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9章
69・ぽかぽかします!
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「エレファナは聖域結界も張れるのか?」
「はい。先ほどは連絡に来た騎士さまがいたので念のため言わなかったのですが、話を聞きながら聖域結界の効果があるのだと考えて、先に張ってしまいました」
信じられない話を前に、室内は引き続き驚きに満ちた沈黙に包まれる。
「すみません、失敗でしたか?」
「いや、皆が黙っているのは……エレファナが失敗したせいではないから安心してくれ」
やはりセルディは多少慣れているため、すぐに返事をした。
「ただ俺の聞き間違いではないか、確認させて欲しい。聖域結界とは歴代の聖女と魔術師、有識者が集まってようやく、数年をかけて数層を構築できるもののはずだ」
「すごい技術の進歩です! そのやり方ですと、ドルフ帝国時代は五年ほどかかって一層でしたから。私は数十層程度なら、三分ほどで発現できます」
「三分……」
「私、魔導を使うことが得意なのです!」
「う、うん……。それは得意という程度の表現で合っているのか? ……いや、そうだな。俺の常識が追い付かないことはともかく、それほどの速度と魔力量を使って聖域結界を張ることができたのだとすれば、エレファナの心身も強い反動を受けるのではないか心配なのだが」
「反動……そうかもしれません。魔導はずっと控えていて久々に使ったせいか、体が温まって血行が良くなった気もします」
「……血行が良くなった?」
「ぽかぽかします!」
「そ、そうなのか……」
「私よりセルディさまの方が顔色が悪い気がします。大丈夫ですか?」
「……心配することはない。いつも通りの君に驚いているからだろう」
セルディはエレファナの底知れない魔力を事実として受け入れることに、やはり多少は戸惑っているらしい。
しかしエレファナが確かに血色の良い顔に笑みを浮かべているので、体に負担が無いのなら良しとしたようだった。
「殿下、信じがたいのは重々承知ですが。エレファナは自分の力を偽るようなことはしません」
「……そ、そうか」
言葉を詰まらせたアステリオンは、長い付き合いになるセルディですら見たことがないほど驚いている。
しかし普段の冷静さを取り戻そうと、ひとつ息をついた。
「エレファナの聖域結界が機能しているのなら、大量発生した魔獣は弱体化して姿すら消滅しているかもしれない。城内に現れる未知の影にも影響があるか、早速確認してみよう。私は先ほど向かうと言った手前、姿を見せなければ不安に思う者もいるだろうから、いったん様子を見てくることにするよ。そしてエレファナの張った聖域魔導で問題が無さそうだと判明すれば、すぐ戻るから」
アステリオンは足早に護衛たちと部屋を出る。
二人きりになると、セルディは再びエレファナに向き直った。
「エレファナ、ありがとう。君のおかげでとりあえずは、城の周辺が安全な場所へ近づいたはずだ」
「セルディさま、ご安心ください。私、元気になりましたから! まだまだお手伝いする余力があります!」
「はい。先ほどは連絡に来た騎士さまがいたので念のため言わなかったのですが、話を聞きながら聖域結界の効果があるのだと考えて、先に張ってしまいました」
信じられない話を前に、室内は引き続き驚きに満ちた沈黙に包まれる。
「すみません、失敗でしたか?」
「いや、皆が黙っているのは……エレファナが失敗したせいではないから安心してくれ」
やはりセルディは多少慣れているため、すぐに返事をした。
「ただ俺の聞き間違いではないか、確認させて欲しい。聖域結界とは歴代の聖女と魔術師、有識者が集まってようやく、数年をかけて数層を構築できるもののはずだ」
「すごい技術の進歩です! そのやり方ですと、ドルフ帝国時代は五年ほどかかって一層でしたから。私は数十層程度なら、三分ほどで発現できます」
「三分……」
「私、魔導を使うことが得意なのです!」
「う、うん……。それは得意という程度の表現で合っているのか? ……いや、そうだな。俺の常識が追い付かないことはともかく、それほどの速度と魔力量を使って聖域結界を張ることができたのだとすれば、エレファナの心身も強い反動を受けるのではないか心配なのだが」
「反動……そうかもしれません。魔導はずっと控えていて久々に使ったせいか、体が温まって血行が良くなった気もします」
「……血行が良くなった?」
「ぽかぽかします!」
「そ、そうなのか……」
「私よりセルディさまの方が顔色が悪い気がします。大丈夫ですか?」
「……心配することはない。いつも通りの君に驚いているからだろう」
セルディはエレファナの底知れない魔力を事実として受け入れることに、やはり多少は戸惑っているらしい。
しかしエレファナが確かに血色の良い顔に笑みを浮かべているので、体に負担が無いのなら良しとしたようだった。
「殿下、信じがたいのは重々承知ですが。エレファナは自分の力を偽るようなことはしません」
「……そ、そうか」
言葉を詰まらせたアステリオンは、長い付き合いになるセルディですら見たことがないほど驚いている。
しかし普段の冷静さを取り戻そうと、ひとつ息をついた。
「エレファナの聖域結界が機能しているのなら、大量発生した魔獣は弱体化して姿すら消滅しているかもしれない。城内に現れる未知の影にも影響があるか、早速確認してみよう。私は先ほど向かうと言った手前、姿を見せなければ不安に思う者もいるだろうから、いったん様子を見てくることにするよ。そしてエレファナの張った聖域魔導で問題が無さそうだと判明すれば、すぐ戻るから」
アステリオンは足早に護衛たちと部屋を出る。
二人きりになると、セルディは再びエレファナに向き直った。
「エレファナ、ありがとう。君のおかげでとりあえずは、城の周辺が安全な場所へ近づいたはずだ」
「セルディさま、ご安心ください。私、元気になりましたから! まだまだお手伝いする余力があります!」
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