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「えと、散歩を・・しようかなぁ、なんて」
「散歩?一人で行くのか?」
レイニードは笑顔を崩さなかったが、リリエナを捉えたその瞳が鋭さを増した気がした。
「き、気晴らしに少し歩こうかなと、思いまし・・て・・」
自然と語尾が小さくなる。
どうしよう、やっぱり本当の事を言った方が良かったかしら。ああ、でもこの人はどこまで知っているの?、全部話すとなるとオーガストさんの事も言わなくてはならないわよね、それは絶対ダメ。あ、私今首輪してないけど、魔法を封じられていた事って知られているのかしら、そこから言わなくてはならないのなら・・やっぱり脱獄したなんて言えない。それとも部屋に戻る振りをしようかと逡巡していると、目の前にエスコートの腕が差し出された。
「では僕とお茶などいかがですか?」
おどけるようにレイニードは誘ってくる。
「え?」
「城の中とはいえ歩き回るのは賛成できないからな。さ、おいで」
否を言わせない強引さに諦めてその腕に手を乗せると、そのまま連れて行かれたのは少し離れたところの一室。
リリエナが初めて訪れる部屋だ、客間だろうか、それとも彼の部屋だろうか、ある程度の地位があれば個人の部屋があると聞いた事がある。
華美な物はないが質の良さそうな調度品で揃えられた部屋はどこかドゥーベ家の屋敷を思い起こさせる。
テーブルセットに腰掛けたタイミングでお茶とケーキが運ばれて来たが、執務室をそのままにしてしまい、ソニアスの事も気がかりで仕方ないリリエナは早々に立ち去る方法ばかり考えていた。
「安心しろ、殿下の部屋は片付けさせている。ソニアス殿も無事だ」
リリエナは口に含んだお茶を吹き出しそうになる。
「んんっ⁉︎」
「驚かせたか、すまない。どこから話そうか、ああ、この部屋はドゥーベの人間が代々使っている部屋だ。城の中にあるがこの部屋で起こる事は全てドゥーベに一任されている、実家にいるようなものだと思ってくれ」
レイニードから発せられた言葉にポカンとしてしまう。
「僕は全てを知っている、そういう立場なんだ。オーガストの牢の鍵を開けたのも僕だ、まあそれを頼んできたのは別の人間だがな。そう、殿下はまだ少し未熟な所がある、今回もそういう周りの働きがあって殿下もリナも無事でいられた」
レイニードの口調は重く真剣だ。
確かに魔法封じの首輪が外れなければ殿下の命は助からず、自分も魔王に殺されるか拐われるか無事ではいられなかっただろう。
それを改めて考えると血の気が引いた。
「だからリナには話しておこうと思ったんだ。我々第六騎士隊の事を」
第六騎士隊?
「え、騎士隊は五つって」
「うん、ごく限られた、それなりの立場の者にしか知らされていないが本当は六つある」
隠されているって事よね、自分がそれを聞いてもいいのか、というより聞きたくないなとリリエナは思う。
「散歩?一人で行くのか?」
レイニードは笑顔を崩さなかったが、リリエナを捉えたその瞳が鋭さを増した気がした。
「き、気晴らしに少し歩こうかなと、思いまし・・て・・」
自然と語尾が小さくなる。
どうしよう、やっぱり本当の事を言った方が良かったかしら。ああ、でもこの人はどこまで知っているの?、全部話すとなるとオーガストさんの事も言わなくてはならないわよね、それは絶対ダメ。あ、私今首輪してないけど、魔法を封じられていた事って知られているのかしら、そこから言わなくてはならないのなら・・やっぱり脱獄したなんて言えない。それとも部屋に戻る振りをしようかと逡巡していると、目の前にエスコートの腕が差し出された。
「では僕とお茶などいかがですか?」
おどけるようにレイニードは誘ってくる。
「え?」
「城の中とはいえ歩き回るのは賛成できないからな。さ、おいで」
否を言わせない強引さに諦めてその腕に手を乗せると、そのまま連れて行かれたのは少し離れたところの一室。
リリエナが初めて訪れる部屋だ、客間だろうか、それとも彼の部屋だろうか、ある程度の地位があれば個人の部屋があると聞いた事がある。
華美な物はないが質の良さそうな調度品で揃えられた部屋はどこかドゥーベ家の屋敷を思い起こさせる。
テーブルセットに腰掛けたタイミングでお茶とケーキが運ばれて来たが、執務室をそのままにしてしまい、ソニアスの事も気がかりで仕方ないリリエナは早々に立ち去る方法ばかり考えていた。
「安心しろ、殿下の部屋は片付けさせている。ソニアス殿も無事だ」
リリエナは口に含んだお茶を吹き出しそうになる。
「んんっ⁉︎」
「驚かせたか、すまない。どこから話そうか、ああ、この部屋はドゥーベの人間が代々使っている部屋だ。城の中にあるがこの部屋で起こる事は全てドゥーベに一任されている、実家にいるようなものだと思ってくれ」
レイニードから発せられた言葉にポカンとしてしまう。
「僕は全てを知っている、そういう立場なんだ。オーガストの牢の鍵を開けたのも僕だ、まあそれを頼んできたのは別の人間だがな。そう、殿下はまだ少し未熟な所がある、今回もそういう周りの働きがあって殿下もリナも無事でいられた」
レイニードの口調は重く真剣だ。
確かに魔法封じの首輪が外れなければ殿下の命は助からず、自分も魔王に殺されるか拐われるか無事ではいられなかっただろう。
それを改めて考えると血の気が引いた。
「だからリナには話しておこうと思ったんだ。我々第六騎士隊の事を」
第六騎士隊?
「え、騎士隊は五つって」
「うん、ごく限られた、それなりの立場の者にしか知らされていないが本当は六つある」
隠されているって事よね、自分がそれを聞いてもいいのか、というより聞きたくないなとリリエナは思う。
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