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明日の朝ですって?準備って何をしたらいいのかしら、服装だってこんな重たいドレスじゃ動きにくいし。
リリエナのクローゼットにはドレスしか用意されていない、普段はその中から地味めなものを選んで着ているのだ。
「あの、ドレスじゃなくてもっと動きやすい服ってありますか?」
ここの女性でパンツ姿の人は見た事ない、侍女さんのメイド服が一番動きやすいのかも。
と思っていると。
「それなら聖女用のローブがある、生地も丈夫で軽い。それを用意しよう」
「ありがとうございます」
聖女用か、気乗りしないフレーズが出たがそれを着るしかないようね。
準備は特に無く、リリエナは身一つで良いと言われたので夕食後はすぐにベッドに入った。
魔物が出たのは王都より北にある森の小さな村で、今までは獣型の魔物が時々出るくらいで村人だけで何とか退治が出来ていたが、それが敵わない大型の魔物に襲われ、二人喰われたところで森に消えたそうだ。
また襲われることが予想され、村長から討伐依頼が出された。
すぐにでも対応が必要とヴァイツェンが判断し、早々の出発となり、今リリエナを乗せた馬車は北の森に差し掛かろうとしていた。
リリエナは用意された白いローブを着ている、首まで詰まったロングワンピースにケープが付いていて、シンプルなデザインで動きやすいものだ。
馬車には一人で乗っており、オーガストは馬で並走し時折声を掛けてくれる。
「リリエナ様、もうすぐ北の森に入ります。揺れが酷くなると思いますが、村までは止まりませんのでご辛抱下さい」
「わかりました」
「リリエナ、森に入れば何があるか分からない。私かオーガストが声を掛けるまで扉を開けてはいけないよ」
「え、殿下?はい、分かりました」
馬車は隊列の後方にあり、先頭にいたはずのヴァイツェンの声がして驚いたが、自分の為に後退してくれたのだと思うと胸がほっこりして、こそばゆい。
リズムの違う蹄の音が遠ざかって行く、ヴァイツェンが先頭に戻ったようだ。
"何があるか分からない"
森に入れば討伐対象の魔物や他の魔物がいつ現れるか分からないという事だ、自然と周囲を探ろうと耳を澄ましてしまう。
聞こえるのは車輪が地面を転がる音、規則正しい蹄の音、鎧が擦れる音、風の音、木々の葉が揺れる音、変な音が無いのでまだ大丈夫ね、多分。
しばらくそんな時間を過ごしていたが急に馬車が止まった。
「え、もう着いた?オーガストさん?」
「村の近くですが、魔物がいたのかもしれません。確認してまいりますのでリリエナ様はそのままでお待ち下さい」
馬から降りたのか、オーガストの足音が遠ざかり、すぐに周囲が慌ただしくなった。
「リリエナ様、討伐対象の魔物が出たようです。徒歩で移動しますので扉をお開け下さい」
リリエナが言われた通りに内鍵を開けて外に出ると、騎士二人が残っているだけだった。
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