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翌日、魔王討伐作戦会議が始まりンガル騎士団長から大まかな作戦が告げられた。
「魔王は東の灰の森にいると考えている。沼の奥にある洞窟、そこに禍々しい気配が充満していると第六騎士隊より報告があった。第二、第三、第四騎士隊で班を組み討伐にあたる、第一及び第五騎士隊は特別警戒体制とする。何が起こるか分からない、いつもより気を引き締めてくれ。尚、聖女殿はヴァイツェン殿下と共に先頭に立たれるそうだ」
途端、騎士達がざわついた。
この会議には全ての隊より、隊長、副隊長が参加しており、その中でも過剰に反応した者がいた。
「どういうことですか、魔王の狙いが聖女であるのは明白。我がドゥーべ家の宝を囮にでもするおつもりか、リンガル団長」
低く唸ったのは第六騎士隊隊長レイニード・ドゥーべ、リリエナの義兄だ。
本来なら隠密隊である第六騎士隊は会議には出席しない、正しくは第六とわからない形でその場にはいるのだが、それは顔を売らない為だ。
レイニードも然り、立場上顔は知られているが、第六騎士隊隊長であると知っている者は意外と少ない。
だがレイニードは隊長として出席した、それは討伐対象が魔王である事と、なによりリリエナの為だった。
「落ち着け、これは聖女殿のご意志だ。騎士団からの要請ではない」
「そのように誘導したのでは」
「なんだと」
両者の間に火花が弾け、険悪なムードが漂う。
それに他の隊長達も納得がいかないようだった。
「狙いが聖女様なら、やはり後方に」
「ならば、いっそ城にて第一騎士隊が王族方と一緒にお守りする方がいいのでは」
「騒ぐな、我々は万全の体制で迎え撃つ、聖女殿も国も俺達で守る!以上だ」
口々に反対意見が出る中、リリエナが「あの」とか「その」など説明しようとしたが、誰も耳を傾けてはくれず困っていると。
「静かに、敵の狙いを承知の上での申し出だ。だが今一度、気持ちを聞かせてくれないか、リリエナ」
ヴァイツェンの凛とした声が空気を変えた。
自分が本当にどこまで出来るのか分からない、記憶にない魔王との約束は不安でしかない、でも私は行かなきゃいけないと思う、行って確かめなきゃならない事だと直感が言っている、同行を認めてもらわなきゃ!
リリエナは大きく深呼吸をした。
「お義兄さま、皆様、今回の同行は私が決めた事です。ヴァイツェン殿下と共に私の使命を果たしたくお願いしたのです。私にもこの国を守らせて下さい、そしてその為に皆様のお力をお貸しください」
声、震えなくて良かった。
力強いリリエナの声が響き渡ると、おおおー、とどよめきと拍手が起こり、もう異議を唱える者はいなかった。
「本当にそれでいいんだね」
「レイニードお義兄さま、はい」
「そうか、だが危なくなったら帰っておいで、僕がどんな手を使っても守ってあげるよ」
ん、今不穏なワードが入ってなかったかしら。
首を傾げたリリエナの前にヴァイツェンが塞ぐように立った。
「リリエナは私が必ず守る」
「ほう、今度こそ守れるんでしょうね殿下」
「当然だ」
今度はヴァイツェン殿下と火花が散る程の睨み合いになったが、リンガル騎士団長が仲裁に入り討伐作戦会議は無事終わることができた。
魔王はきっと現れる、その時私は・・・
体が震えそうになるのを堪える。
殿下は怒るかな。
「魔王は東の灰の森にいると考えている。沼の奥にある洞窟、そこに禍々しい気配が充満していると第六騎士隊より報告があった。第二、第三、第四騎士隊で班を組み討伐にあたる、第一及び第五騎士隊は特別警戒体制とする。何が起こるか分からない、いつもより気を引き締めてくれ。尚、聖女殿はヴァイツェン殿下と共に先頭に立たれるそうだ」
途端、騎士達がざわついた。
この会議には全ての隊より、隊長、副隊長が参加しており、その中でも過剰に反応した者がいた。
「どういうことですか、魔王の狙いが聖女であるのは明白。我がドゥーべ家の宝を囮にでもするおつもりか、リンガル団長」
低く唸ったのは第六騎士隊隊長レイニード・ドゥーべ、リリエナの義兄だ。
本来なら隠密隊である第六騎士隊は会議には出席しない、正しくは第六とわからない形でその場にはいるのだが、それは顔を売らない為だ。
レイニードも然り、立場上顔は知られているが、第六騎士隊隊長であると知っている者は意外と少ない。
だがレイニードは隊長として出席した、それは討伐対象が魔王である事と、なによりリリエナの為だった。
「落ち着け、これは聖女殿のご意志だ。騎士団からの要請ではない」
「そのように誘導したのでは」
「なんだと」
両者の間に火花が弾け、険悪なムードが漂う。
それに他の隊長達も納得がいかないようだった。
「狙いが聖女様なら、やはり後方に」
「ならば、いっそ城にて第一騎士隊が王族方と一緒にお守りする方がいいのでは」
「騒ぐな、我々は万全の体制で迎え撃つ、聖女殿も国も俺達で守る!以上だ」
口々に反対意見が出る中、リリエナが「あの」とか「その」など説明しようとしたが、誰も耳を傾けてはくれず困っていると。
「静かに、敵の狙いを承知の上での申し出だ。だが今一度、気持ちを聞かせてくれないか、リリエナ」
ヴァイツェンの凛とした声が空気を変えた。
自分が本当にどこまで出来るのか分からない、記憶にない魔王との約束は不安でしかない、でも私は行かなきゃいけないと思う、行って確かめなきゃならない事だと直感が言っている、同行を認めてもらわなきゃ!
リリエナは大きく深呼吸をした。
「お義兄さま、皆様、今回の同行は私が決めた事です。ヴァイツェン殿下と共に私の使命を果たしたくお願いしたのです。私にもこの国を守らせて下さい、そしてその為に皆様のお力をお貸しください」
声、震えなくて良かった。
力強いリリエナの声が響き渡ると、おおおー、とどよめきと拍手が起こり、もう異議を唱える者はいなかった。
「本当にそれでいいんだね」
「レイニードお義兄さま、はい」
「そうか、だが危なくなったら帰っておいで、僕がどんな手を使っても守ってあげるよ」
ん、今不穏なワードが入ってなかったかしら。
首を傾げたリリエナの前にヴァイツェンが塞ぐように立った。
「リリエナは私が必ず守る」
「ほう、今度こそ守れるんでしょうね殿下」
「当然だ」
今度はヴァイツェン殿下と火花が散る程の睨み合いになったが、リンガル騎士団長が仲裁に入り討伐作戦会議は無事終わることができた。
魔王はきっと現れる、その時私は・・・
体が震えそうになるのを堪える。
殿下は怒るかな。
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