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46・やっぱり気が合う?
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「レナさん。今日は仕事が遅れていた俺たちを助けるために声をかけてくれて、ありがとうございました」
「私も楽しかったし、勉強になりました。またお手伝いに行きますね」
「はい、みんなも喜びます。イザベラも……」
ヨルクさんは少し緊張した面持ちで、私の隣にいるイザベラに向き合った。
「おかげで助かったよ。ありがとう」
思いもしない言葉だったのか、イザベラは頬を赤くして目を泳がせる。
「う、うん……。迷惑じゃなければ、また手伝うね。皇城魔術師は待機中だと比較的自由だから……って、忙しいメイドさんたちに言うのは恥ずかしいけど」
「別に恥ずかしいことなんてないだろ。ロベリアナが俺の姿になって、お前に悪口を言ったらしいけど。俺はそんなこと思ってないから。それにイザベラは自慢しないけど、すごい努力を重ねて皇城魔術師になったんだろ? むしろ俺の方が……」
「ヨルクが?」
「ロベリアナがお前の姿に変化して『メイドなんて、魔術が使えないやつの仕事だ』って言ったからさ。あいつの言い方は悪いかもしれないけれど、俺に魔力がないのは本当だから」
「それはロベリアナの言葉がひねくれてるだけだよ! 私には魔術しかないけど……。でもヨルクは力持ちだし、裁縫も料理も、みんなと仲良くするのだって上手だもの。なによりすごく、見た目がいい!!」
ふたりははっとしたように赤くなると、いつものように同時に目をそらした。
だけどいつもと違ったのは、今までのイメージが変わるくらい、ヨルクさんがお腹を抱えて大笑いしはじめたことだった。
「はははっ、なんだよそれ! 褒め殺しか?」
「や、別にそんな! 事実を言っただけで!!」
「参った! 降参だよ……やっぱり俺、お前といると楽しすぎるんだけど。今、最高に幸せ!」
さっきは視線をそらしたふたりだけど、また自然と向き合っている。
でも今度は見つめ合ったまま、ちょっと恥ずかしそうに笑いあっていた。
うん、やっぱり気が合うんじゃないかな。
「またな、イザベラ」
「う、うん。またね!」
イザベラはそれからしばらく、ヨルクさんの背中をじっと見送っていた。
仲直りできたみたいで、よかった。
「上手くいってよかったね」
「えっ!? そ、そんな私……」
「浮遊魔術は集中力とコントロール力を整えられるから、魔術の訓練にもぴったりなんだよ。それにメイドさんたちのお手伝いができて、喜んでもらえたね」
「……そっちですか」
「?」
「い、いえ。別になにも……。でも師匠が私の指導をしてくれたら、本当に魔術のコントロールがよくなっていて驚きました。師匠は浮遊魔術を私の手柄にしつつも、こっそり手伝ってくれましたよね?」
「最初の方はね。だから魔術の調子が悪い人がいる場合は、そうでもない人が補助してあげるとうまくいくよ」
「なるほど。魔術師が複数いれば、お互いに不調を改善できるんですね!」
「そうそう。アイスとかを食べすぎて体が冷えると、魔力コントロールが鈍りやすいから。そういう人がいたら補助してあげるといいよ」
「体が冷えると、魔力のコントロールが鈍りやすい……」
イザベラはメモを取ってから、私に一礼した。
「今日は本当にありがとうございました。魔術の不調改善をしてくれたり、ヨルクとの誤解を解いてくれたり……。メイドさんたちとも仲良くなれたし、師匠がいるとごはんもおいしくなって、たくさん食べられました。師匠に会ってから望んでいたことが叶い続けていて、信じられないくらいで……あっ」
「どうしたの?」
イザベラはじっと、私の背後を見ている。
「また黒猫が……」
「私も楽しかったし、勉強になりました。またお手伝いに行きますね」
「はい、みんなも喜びます。イザベラも……」
ヨルクさんは少し緊張した面持ちで、私の隣にいるイザベラに向き合った。
「おかげで助かったよ。ありがとう」
思いもしない言葉だったのか、イザベラは頬を赤くして目を泳がせる。
「う、うん……。迷惑じゃなければ、また手伝うね。皇城魔術師は待機中だと比較的自由だから……って、忙しいメイドさんたちに言うのは恥ずかしいけど」
「別に恥ずかしいことなんてないだろ。ロベリアナが俺の姿になって、お前に悪口を言ったらしいけど。俺はそんなこと思ってないから。それにイザベラは自慢しないけど、すごい努力を重ねて皇城魔術師になったんだろ? むしろ俺の方が……」
「ヨルクが?」
「ロベリアナがお前の姿に変化して『メイドなんて、魔術が使えないやつの仕事だ』って言ったからさ。あいつの言い方は悪いかもしれないけれど、俺に魔力がないのは本当だから」
「それはロベリアナの言葉がひねくれてるだけだよ! 私には魔術しかないけど……。でもヨルクは力持ちだし、裁縫も料理も、みんなと仲良くするのだって上手だもの。なによりすごく、見た目がいい!!」
ふたりははっとしたように赤くなると、いつものように同時に目をそらした。
だけどいつもと違ったのは、今までのイメージが変わるくらい、ヨルクさんがお腹を抱えて大笑いしはじめたことだった。
「はははっ、なんだよそれ! 褒め殺しか?」
「や、別にそんな! 事実を言っただけで!!」
「参った! 降参だよ……やっぱり俺、お前といると楽しすぎるんだけど。今、最高に幸せ!」
さっきは視線をそらしたふたりだけど、また自然と向き合っている。
でも今度は見つめ合ったまま、ちょっと恥ずかしそうに笑いあっていた。
うん、やっぱり気が合うんじゃないかな。
「またな、イザベラ」
「う、うん。またね!」
イザベラはそれからしばらく、ヨルクさんの背中をじっと見送っていた。
仲直りできたみたいで、よかった。
「上手くいってよかったね」
「えっ!? そ、そんな私……」
「浮遊魔術は集中力とコントロール力を整えられるから、魔術の訓練にもぴったりなんだよ。それにメイドさんたちのお手伝いができて、喜んでもらえたね」
「……そっちですか」
「?」
「い、いえ。別になにも……。でも師匠が私の指導をしてくれたら、本当に魔術のコントロールがよくなっていて驚きました。師匠は浮遊魔術を私の手柄にしつつも、こっそり手伝ってくれましたよね?」
「最初の方はね。だから魔術の調子が悪い人がいる場合は、そうでもない人が補助してあげるとうまくいくよ」
「なるほど。魔術師が複数いれば、お互いに不調を改善できるんですね!」
「そうそう。アイスとかを食べすぎて体が冷えると、魔力コントロールが鈍りやすいから。そういう人がいたら補助してあげるといいよ」
「体が冷えると、魔力のコントロールが鈍りやすい……」
イザベラはメモを取ってから、私に一礼した。
「今日は本当にありがとうございました。魔術の不調改善をしてくれたり、ヨルクとの誤解を解いてくれたり……。メイドさんたちとも仲良くなれたし、師匠がいるとごはんもおいしくなって、たくさん食べられました。師匠に会ってから望んでいたことが叶い続けていて、信じられないくらいで……あっ」
「どうしたの?」
イザベラはじっと、私の背後を見ている。
「また黒猫が……」
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