赤な顔の色が少しおちついてから、ミュナに聞いた。
「ミュナ、リシェラ様とセレイブ様は特に問題なさそう……というか、ぼくが目のやり場に困るほど仲良しだってことがわかったよ。でもミュナがさっき話していた、重大な使命ってなに? リシェラ様とセレイブ様のことでなにか困ってるなら、ぼくもナタリアも協力するよ」
「そうよ、ミュナにはわたしたちがいるわ! なによりリシェラさまのためだもの、わたしも手伝いたい!」
「でも、じゅうだいなひみつ……」
「「せいじょさまにちかって、ミュナのひみつをまもります」」
わたしとお兄さまはむねの前で両手を重ね、聖話教会のちかいをとなえる。
ミュナはその言葉をしんじてくれたみたい。
わたしたちに顔をよせて、はっきり言ったわ。
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