アラフォーだけど異世界召喚されたら私だけの王子様が待っていました。

ぬくい床子

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知っていたからこそリリエナの護衛を命じた。
その想いがあれば命をかけて守るだろうと、その思惑は外れてはいなかった。
だが、リリエナを恋慕い闇に魅入られる程心を乱すとは誤算だったな。
奴もただの男だったという訳か。
見つけた時は遺体かと思ったが、リリエナを守った末の大怪我だ本望だろう。
最終的に彼女は無事だったのだからオーガストを護衛に付けたのは間違いではなかった。
が、危険にさらしてしまった、もう誰かに委ねる事はしない。
大事な人は自分で守る、そしてリリエナの気持ちも手に入れる。
リリエナも少なからず好意を寄せてくれているのではないだろうか。
必ず振り向かせてみせる、五年前のように。

あの日、私とリリエナは魔法の訓練を受けていた。
とりわけリリエナは魔力が誰よりも多いが故、コントロールに苦戦していた。
それまで魔力など知らずに生きてきたのだから至極当然のこと。
突然知らない世界に連れて来られたにも関わらず彼女はひたむきに訓練に取り組んでいた。
可愛らしく、やや幼なげな彼女の健気な姿に私の心は奪われていった。
そんな日々の中、やはり辛くなったのだろう、いつもの花のような笑顔を消して訓練場から飛び出してしまった。
「も、や・・だ・・・ッ、ごめんなさい!」
「リリエナ!」
可憐な容姿を裏切る脚力であっという間にどこかに隠れてしまった。
護衛達と城の敷地内を探したが見つけられず、騎士団を巻き込んで城外まで捜索を広げ、やがて街外れにある植物園に隠れているのを魔導師が見つけた。
「私が迎えに行くまで安全を確保しててくれ」
その場に待機するよう命じて、私は厨房へと走った。
飛び出してからかなり時間が経ってしまった、きっとお腹も空いているだろうから何か持って行ってあげたいと思った。
リリエナの好きなものが良いか、とすればアレか。
彼女はよく厨房を借りて米を三角にして食べていた、アレを食べると元気が出ると言っていたのだ、祖国の食べ方らしいが私にも作れるだろうか。
「料理長!炊いた米はあるか」
突然の乱入に呼ばれたガタイの良い白髪まじりだが男前の料理長が慌てて駆け寄って来た。
「で、殿下。このような所までお越しになるとは、いかがなさいましたか?まさか、お食事に至らぬ点でも!」
「そうではない。リリエナがよく作っていただろう、アレを作りたいのだ」
「はぁ、おにぎりですか」
「おにぎりと言うのか、それを今すぐ作りたいのだ」
「え、すぐにですか、米を炊くには時間がかかります。すぐと言うのは・・・あ、まてよ、あの方ならもしかして。心当たりがあります、すぐ戻りますのでお待ちください」
料理長は厨房から出て行くと、しばらくしてほかほかの米を手に戻って来た。
「お待たせしました。魔導師長様から譲っていただきました」
最近魔導師長となったソニアスも米が好きで城の敷地内の居宅で炊いているらしく、今も冷めた米が残っており魔法で温めてくれたようだ。
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