アラフォーだけど異世界召喚されたら私だけの王子様が待っていました。

ぬくい床子

文字の大きさ
上 下
50 / 87

34

しおりを挟む
最後は嗚咽となって、大粒の涙と共に彼女の感情が解放されていく。
気が付くと私はリリエナを抱き締めていた。
この少女が抱える葛藤や苦悩は王子である私も幼少の頃から背負ってきたものだ。
この小さな身体の細い肩にそれを背負わせてしまった、私と同じ苦しみを。
「リリエナ、すまなかった。私なら君の気持ちを理解出来る、だから私にだけは我慢しなくていい。甘えて欲しい。私が全て受け止めよう、今から私はリリエナだけの唯一となる」
「私だけの?・・・」
「ああ、友であり家族でもあり、私としては恋人がいいが」
「こっ・・!」
「ふ、可愛いリリエナ。急がないさ、ただいつ何時でも私は君の味方であると覚えておいて頼って欲しい。私にとっても君が唯一だ、時々でいい、こうやって触れ合いたい」
腕の中のリリエナが身じろぎ、そろそろと自らの腕を私の背中に回しギュッと抱き着いた。
私の気持ちに応えてくれたようだ、彼女の耳が赤く染まっていた。
「おにぎり、美味しかったです。それと、迎えに来てくれてありがとうございます」
この時、この愛しい少女を必ず守ると決意したのだ。

「リリィ」
かつては呼び合っていた愛称を呟いてみた。
ヴァイツェンを呼ぶ声を思い出す、"ヴァン"とあの頃は呼んでくれていた。
「もう一度呼んで欲しいよ、リリィ」
もうすぐ夜明けだ、今夜はゆっくり休めただろうか。
愛しい人がドア一枚隔てて眠っている、施錠はされているが鍵は当然ヴァイツェンが持っており、開けたい衝動に駆られては理性が己を叱咤する。
もちろん緊急時にしか使うつもりはない。
「まずは魔王を討伐せねばな」
独りごちて朝陽を待つことにした。

大きな窓から差し込む陽の光で目を覚ましたリリエナは、思いの外充分な睡眠が取れた事に昨夜の緊張はどこへやら自分の図太さを実感していた。
「年の功かしらね」
起き上がり着替えを探そうとクローゼットを開けると見覚えのあるドレスが並んでいる。
いつの間にかリリエナの衣類や服飾品が収納されており、ゴソゴソと探っていると侍女長のレスリがノックと共に入って来る。
「おはようございます、お目覚めでしたか。朝食をお待ちしておりますが、準備をしてもよろしいでしょうか」
「は、はい。お願いします」
「着替えは後ほどお手伝い致しますので、どうぞそのままこちらの部屋へお越し下さい」
いつもは着替えてから朝食を食べていたので首を傾げながら部屋を移動すると、いつもより豪華な朝食が待っていた。
「リリエナ様はこの度の討伐で大変な目に遭われたと伺いました。本日はゆるりとお過ごし頂くよう仰せつかっております、ご要望がございましたら遠慮なくおっしゃって下さいませ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

【本編完結】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

叶えられた前世の願い

レクフル
ファンタジー
 「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

処理中です...