【完結】白猫聖女は従僕魔帝の腕の中~婚約破棄された前世悪役令嬢が、冷酷魔帝陛下から溺愛されているワケ~

入魚ひえん

文字の大きさ
上 下
70 / 76

70・注目の判定

しおりを挟む
「見解が一致しているのは、加害者が魔術を使って雷撃を発現したことだな」

 リタさんとユリウス殿下が同時に頷く。

「つまり魔術で雷撃を発現した人物はまだ、放出しきれなかった雷を多少なりとも身体に残しているだろう」

 周囲の視線が、身体中に小さな稲妻を走らせているユリウス殿下に集まる。

「聖国の王太子は多少でなく、見て明らかなほど雷をまとっているようだが」

 ディルの指摘に、ユリウス殿下の背中がぎくりと跳ねた。

「お、俺のこの姿は……そ、そうだ! つまり、その……髪の毛が立ち上がっているのは静電気ではない。身体がパチパチ言っているのも雷撃の残りではない!」

「認めないつもりか」

「これはテセルニア聖国で大流行中の、最先端ファッションだ! どうだ、しゃれてるだろう? くり返すが、身体に魔力を戻しきれなかったせいで、雷が溢れているわけではない。だいたい王太子を疑うなんて、ありえない話だ! 侍女を攻撃したのはその白髪のメイドだ! 俺の言葉に、人間性に、生きざまに偽りはないと、聖なる教会に誓おう!!」

「ではこれから判じることにする」

「判じる!?」

 なぜかユリウス殿下は目を剥いて驚いているけれど、ディルは淡々とした様子で頷いた。

「帝国の初等科の魔術書にも載っていることだ。雷撃魔術を使ったあとは水に……例えば雨に濡れると感電の危険がある。大事故につながる恐れもあるため、雷撃を扱う場合は気を付けなければならない」

 ディルが視線を古井戸に向ける。

 彼は浮遊魔術を使って、そこからバケツに抱えるほどの大粒の水の塊を空中に浮かせた。

 水はスライムのような形を保ちながらふよふよ宙を飛んで、ユリウス殿下の頭上あたりで止まる。

「なっ、なにをするつもりだ!!」

「誰が見てもわかる、簡単な実験だ。水を浴びてなにも起こらなければ、魔力に雷撃が含まれていない。つまり無実が証明される。感電すれば、発現させた雷撃が体内に残っている。つまり有罪だ」

「待て待て待て! 感電は痛いだろう!」

「ああ、痛いな。もし身体に雷撃が溢れているのなら、全身が無残に焼け焦げるほどの激痛だ」

「死ぬのか!?」

「その方が楽だろうが、うまくいくかはわからない」

「まっ、待て!! 俺は紳士だから、レディファーストだ。先に水を浴びる権利をレナーテに譲ろう!!」

「王太子、もう一度だけ聞く。お前はレナを陥れ、自分が侍女に雷撃で攻撃した加害者だと認めるのか?」

「だから違う! 俺はやっていない! すべてレナーテが仕組んだことだ!!」

 水の塊がユリウス殿下の頭上で弾ける。

 降り注ぐ水の塊を見上げながら、全身からバチバチ雷を弾かせているユリウス殿下は絶叫した。

「うわああああっ!!」

 彼は降ってきた水の塊を顔面で受けると、その水量に押されて仰向けになって倒れる。

 ディルの背後に控えていたハーロルトさんが駆け寄った。

 そしてずぶ濡れのまま動かないユリウス殿下を確認する。

「陛下、聖国の王太子殿下は……」

「白目を剥いて気絶しているな」

「ええ、感電していないようです」

 集まっていた人々は、信じがたい様子で互いに顔を見合わせている。

「間違いなく水を浴びたというのに、感電していないだと?」

「魔帝陛下は一体なにを……いや、王太子をどうするつもりだ!?」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

これは未来に続く婚約破棄

茂栖 もす
恋愛
男爵令嬢ことインチキ令嬢と蔑まれている私、ミリア・ホーレンスと、そこそこ名門のレオナード・ロフィは婚約した。……1ヶ月という期間限定で。 1ヶ月後には、私は大っ嫌いな貴族社会を飛び出して、海外へ移住する。 レオンは、家督を弟に譲り長年片思いしている平民の女性と駆け落ちをする………予定だ。 そう、私達にとって、この婚約期間は、お互いの目的を達成させるための準備期間。 私達の間には、恋も愛もない。 あるのは共犯者という連帯意識と、互いの境遇を励まし合う友情があるだけ。 ※別PNで他サイトにも重複投稿しています。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

処理中です...