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王都と城の結界はソニアス一人の魔力で保っており、その魔力は常に繋がっている、破られた衝撃は彼がもろに受ける事になる。
意識を保つのもやっとの状態だが、リリエナに対して責任を感じているソニアスは守らねばならないと意地だけでここまでやって来ていたのだ。
そしてリリエナが転移魔法で姿を消したのを見届け、ソニアスはギリギリで保っていた意識を手放した。


少し時を遡り、ヴァイツェン率いる討伐隊は東の森を出て帰路についていた。
リンガルはヴァイツェンの横を馬の頭ひとつ分後ろを警戒しながら進んでおり、このまま無事に城に到着するのをただただ願っていた。
だが、それは叶いそうになかった、騎乗しているヴァイツェンの身体が不自然に揺れ出し、ぐらりと崩れたのだ。
「殿下!」
リンガルは咄嗟に馬を飛び降り、すんでの所でその身体を受け止める事に成功したが、抱き留めたヴァイツェンの顔を覗き込んだ途端青褪めた。
その顔は青白く、頬の傷は漆黒色になっており既に意識は無かった。
「ヴァイツェン殿下ッ!クソ!」
魔王の影が放ったものは毒か闇の呪いか、とにかくヴァイツェンの身体の深い所まで入り込んでしまっているように見えた。
リンガルはすぐに同行していた魔導師の一人を呼んだ。
「これは・・、闇の毒が身体を巡っているようです。聖女殿のようにはいきませんが、ともかくやってみましょう」
今回の討伐には魔導師は少なからず癒しの魔法が使える者を選別している、呼ばれた魔導師はその中でも一番の使い手であったが、ヴァイツェンの顔にいくばかりか赤みが戻っただけで、闇を祓うところまでいかなかった。
「やはり難しいですね、私の力では悪化を防ぐ事しか出来そうにありません。やはり聖女殿に・・」
リンガルはそんな事は分かっているとばかりに苛立ちを隠さずに返事を返した。
「ああ、そうだな」
こうなったら自分が殿下を抱えて城まで馬を走らせるしかないか。
考えてる時間はないと、ヴァイツェンを抱き上げようと腕に力を込めたその時、心地良い風と共に辺りを照らすような光がリンガルの目の前に現れた。
咄嗟に身構えたが、光の中から現れたのがリリエナだと気付いた。
光に包まれた彼女はまさしく聖女そのもので、その場の一同は尊い存在を見たと言わんばかりに眩しそうな顔をし、膝を折った。
「聖女・・殿」
リンガルでさえ頭を垂れてしまいそうになる程に神々しく登場したリリエナだったが、本人はそんなつもりは露ほども無く、仰々しい出迎えにギョッとする。
が、ぐったりとしたヴァイツェンを見つけると慌てて駆け寄った。
「でっ、殿下!な、何が・・どうして」
傍に膝をつきヴァイツェンの顔を覗き込んでから、説明を求めるようにリンガルに顔を向けた。
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