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リリエナは顔を赤くし、あたふたとする。
「なんだ、いいのか」
その様子で満更でもないのはレイニードも理解したが、危険にさらされた事については見逃せない。
縁あってドゥーベ家の一員となったのだから、自分にとっては可愛い妹だ、再び現れた時、王太子というやっかいな相手がいなければ自分が囲って甘やかしてやりたかった程だ。
「ひとつ聞いておきたい。魔王討伐に行けばもっと危険な目に遭うだろう。ただ、聖女であろうと危ない事から遠ざかる事は出来るはずだ。とやかく言う奴等もいるだろうが、逃げてもいいと僕は思っているし、その権利はお前にある。僕の元へ来るなら、僕は全力で守るよ。どうだ?」
レイニードは真剣な眼差しで見つめる。
それを受け止め、リリエナは目をぱちくりとさせ、ふふっと頬を緩ませた。
「心配してくれてありがとうございます。でも、今のままでいいんです。私に出来る事があるのにやらなかったら後悔すると思うんです。それは嫌だから」
こんな顔をする子だっただろうか、レイニードの記憶の中にいるリリエナは笑顔でもなんでもどこかふわふわしていて、こんな強い意志を感じる事は無かった。
だが、目の前の金の瞳には強い光が揺らめいている。
変わったな・・・成長したというべきか。
「そうか、わかった。・・夜明けにはまだ早い、もう少し休みなさい。明日は殿下の元へ送り届けよう」
「はい、・・おやすみなさい」
リリエナは寝室に戻って行った。
レイニードはソファに身体を沈ませ、右手で顔を覆うとククッと笑った。
「強い娘だ、僕が欲しいくらいに」
ボソリと呟いた。
酔いたい気分になりワインのボトルに手を伸ばし、いつもより多くグラスに注いだ。


翌朝、約束通りレイニードがヴァイツェンの執務室までリリエナを送り届けてくれた。
あれほどボロボロだった部屋がすっかり元通りになっていた事に驚き、ぽかんとしていたリリエナはいつの間にか逞しい腕と胸にギュウギュウ抱きしめてられていた。
「無事だった、・・・良かった」
挨拶を交わす間も無くヴァイツェンの胸に引き寄せられ、その腕で肺が押し潰されそうなくらい容赦の無い力で締められてしまっていた。
身じろぐ事も出来ず、窒息寸前で喘ぐ。
「あ、あのっ。も・・少し、ちか・・らを」
やばい、本気で息が出来ない・・。しかも、視界が暗くなって・・・
「殿下!聖女殿を殺す気ですか⁉︎」
失神寸前でやっとリリエナとヴァイツェンを引き剥がしてくれたのはリンガル騎士団長だ。
フラつく身体を支えられてソファに座った。
「すっ、すまない。やっと会えたと思ったら加減が出来なくなってしまった」
「はぁ、いっ、いえ。あの、お身体はもう大丈夫なのですか?」
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