アラフォーだけど異世界召喚されたら私だけの王子様が待っていました。

ぬくい床子

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朝食を一緒にどうかと聞かれリリエナが頷くと、ヴァイツェンは待っていてくれと言いながら部屋から出て行ってしまい、執務室には護衛としてリンガル騎士団長が残り、長めの沈黙が続いている。
この人は少し苦手かも・・・。
何がというと、初対面の時から嫌われているような気がして、態度というか、自分を見る瞳。
そう、自分を見る視線が冷ややかなのだ。
もしや昔の私が何かしてしまったのかしら、と考えても心当たりなど思い付かない。
「・・・」
「・・・」
「・・聖女殿」
「はっ、はい」
突然話しかけられて返事が裏返ってしまう。
「ヴァイツェン殿下の命を救って下さり、感謝申し上げる」
「え、いえ」
ちらりとリンガルの方を見ると、いつもより幾分か柔らかな瞳が自分を見ていた。
「貴女は本来の聖女の力を使えないのではと、無作法にもそう思っておりました」
抑揚の無い、低い声が告げる。
使えないって思われてたから見下されてたの?
「ですが、あの時眩い光に包まれた貴女は正しく聖女であられた。清浄な光で殿下を救う様はとても尊く、頼もしくもあった」
下げて上げられ、急な賛辞にリリエナは戸惑う。
「そ、そんな」
「そして先程、貴女は仰られた。殿下と共に戦うと、我らの希望の光になると」
そんな大層な事を言ったつもりは無かったが、否定できる雰囲気でもない。
「我ら騎士団の剣は国と王族に誓いを捧げている故に、貴女に誓いを立てる事は出来ないが、騎士団長リンガルの名において騎士達は貴女をお守りする。殿下と等しく、お守りする事をお約束しよう」
リンガルは右手を胸に当て、会釈程度に頭を下げた。
リリエナは元より護衛対象であるが、その立場が明確にされたのだ。
騎士団は国と王に忠誠を誓うと聞いた、その長たるリンガルが殿下と同等に扱うと言ってくれたのだから、これ以上の味方はないだろう。
ヴァイツェンやオーガストのように跪いたりはしていないが、こんなにも優しいリンガルの声を聞いたのは初めてで、リリエナは肩の力を抜くことができた。
だから、聞いてみようと思った。もう一つの気掛かり、ソニアスの事だ。
兄のレイニードからは無事だと聞かされてはいるが、本当に大丈夫なのか気になっていた。
「あの、ありがとうございます。何かあった時は頼りにさせて貰います。・・それと、聞きたい事があるのですが」
纏う空気を和らげた偉丈夫は頷き、先を促す。
「何なりと」
「ソニアスさんは、無事なんでしょうか。あの時、転移魔法が出来たのもソニアスさんのお陰なんです、でもその視界が変わる瞬間に倒れたように見えたので心配になって」
その一瞬、リンガルが固まったように感じたのは気のせいだろうか。
「魔導師長殿の事であれば、問題はない。しかし、なるほど、昏倒した理由はそれか。気になさる必要はない、明日には復帰するだろう」
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