アラフォーだけど異世界召喚されたら私だけの王子様が待っていました。

ぬくい床子

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無事に帰城を果たした討伐隊にはそれぞれ褒美が貰える事になり、リリエナも例外なく希望を聞かれたので、カワウソを飼う許可を貰った。
後で禍根を残さないよう正直に説明したら渋られたけれど、私が一生首輪を付けるからと押し切り、今は私の部屋でへそ天でスヤスヤと寝ている、やはり大物だわ。
そして首輪には、私から一定の距離しか離れられないという魔法をかけた。
こちらの家族にも心配させてしまって、レイニード兄様が家族だけのお茶会をしようと計画してくれている。本当にいい人達だわ。
私はといえば、目の前のテーブルにおにぎりが置かれ、向かい合う形でヴァイツェン殿下が満面の笑みで座っているが、手をつけられないでいる。
「どうしたの?どうぞ召し上がれ」
促されるが、手を出す前にリリエナには言わなくてはならないことがあった。
魔王との約束の事ではない、その件については既に説明は終わっている。何故なら帰城の途中、馬車の中で問い詰められたからだ。
それについては、早く相談して欲しかったとショボンとされて、気付けなくて悪かったと謝られてしまい、こちらもごめんなさいと頭を下げたら苦笑いで抱き締められた。
それよりも、クリアしなければならない案件がひとつ残っていた。
「あの、私、言わなきゃいけないことがあるんです」
「うん?」
ヴァイツェンの綺麗な顔が右へ15度傾き、きょとんとする。
ずっとアプローチされていたのは分かってるし、洞窟でもハッキリと告白もされた、だから返事をしなければいけないのだけど、無視できない事があったのだ。
「私、本当は40歳なんです!」
「・・・うん?」
表情は変わらないが、ヴァイツェンはしばらく動かなかった。護衛として部屋の隅にいた騎士も動揺したのか、腰に履いた剣がガチャンと音を立てる。
「どういう事だい?」
こちらとあちらで時間の経過が違う事、こちらに合わせて身体が若返っていた事全てを説明した。その上で、それでもいいか聞いてみたら。
「私が愛しているのは目の前の今の君だ、今というのは姿形だけではなく中身もという事だ。だから例え40歳の姿であろうと、中身がリリエナ、君であるなら私の気持ちは同じだよ」
徐に立ち上がるとリリエナの前で跪き、その左手を掬う。
「貴女は私が守る。この命ある限り、生涯の忠誠と愛を誓う」
そう真剣な眼差しで告げると、ちゅっと掲げた指先に口付けをした。
「この誓いの言葉の意味を知っているだろうか」
「は、はい」
この世界の常識やらは少しずつ学んでいた、一度目に言われた時は意味が分からなかったのだが、今なら意味を知っている。
まさかプロポーズだとは・・・。
「どうか返事を」
うっ、そりゃ教えて貰ったけど、いきなりプロポーズされるなんて思わなかったし、心の準備が・・。
とはいえ、返事はもう決まっているし、返事の文言も知っている。
元の世界に帰れなくても、もし帰れるとしてもこの人がいないと嫌だと、そう思っている。
「この命あるかぎり、私の愛と忠誠を捧げます」
ヴァイツェンは目を瞠り、幸せそうに微笑んでリリエナを抱き締め、その頬に手を添え戸惑う唇を塞いだ。
「愛しているよ、リリィ」
「私も愛してます、ヴァン」






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