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それを三角に固めようとしたが、なかなか難しい。
「んん、米が手に張り付くな」
「あぁ、殿下。聖女様は水で手を濡らして握っておられましたよ」
料理長が手を出そうとしたが断り、不恰好だが何とか塊には出来た。
包みに入れて貰ったそれを抱え、急いで馬を走らせリリエナの元へと辿り着いた。
彼女は石造りのベンチに座り顔を伏せてじっとしている。
「君は足が早いんだね、驚いたよ」
リリエナはビクッと身体を震わせて顔を上げ、声の主が分かると安心したような顔をした。
「ヴァイツェン殿下・・・」
ヴァイツェンはリリエナのすぐ隣にどかっと座ると、まだ温かい包みを差し出した。
「お腹すいただろう、食べるといい」
リリエナはガサガサと細い指で包みを開き、驚いている。
「殿下、これは」
「おにぎりだ、驚け、私が作ったのだ。形が悪いのは・・すまない、許せ」
リリエナは金色がこぼれ落ちそうなくらい大きく瞳を見開く。
「で、殿下がこれを?えっ、何で」
「おにぎりを食べると元気が出るのだろう?私はリリエナに元気になって貰いたい」
ヴァイツェンは優しく微笑んで励まそうとするが、うまく伝わらなかったようだ。
「すみません」
リリエナはまた俯いてしまった。
「謝らないでくれ、それは私の台詞だから。私やこの国の者にもっと力があれば聖女召喚など必要なかった。けれど聖女の力を求めてしまったのは我々の弱さのせいだ。君にそれを背負う義務などないよ。不甲斐ないのは私の方なんだ、王子のくせに一人の少女さえ支えられないなんて、本当にすまない」
「いえ・・」
「リリエナにそんな憂いた表情をさせている理由が知りたい、聞かせてくれないかい。何か無理強いをしてしまってはいないだろうか、教えて欲しい」
「いえ、・・・皆さん優しくしてくれます」
「そうか」
リリエナは何か言おうとして口をはくはくと動かすが言葉にならないようだった。
「いいんだ、それより食べてくれないか」
頷いて、ようやく包みの中のおにぎりに手を伸ばし、目の前に掲げ、一瞬戸惑ったように見えたが黙って食べてくれた。
「もっと練習していつか美味しいと言わせてみせるよ、食べてくれてありがとう」
そこで肩の力が抜けたのか、ポツリポツリ話し始めた。
「みんな優しいです、大事にしてくれてると思います」
「うん」
「でも、だから辛い。みんなの期待に応えられないのが辛いんです」
「リリエナ・・」
「落ち込んでたら優しくしてくれます、でも、・・がっかりした顔をするんです。だからみんなの前では落ち込んでられなくて。そしたら私は頑張り続けるしかなくて。でも、でも私だって・・本当は甘え・・たい・・・うっ、うう」
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