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「ああ、大丈夫だ。そうだ、まずその事で君には礼を言わなければ。毒に倒れ死の淵にいた所を助けられたと聞いた。ありがとう、君を守るつもりが逆になってしまった。本当に・・・すまない」
もしもヴァイツェンに耳と尻尾があれば間違いなくだらんと垂れているだろう、分かりやすく瞳を伏せ、肩を落としている。
初めて見るその様子に、リリエナは胸にふわっと温かい何かが溢れ擽られるのを感じた。
可愛い・・・。
いつも優しくて、格好良い王子様な人がこんなあからさまに落ち込んでいるなんて。
格好良くて可愛いなんて・・・ずるい。
毒消しをした後、オーガストさんに会ってしまった事、壊れた執務室、大胆な自分の行動と色々相まって、後ろめたさで彼が目覚める前に城に帰ってしまったから本当に助けられたか少し自信が持てなかったけど、無事で、本当に良かった。
昨夜の訪問で元気そうな声は聞いていたが、こうやって動いている姿を実際に見て、やっとリリエナは心から安心できた。
ほっとしながらぼんやりと他に怪我がないか視線を流していると、ヴァイツェンは跪き、綺麗なブルーグリーンの瞳を近づけてきた。
「リリエナ、君を守ると誓っておきながら私が不甲斐ないばかりに魔王を近づけてしまった。呆れてもいい、蔑んでくれてもいい。だが、此処に、私の傍に、頼りないと思うかもしれないが、どうかこれからも私に守らせて欲しい」
最後は祈るように告げられ、リリエナの胸も苦しくなる。
私だって傍にいたい、でも先に遠ざけたのは貴方でしょ。
魔力を封じられたまま軟禁されるなんて、もう二度とごめんだわ。
リリエナは少し怒っていた。
レイニード達がオーガストの牢を開け、オーガストは危険を冒して首輪を外しに来た。
本当はヴァイツェンが出発する頃には意識はあったはず、なのに、あえて首輪を外させなかったのだ、この王太子殿下は。
私の気持ちも聞かず、勝手に決めて、置いて行ったのよ。
それに気付いた時、哀しくて淋しくて腹が立った。
だから、それを分かって貰わないと、私だって・・・守りたいのよ。
膝の上で丸めた手にぎゅっと力を込める。
「約束・・・」
「うん?」
「約束して下さい。傍にいて、守ってくれると言うなら、もう置いて行かないで・・・私は聖女です、守られるだけじゃない。殿下の隣で一緒に戦いたい、・・だから今度からは一緒に連れて行って、・・・欲しいです」
置いて行かないで・・なんて子供みたいだと、途中から恥ずかしくなり、語尾も弱くなってしまったが、この世界に来てこんな風に自分の意志を伝えたのは初めてだった。
俯いてしまったリリエナの手に、ヴァイツェンの大きくゴツゴツした手が包み込むように触れた。
「うん、わかった。そうだね、リリエナは私が思うより強かったんだな、今まですまない、君がそう言うなら、次は連れて行く。私の隣で一緒に戦ってくれるかい?」
「はい!」
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